クライドル・エンド 別れ、そして・・・
陽の沈んだ鳳公園。
園内は間隔に配置された電灯によって照らされている。
今年も多くの若者がその公園内で待ち人が訪れるのを待っていた。
その中に藤宮詩織、彼女が居る。彼女が待っている人物は藤原貴斗。
詩織は貴斗が来るのをシャイン・ピサロ像の前で待っていた。だが・・・。
外気の寒さに震え、私は手袋をした両手で私自身の体を抱きしめる。
私は今年も貴斗がここへお見えしてくださるのを待っていた。ですが、私は知っていたのです、彼がここへ来てくださらない事を。
私は夜空を眺める。
先ほどまで見えていました月もくすんだ雲に包まれてしまいまして、そのお姿を覗くことはかないません。
再び、私は正面に向き直す。
十数分前まで、同世代の方々が私と同じように誰かが来ますのをお待ちしていたようですが・・・、いまは私の手の指の数でお納め出来るほどにしか、おりませんでした。
彼等、彼女等も私と同じように待ち惚けなのでしょうか・・・。
私は切なく小さな溜息をつく。
口から漏れます白い息が私をこの場に置き去りにしますように消え去ってゆくのでした。
私は貴斗がここへ来て下さらない事を知っていつつも、今年も待ち続ける。
逢う事など絶対に叶わないと分かりつつも待ち続けることしか出来なかったのです。
八神君から聞かされました私の極度の依存症・・・。
それを私自身、今ははっきりと自覚しておりました。それでも私は、今ここにいます。
貴斗がここへ来てくださらないのは彼が春香ちゃんの恋人に成った訳でもありませんし、他の女性の方が彼とお付き合いしている訳でもありませんし、ましてや幼馴染の香澄と一緒に居る訳でもありません・・・・・・。
もう、あの年から二年と半分の年が過ぎようとしています。
そう、2004年の夏に起きてしまいました事故の復帰後も貴斗はずっと私の彼氏でいてくださいました。
ずっと一緒に居てくださると誓ってくださいましたのに・・・。
その年の冬、今日と同じ日に私の所為で・・・、貴斗は・・・、たかとは・・・。
その時の事を思い出してしまいまして、悲しさの余り、私は小さく嗚咽してしまうのです。
私が至らないばかりで、私が彼の健康状態をしっかりと見抜いて差し上げられません所為で、私の我侭で、彼を・・・、貴斗を、死に追いやってしまったのです。
その年、貴斗はここへ姿を見せる事無く、来られる途中の通りで急性心不全を患いまして・・・・・・。
私のせいで貴斗が事故に遭いまして、退院した後に私は彼から聞かされていたのです。
幼少の頃、心臓移植を行いました事を。更に彼の寿命に付いてです。
手術を受けましてから、どれだけの時を陽の元で生活してゆけますのか不確定でありますと、貴斗は私に聞かせるのです。そして、手術から十年後の先の未来、それは無いに等しいとも申しておりました。ですが、彼は生きていましたのに・・・。
私は自分自身の愚かさに身体を身震いさせてしまっていました。
その場へしゃがみ込みまして、合わせました膝の上に顔を埋めてしまっていたのです。
どのくらい、私はその体勢でいたのでしょうか?周囲の状況へ関心を示していません私の五感。
いつの間にか、空から氷の結晶達、雪が静かに舞い降りていました。
精霊たちが私に悟られない様に、頭や肩の上に、その場所から落とされませんようにお互いに手を繋ぎ、積って行く。
去年の冬も、一昨年の冬もこの日に雪が降る事は在りませんでした。
