第8話 月影VSシングル

2人とも一歩も劣らぬ空気を感じる。



「お前がまだ"教え子"の頃は誰にも負けない優しさと正義感を持っていたんだぞ」



……




時は二年前へとさかのぼる。



「先生!!」



「お、どうした。一原。」



「先生ってどうやってその力使いこなせるんですか?」



「俺は遠距離タイプの影種だ。例え同種でもその人なりの戦い方があり、戦法も違う。だから種族が同じと言ってもパワーやその人に秘めたエネルギーだけではどうすることもできない。

例をあげるなら"水種"だ。水は遠距離が得意なやつもいれば近距離が強いやつもいる。そんなもんだろう。話はずれたが、別に感覚で掴んだんだよ俺は。」




「ほへーっ。何言ってるかよくわかんないす。」




・・・。





「なぁ、先生。俺はあんたと同じ種族でも俺は先生より、強い。なぜか分かるか?相性だよ!」





「確かに俺は遠距離でお前は近距離と相性が悪い。だが、俺は一原、いや、シングルお前よりももっと良いものを持っている。」




「それはどうかな!!」




シングルが月影先生のもとへ走ってきた。




月影は手の指をまじ合わせはじめる。



「あの頃から何も変わってないなお前の性格は。赤影あかげ。」



まじ合わせた手の人差し指をくっつけると月影の影がだんだんと大きくなり、やがて人形へと形を変えた。



「久々ですな、赤影は!!俺も楽しくなってきたなぁ!火影ひとかげ!!」




シングルの影が燃えはじめる。

その燃えてる影を操り棒状にして、投げた。



ヒューン。




燃えてる棒状は赤影へと向けられている。



それは恐ろしく速い。




「こっちだ!先生!」



「!!??」



気づくとさっきまで30mほど遠かったのに今背中すれすれにいる。




(俺は真っ正面に燃えている棒状の影で隠れてると思った。いや、エネルギーを感じた。なのに、なんで、俺の後ろに…。)





「先生も衰えたな。俺は投げた棒状の影に入り込んで先生の影へと移動してたんだよ。そんなもんに騙されてしまうあんたはやはり俺に勝てるなんぞ無理だ!喰らえ!」




シングルは握った右手を力強く月影へ放ってきた。




(このままじゃ…!!)





「なーんてね。」



月影は笑った。




「なに!!??」




シングルの右手が月影に当たったが、月影の体がヒュルヒュルと影へと変わり、消えた。





「こっちだ、シングル。」




シングルの目の前に月影の影がある。



ふと上を見ると、月に照らされ飛んでいる月影先生がいた。




指を交差し人差し指を立てて目を光らせる。




「赤影…。月影流二派つきかげりゅうには影煩かげのわずらい!」




そう言うと、月影の数が1人から5人へと変わり、それぞれが赤影を出すので1対10となる。





「先生…卑怯だな。俺だってやってやる。」





シングルが地面を蹴り飛んでいる月影に向けて勢い良く飛んだ。



拳を月影に伸ばして言う




如夢幻泡影にゅむげんほうようかい!!」





握っていた拳から大量の影が出てきて、10体へ向けて放たれた。



その一つ一つの影は鉄よりも固くそして、鋭い。




赤影は本体の以外一瞬にして消え去り

一気に本体と赤影の二人だけになってしまった。





「元々赤影はおとりようとして使う。つまり本命はこっちだ!!」




月影の影がなびいて揺れる。




そして、鎧をまとった人型の影が出てきた。





月影流三派つきかげりゅうさんぱ!!影武者かげむしゃ!!」




「っち。本命とかそういうもんじゃねぇ!先生死ね!もう一回!如夢幻泡影・改!!」





鋭い影は影武者の鎧に勢い良く飛んでいった。だが、鎧は鋭い影が当たってもびくともせずに消えた。




「なっ…。」




影武者はシングルまで走り、精一杯の拳をシングルにぶつけた!!




影武者百年拳かげむしゃひゃくねんけん!!」



「百発百中のこの技はお前への制裁となる!!」




「くっくそぉ!!!」




右手にためた力をシングルの顎へアッパーを決めシングルは空高くあげられた。

ドサッ。




「俺はお前より良いものを持ってると言ったな、"経験"がお前にはない。出直してこい一原。」 




月影VSシングル…。












勝者月影。

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