18話「シンデレラ・ファイト」ー前編

(前回のあらすじ)


「私、もう一度グラビアになりたいです。」


"わわわ"での未来を失った怜子であるが、彼女自身の魅力に惹き付けられた真崎や味元、そして天田や辰実に支えられてきた事実から、もう一度表舞台に立つ事を決めた。


その一方で、怜子が"アヌビスアーツ"に来る前に"Lucifer"の藤原から彼女がアクセサリーのモデルとして決まっていた事を聞き出していた辰実は、もう一度怜子を表舞台に立たせるべく動き始める。更にその一方で"わわわ"から難題を押し付けられていた浮田も、"難題を解決する"糸口を求め辰実の事を藤原に聞きに来てていた。


ようやく舞台に出る怜子と、彼女を取り巻き暗躍する群像劇は新たな展開を迎える。




 *


「そうだ、君は元々"Lucifer"のアクセサリーのモデルに選ばれていた事を知っていたか?」


ある程度の予測はついている。…しかし、辰実は怜子の口から直接回答をもらいたかった。



「私が、モデルだったんですか?」


驚く怜子の様子に、音もなく深呼吸をし間を置いてから話を続ける辰実。


(古浦さんは知ってただろうか?知っていればこの子にも話はいくと思うが)


「"20代前半"のコンセプトを考えてみてくれ。人気があって20代前半、ある程度値の張るアクセサリーに手が届くと言えば"新社会人"だろう。…その辺、現役で女子大生の月島よりも君が適任な所はある。」


"憧れて身につけたくなる"と言っても、購買ができなければ意味が無い。その辺りの説明をする前であるが、どうも怜子は自身が持てないでいた。



「どんなに見栄えの良いモノでも、売り物にならなければ意味が無いだろう。」

「それは、分かりますが。」


「アクセサリーのブランド性、"わわわ"での当時の人気を考えたら、どうしても君しか思いつかない。…これはデザイナー側の見解であるが、"Lucifer"と"月島亜美菜"が嚙み合わない。」


辰実の言う"噛み合わない"1つだけでも、完成品の出来具合が違ってくるという事は、まだ経験の浅い怜子にもよく分かる。ここから辰実の口から出てくる言葉も分かっていた、月島が今座っている椅子に、怜子が座る事になるのだ。そのために事を動かそうとしている。



「………」


俯く怜子の様子に、辰実は次の言葉を止めた。



「性格が悪いようには見えるかもしれませんが、亜美菜ちゃんは良い子です」

「自分に弓を引いた後輩の事を、良い子と形容しても信じがたいが」


「読者モデルは、ある一定のラインまではポテンシャルで何とかなるんです。…でも、実際にスカウトされてきたモデルじゃない。だから認められるようにスタッフさんにも取り入る事だって頑張らなきゃいけない。それで得たものも失いたくないから怖くなる、それで周りに攻撃的になってしまう。」


「成程。それは初めて聞いたな。」


愛結が止めに入る程の事があったとはいえ、今でも月島は怜子にとって"大事な後輩"なのだ。その事を考えると、やっぱり怜子が"後輩に暴言を吐いて辞めさせた"なんて話をされても納得ができない。


(…しかし大変だな、読者モデルってのも。こりゃあ気が強くなっちまう訳だ。)


突然、頭の上から声が聞こえた。軽いノリの声を、怜子はどこかで聞いた記憶がある。


(ニワトリさん…)

(お、正解!ご存じ"スケベなニワトリ"だぜ。)


"スケベなニワトリ"が出現する瞬間、これ即ち"相手のプロファイリング"である。大方、辰実が警察官であった時の"捜査の知恵"なのだろう。それにしては滑稽な行先だと思いつつも、怜子は憂いた表情を崩さない。


(憂いの表情も可愛いぜ)


これは古浦に言われた事だった。自分の想像の産物である限りは、勝手に記憶からあれこれ引っ張ってきて好きな事を言うのだろう。勿論、怜子が月島に恫喝された時の記憶も。


(後になって考えてみりゃあ、あの恫喝には"違和感"がある)

(違和感?)

(そうだぜ。心を折るなら、もっと人間性を否定するとかだったのに"ピンポイントで"後輩に暴言吐いたって話を持ってきやがった。普通は嘘か本当か分からねえ事を攻撃の材料にはしねえ。)


(言われてみれば、どうして?って話ですよね。あの子は私が、"後輩を辞めさせた"と信じ込んでいるみたいだった。事実ではない事を、事実だと思っていたみたいに。)


人気を得てきた読者モデルが陥りがちな、"態度の大きさ"は確かに出ていた。それに加えての話で、特に"怜子に対して"明確な攻撃の意思を持っている。契約を外されれば、二度と出てくる事は無い怜子をであった。


(罰を受けたのに、追い打ちをかけてくる。姉ちゃんは先日やっと"グラビアに戻りたい"って言ったのにだ。…まるで知ってたみたいだな、知ってたとしたら誰だ?)



