第58話 10月28日 金曜日3

 俺が自己紹介の続きということで話を始めると何故かすぐに胡乃葉が驚いた表情で俺の話を止めてきた。これが今だな。

 俺が話している時に口を挟んできた胡乃葉の声は、少し大きかったので、俺が視線を感じ胡乃葉からそちらを見ると――俺達の後に入って来た女性2人が『何事?』と、言った表情でチラッとこちらを見てきていた。『何でもないんです。お騒がせしてすみません』などと俺がジェスチャーではないが。少し謝ろうとしていると、それに関しては、胡乃葉がすぐに頭をぺこぺこと女性たちに下げて――すぐに座り直して、俺の方を見て再度話し出した。


「先輩――中三道大学だったんですか?四日市の」

 

 胡乃葉の表情はまだ驚いている。何をそんな驚いているのだろうか?単に俺の大学名を言ったくらいで。誰か知り合いでも居るのだろうか?


「えっ?そうだけど?」

「——その――私も中三道大学の1年生なんですけど――」

「えっ!?——あっ。すみません。ホントすみません静かにします」


 数十秒前の胡乃葉を真似るように。視線を集めてしまった俺は女性2人の方に頭をぺこぺこ下げた。女性たちの方はほんわかした感じというか。気になさらず。見たいな雰囲気だったのでセーフ。かな?


 そして俺は座り直してから――声のボリュームをいつも通りに戻してから。


「胡乃葉。マジで言ってる?」

「マジで言ってます」


 特に大切な話をしている――と、いうわけではないのだが。俺達はちゃんと互いの顔を見て確認しつつ話を続けた。


「ホントに?」

「ホントです」

「実は胡乃葉――大学サボりまくってるとか?」

「ほぼ皆勤賞です。先輩こそ真面目そうにしていて、実はサボりまくってドーナツ巡りしているとかじゃ……」

「どんなんだよ。って、どんな見方されてるんだよ。俺は」

「ドーナツ先輩」

「おい」

「——ごめんなさい。調子に乗りました」

「——ちなみに俺もほぼ皆勤賞だからな」

「……」

「……」

 

 そしてしばしの沈黙。マジで?いや、似たような大学名とかあったかな?などと俺は頭の中で情報の整理をしていたらな。会話が止まっていた。ちなみに胡乃葉も――似たような状況かもしれない。考えているっていう表情だったからな。


「学生証。学生カード持ってますか?」


 そして会話を再開させたのは胡乃葉だった。


「あるな」


 俺は胡乃葉に言われて財布から学生カードを出して、胡乃葉の前に滑らすと――同じく胡乃葉もカード入れだろうか?小さなポーチのようなところから俺と同じカードを出してこちらにすすっと滑らせてきた。

 そしてカード確認。写真映りもよろしいことで――じゃなくて。


「……」

「……」


 カードをちゃんと確認。まさかの新手の詐欺――何か理由があって俺に近寄って来た?ということはないだろうが。もし、ホントもし――という確率を潰すために。胡乃葉が出した学生カードを確認するが――もちろん。俺が持っている物と全く同じものだった。偽物とかではない。って――こういうカードって偽物あるの?作れるの?そういえば――これって単なるプラスチックじゃないんだっけ?読み取りとかにも使えたような……ってそれは今のところ考えなくていいか。


 再度胡乃葉が見せてくれた学生カードに書かれている大学名などを俺は見る。

 同じだ。

 つまり俺達は……。


「マジ?」

「嘘ですよね?」


 少し互いに学生カードとにらめっこのち、隣を見ると、ちょうど胡乃葉もこちらを見て来て目が自然と合い。そして2人はそれぞれつぶやいてから、次は同時につぶやいたのだった。


「「なんで会わなかったんだ(ですか)?」

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