二年前のこの日、貴斗がこの場所へ来てくださらない事を連絡してくださったのは翔子お姉さまでした。
貴斗の葬儀中も彼が私を置いて先に逝ってしまわれたなどと信じることは出来ませんでした。
その後も数ヶ月間はずっとその事を理解することは出来ませんでした。
香澄や春香ちゃん、それに八神君や、柏木君、それと翠ちゃん、彼等彼女等のお陰さまで現実を受け入れる様になりましたのですけど・・・。
分かっていますのに、彼はもう私達の居るこの世界にはいません事を理解していますのに今年も私はここで彼を待っている。
現れないはずの貴斗を・・・。
どれ程、貴斗の事をお想いしましても、彼は戻ってきません事を知っていつつもここで待ち続ける私は愚かで、さぞ滑稽でしょう・・・。
去年はここへ来てくださらない彼の代わりに香澄が呆れた表情とお怒りしました表情を同居させましてお迎えにきてくださいました。
何せ私は彼女や他の皆様方との約束をすっぽかしましてこのようなところへ居ましたので・・・。今年も皆様とパーティーをしましょうとお誘いされていましたのに、それを承諾していた私ですのに、私はここにいます。
香澄・・・、矢張り怒っていますでしょうか?それとも香澄がここへ来て下さいまして去年以上に呆れた表情をお作りするのでしょうか・・・。
蹲って、大量の雪をかぶりまして、放心しています私。その様な私へ、
「風邪を引くぞ・・・」
と呼びかけます聴き覚えがはっきりとあります、そのお声。
私は徐に顔を上げます。
その時に私の頭に白い帽子のように乗っていました雪が滑り落ち、地表に積もっていましたそれらの上に落ち小さな音を立てていました。
私が顔を上げました目線の先には申し訳なさそうな表情をいたしました彼が・・・、貴斗が居たのです。
怪訝な表情を浮かべながら、私はゆっくりと立ち上がり、何かをお言いしたかった、何かを言葉にして、彼にお伝えしたいと思いました。ですが・・・、
「たかと?・・・、タカト・・・、たかとぉ・・・、
うわぁぁぁぁアあぁぁあっぁぁぁあぁっぁああぁああああああぁ~~~んっ」
私の双眸の目尻から大粒の涙が零れ始めますとそれはもう止まりません滝の様に流れ出し、大きく嗚咽しまして、彼に飛びついていました。
言葉なんて出すことは出来ませんでした。ただ、泣く事しかできない私。
泣く以外の方法を見つけられませんでした私、彼の逞しい胴に腕を回し、彼の事をしっかりとお掴みたします。
貴斗が私の知っている本物の彼でありますか、そうでありませんか判りませんでした。
なぜに居ないはずの彼にこの様に触れることが出来るのかわかりません。
ですが、私は彼の胸の中、遊園地で迷子になりまして寂しさのあまり大声で泣く小さな子供の様に泣きじゃくっていたのです。
普段なら、〝泣くな〟とお言葉にしまして、私が泣く事など許しては下さらないのに今の貴斗は、彼が好きと言ってくださいました私のこの長い髪と頭を優しく、そして愛おしく撫でてくださっていました。
私の事を、強く、強く抱きしめてくださいましながら。
貴斗の優しい抱擁が随分と続きますのに私の嗚咽は未だ止んではくださいませんでした。
その様な私に彼は何時もの調子で淡々と語りかけてくださいます。
「俺は詩織、お前や香澄にはいつも笑っていてほしかった。いつも笑顔で居てくれる様に涙など流させることのない様にお前たちを護ると自身に誓った。お前たちを失うことが怖かったから・・・、あの日、父さんと母さんが働いていた研究所で起きた事故のあの日から・・・、宏之の妹である雪菜が俺を生かしてくれるため俺に彼女の心臓を譲り受けてからそう誓った・・・。」
「だが・・・、思い返せば、詩織・・・、お前を泣かせてしまう原因の多くはこの俺だった・・・。俺の所為でお前を泣かせてしまったくせに、泣くな等とお前に辛く当たった事も多くあったはず・・・。」
「詩織・・・、お前が俺の事を愛してくれていた事が嬉しかったくせに、俺はいつも皮肉れて、おれ自身では数えるほどしか、いえなかった言葉もある・・・、お前の事を何一つ理解できず、お前の事を本当に守ってもやれず、お前にこんな想いにさせてしまったまま、先に進みすぎた俺を許してもらえるなどと思ってはいない。許して欲しいとも思っていない。だが、言わせてくれ・・・、・・・、・・・、すまなかった」
貴斗は感情をこめて言っていますつもりなのでしょうけど、彼の口からでますお言葉に抑揚の片鱗さえ見せてくださいません。ですが、彼の気持ちは十分に私の心へと沁み込んで来ます。
私の口から言葉を綴りまして、彼にお答えを返したかった。ですが、今の私は未だ泣き止めず、彼の胸の中に埋めた頭を左右に振って、貴斗が私に言ってくださいました言葉に違いがありますことをお伝えする。
でしたって、確かに貴斗の所為で私は涙した事もあるでしょうけど・・・、結局の所、それは私が弱く、いつも彼を頼りにしてしまっていた所為・・・、今だってこのようにして、彼にしがみつき泣き続けています。
貴斗と一緒に居ますことが私のこの世界の全てですから・・・。
貴斗が私を抱きしめます腕に先ほどよりも力が篭められていました。痛くはありません、寧ろ暖かく安心した気持ちになれます。まるで揺り籠の中の様に・・・。
「俺は奇蹟や偶然って物が嫌いだ。だが、こうして、詩織と逢うことができたのは、お前が俺の事を本当に強く好き・・・、愛してくれていたから、おこった奇蹟だろう・・・。奇蹟なんて大っ嫌いだが・・・、今は感謝すべきことなのだろうな、きっと。詩織、お前に告げたい言葉がある」
私は次に出されます貴斗の言葉がとても怖かった。
しかし、私は泣き止むことだけは出来ましたが何も応えられず、彼をお見上げするだけ。
貴斗が親指の腹で私の目の下をなぞりまして、涙を拭ってくださいました。そして、
「俺の事を忘れてくれ・・・、等と烏滸がましい事は言わん。だが、何時までも俺に囚われないで欲しい。詩織、お前は俺の誇りであり、お前は数百年に一度に現れるか、現れないかの才能の持ち主だ。だから、その才能を生かすためにも俺の所為で立ち止まって欲しくはない。」
「詩織、しっかりと道を歩みだしてくれ。言いたいことはそれだけだ・・・。詩織、お前と幼馴染であったこと、お前が俺の事を好きで、愛していてくれたこと・・・、本当に嬉しかった。お前と恋人同士で居られた三年間の日々は俺には勿体無いくらいの幸福だった。そして、何よりも誇りだった。ありがとう・・・」
貴斗の言葉が終わる。
その言葉の終わりは私と貴斗の奇蹟の邂逅の終わりを告げる物でもありました。ですが、去ってしまいそうになる貴斗をお止めし様とします表情をするだけで、今も貴斗に伝えたい言葉がありますのに何一つ、言えないまま、消えていこうとします彼の体を強く抱きしめようとする私。
今までしっかりとそこに居ました貴斗の体が徐々に色を薄め、触れる感触もマシュマロの様に軟らかくなり、やがてシャボン玉のように弾けて本当に見えなくなってしまっていたのです。
今までの彼の言葉は唯の私の妄想だったのでしょうか?
また再び、右の目尻から薄っすらと、仄かに涙が伝わっていました。
泣くことしかできず、何一つ、彼に声をおかけしますことが出来ないことが悔しくて、悲しくて、その場にしゃがみ込みましてまた嗚咽してしまいそうになる、私。
足を崩しました視線の先、真っ白な雪の絨毯の上に何かが落ちていました・・・。
いいえ、置かれていましたと言った方がよいのでしょう。
私はそれに徐に手を伸ばしてしまう。
私はそれに触れてしまってから〝はっ〟とした思いに駆られてしまう。
それには貴斗の思い出の全てを消してしまうという全く有り難くありません、魔法が掛けられていますのではと・・・。しかし、その様なことはありませんでした。私は彼の全てを今でも鮮明に思い出せます・・・。
純白の絨毯の上から取り出しました指輪を手の上に乗せ公園内の照明が良く届く場所に向けます。そして、その形状を確かめていました・・・。
私はふと思うのです。二年前、ここで貴斗と待ち合わせをしていました私、彼の持ち物の中に箱だけで、中身がありません物がありましたと翔子お姉さまが申しておりました・・・。
もしかして、これがそれなのではと安易に想像してしまいました。
信頼、希望、運命を象徴するとされるスター・サファイアが飾られた指輪。
占い事やお呪いごと等が嫌いな貴斗、宝石に篭められた神秘の意味なども興味などありません。ですが、今この指輪に装飾されているスター・サファイア。
この宝石はきっとその神秘の意味を知っていまして私に贈って下さったのでしょう・・・。私はそう信じたい。
私は無意識に指輪の内輪を覗き込んでいました。
そして、そこには数字とアルファベットが刻まれていたのです。
〝2k4T to S Keep hope & run dream to future with n !〟と最後の文字が欠けていました。最後の文字は多分〝me〟。
貴斗はもうこの世界に居ません・・・。ですから、現実を貴斗と共に希望を持ち、夢を追い続けることはできません・・・。彼は私の中に居ます。ですから・・・。
「しおりんっ!やっぱりここにいたのね?ホントにしおりんったらっ!」
「まあ、まあ、香澄ちゃん、そんなに目くじら立てないの」
「藤宮さん、こんなところでなにしてたんだ、待ちきれなくて、探しに来ちまったぜ、まったく」
「宏之・・・、おまえ、それを言葉に出してゆうか?まったく状況を考えて言葉出せよ」
「貴斗とお話をしていました・・・」
私がそう言葉に出すと、皆様、誰一人として、不可思議な表情を浮かべる事無く、
「へぇ、貴ボウと?それであいつなんって、しおりン、あんたになんて言ってたの?」
「詩織ちゃん、ちゃんと貴斗君とはお話できたの?」
「貴斗の事だ、一方的に要件だけ告げて、感じじゃないのか?」
「まあ、そのことは店で話そう。外に居ると寒いだけだからな。いこう、みんな」
八神君の声で柏木君も、春香ちゃんも香澄も、そして、私もその場から歩み始めた。
それから彼女にとっては本当に長かった心の冬が過ぎ・・・、真春が訪れる。
薄い雲が青空に映える晴天の日。
春風に満開の桜の花弁が踊る。
福岡で行われた国際コンクール会場。
コンクールも終わり、数多くの報道機関の人々との挨拶を交わし、騒がしかった場も風と共に去って行く。
今は彼女の周りに身内の数人だけが陽だまりの中、桜並木の道を歩いていた。
「しおりン、ばっさり切っちゃったわねぇ、かわいいっ」
と言葉にし詩織に抱きつく隼瀬香澄。
「最初の感想はコンクールの結果ではなくて、それなのですか、香澄?」
不満そうな、表情を浮かべる詩織。その言葉に無邪気に笑う彼女の女幼馴染み。
「まさか、藤宮のショートが見られるなんて思っても見なかったな」
「ばっちり、決まってるぜ、藤宮さん。めちゃむちゃくちゃ、可愛いっす」
「もぉ、なに私が居るのにお鼻の下伸ばして、嬉しそうな顔しちゃって、そんな事を言っちゃってくれるわけ、宏之君?」
「春香お姉ちゃん、焼餅しない。詩織先輩とお姉ちゃんじゃ、もう、月とすっぽんなんて言葉じゃ足りないくらいなんだから」
「あうぅ・・・、もう、いいもん・・・。でも、凄いよね、詩織ちゃん。ヴァイオリン部門とピアノ部門の両方、最優秀ですもんね。おめでとう、詩織ちゃん!親友としてとっても嬉しくて、とっても誇れちゃう・・・、はぁ、でも、これからは私の親友も時の人になっちゃうのかな?」
「やっぱり、律さんも、詩音さんもこの道の巨匠だから、かえるの子はカエルって事よね、まったく」
「でも、詩織先輩が、先輩の夢を追いかけるって言った時はてっきり、水泳界に戻ってくるって思ったんだけど、音楽の方でほっとしちゃったかも。だって、香澄先輩だけでも、脅威の存在だって言うのに詩織先輩までこっちの方へ戻ってきちゃったら私の立つ瀬が無くなっちゃったかも知れませんから」
「あら、おかしいですわね?翠ちゃんは400で、香澄は100でしょう?本当の勝負にはなりませんはずでは?」
「それがですねぇ、香澄せんぱいったら、詩織先輩が居ないんじゃ、100メートルなんてつまんないとか言っちゃってくれまして、私と同じにしちゃったもん。それにブランクいっぱいあったのにずるいですぅ、ぜんぜんそんなことないんですもんっ!」
「くすっ、翠ちゃんは香澄の凄さを昔からご存知でしょう?でしたら、翠ちゃんも負けませんようにいっそうの努力をしないといけませんわね・・・」
「何、しおりン、アンタ、アタシと翠、どっちを応援するつもり?」
「それは・ひ・み・つ」
「まあ、その話の続きはこんな所じゃなくて、もっと落ち着く所でしようぜ、なア、慎治、どっかこのまちの名所とかないのか?」
「それじゃ、博多のキャナルに行こうか、みんな」
私は音楽を奏でる世界に身を委ねています。ブランクはありません。
実は少ない時間でしたけど、ヴァイオリンやピアノを弾かなかった日は今までありませんでした。
彼が私の恋人になってくださってからもずっと・・・。
貴斗の前で演奏させて頂いていた頃の彼の穏やかな表情を思い出す。
記憶喪失の時の貴斗は私が演奏する曲を聴くととても心が安らぎますといってくださいましてお褒めして下さったからです。ですから、彼が望んだ時はどんな場所でも、楽器さえあれば弾いて差し上げていました。
あの冬の不思議な奇蹟。私が前へ進むように背中を押してくださった貴斗。
私はこうして音楽の世界に再び進むことが出来たのです。
だって、向こうの世界に逝ってしまわれた心配性な彼にこれ以上の心配をかけさせたくはありませんでしたから・・・。
私には香澄、春香ちゃん、翠ちゃん、八神君、柏木君だって居ます。
私は独りじゃない。
道は違いますけど、未来へ一緒に歩んでくださる大切な人たちが居ます。ですから、私はもう、立ち止まりません。私の進む先の階段だって駆け登って行けますし、壁だって乗り越えて見せます。貴斗も私の中に居ますから、頑張ってゆけるはずです。
前へ進むように促してくれました、貴斗ですが、やはり、依存なのでしょうか・・・、彼との決別を決意しまして、切り下ろしました長髪・・・、彼はもう居ませんといいますのに彼の事を好きで居続けさせて欲しいという気持ちは変えることは出来ませんでした。
いつか・・・、彼以上に私を捧げることが出来ます人と巡り逢いする事が出来ますまでは、どうか、今のこの想いを持ち続ける事を許していただきたく思います。・・・、幼馴染みでありまして、私の恋人でありました親愛・・・・・・、深愛なる貴斗へ。
私はもう立ち止まりません、どうか見守ってください・・・。
そう願いまして左手に嵌めています指輪を右手で包みますようにギュッと握りしめていました。
詩織等が歩き過ぎて行く並木の大樹の陰一角に一組の男女が、すれ違う詩織を見ながら、
「ほんとうに、これでよかったの?私はあんまり賛成することはできなんだけどね・・・」
「詩織の才能をつぶさないためにはこれで良かったのさ・・・。それにこれから進もうとする危険な道に、彼等をともにさせるわけには行かないからな・・・」
「それは貴斗ちゃんの驕りだと思うけど・・・、本当は彼女のこと好きなくせに・・・。まっ、いいか、その分、私を愛してくれれば・・・」
「フンッ、馬鹿を言うな麻里奈さんには龍一兄さんがいるだろう?いま、どこでどうしているか知らないが・・・。まあ、これからその失踪した兄さんを探しに行かなくちゃならないし・・・、早くしないと、翔子姉さんが暴走してしまいそうだから・・・。それに兄さんが残した言葉、Project ADAM。それが何であるか突き止めねばならないし・・・」
「これから、貴斗ちゃんも、UNIOの候補生になるのね・・・。教官は私だけど、一切手を抜かないわよ」
「望むところだ・・・」
そう、藤宮詩織も、他の彼の親友等も、彼が生きていることなど知る由もなかった。
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