「しかし月島は、君にだけ"ピンポイント"で攻撃的だったな。心当たりは?」

「私が契約を切られた理由を、真報だと思っているんでしょう。」


「しかし、君は契約を切られてグラビアとして復帰する可能性は無い…と思われている。"わわわ"側からしたらそう思うだろう。だとしたら何故追い打ちをかける必要がある?」


"スケベなニワトリ"と一緒に導き出した考察を、先回りして辰実もしていた。年齢も人生経験も一回り違えば、思考の速さも一回り違う。そんな辰実が怜子にとっては頼もしい。



「君がもし、"グラビアに戻る"となれば都合の悪い人間がいるのではないか?」



(くそったれ、先に答えを出すんじゃねえ)


"スケベなニワトリ"は悪態をついていたが、諫める事なく怜子は辰実の推論に耳を傾けている。


「亜美菜ちゃんが、でしょうか?」

「いや関係ない。もし明確に君を攻撃する意思があるのであれば、"嘘か本当か分からない"事ぐらいは理解しているハズだ。」


少なくとも、怜子の契約解除に関わる"理由"を使って攻撃はしない。辰実の推論にある"都合の悪い人間"であれば、理由の真偽を分かっているからこそだろう。あやふやな事を掲げて攻撃してくるなど、相手に隙を晒すようなものであり"都合が悪い事がありますよ"と自分からアピールしているものだ。



「月島亜美菜を利用して、攻撃するよう仕向けている者がいる。そいつにとって"君がグラビアに戻る"と都合が悪い。もっと言えば、何らかの都合が悪い事があって、それを隠すために君の未来を奪った。」


怒るべきであった。それでも"この先の推論"を展開していく事で見える先を考えれば怜子は悲しかった。純粋な思考の回転であれば辰実が早い、それでも同着したのは怜子が月島をよく知っていたからであった。



「真実を暴いて、失ったものを取り戻すためにはまず"月島亜美菜と戦う"しかない。」

「やっぱり、そうなるんですね。」

「元々"Lucifer"のモデルには君がいた。契約解除を理由にあの子に変わったのだから、その理由が嘘だと分かれば椅子は返してもらうのが当然だろう?」


傷つけられた訳ではなかった。辰実の言っている事に"間違いがない"からこそ、その現実と戦わなければいけないと分かっているからこそ辛い。



「…もし、私が嘘の理由で契約を切られたと分かって、亜美菜ちゃんがやる予定のモデルが私に戻った。となれば、亜美菜ちゃんはどうなるのでしょうか?」

「どうなるとは?」


「元々は私だったとは言え、あの子の努力で勝ち取った立場でもあるんです。…それを奪うと言う事は、ひいてはあの子の"可能性を奪う"事にも繋がりかねない。それこそ私の未来が奪われたみたいに。」


「成程そう来るか」


気づかされたように振る舞う辰実の"演技"だと怜子はすぐに分かった。追いついたように見えて、ニワトリの脚よりも更に速度を出して先回りしてしまう。


「そうなると"わわわ"を相手に仕事ができなくなるな。…安心してくれ、月島亜美菜を"蹴落とす"結果には絶対させん。それは約束しよう。」


安心してか、気の抜けた表情になってしまった怜子。"黒沢さんから見たら、絶対情けない顔をしてるわよね"とは思ったが、安心で満たされてすぐには元に戻る事が出来ず困惑してしまう。


「それでも、あの子とは戦わないといけないぞ」


容赦なく、辰実は話を続けた。安心しても辛い現実は変わらない。



 *


「やっぱり気に入らない」


"Lucifer"、"わわわ"との会議が始まる当日。


「横山さん、どうして"アイツ"がいる事務所がデザインに噛んできてるのよ?"わわわ"から言って辞めさせられない?」


顔合わせをしたにも関わらず、悪あがきのように"アヌビスアーツ"を毛嫌いしている月島。横山も聞いてはいるが、"さすがに決まった事がねえー"と半笑いで彼女の言う事を聞き流していた。


その半笑いが"愛想笑い"だけではない事を、この場で知っているのは少数だろう。


怜子が嫌いであれば、その事務所ごと嫌いである。坊主憎けりゃ袈裟まで憎し、月島からすれば読者モデルとグラビアアイドルの垣根を越えて仲良くしていた同期を怜子によって辞めさせられたのだ。これが事実であれば、その怒りを心中察する事は容易い。


「商店街のどこにいるかも分からない、野良犬みたいな事務所よりももっと箔のついた所が良いわ本当。"わわわ"と"Lucifer"と釣り合いが取れてない。」

「野良犬かー、あそこの店長が愛結ちゃんの旦那だって言うじゃない?もしかしたらコネかもよ?」


実際、コネではないのだが。そう言われても仕方ないのだが、藤原もその点を見て"アヌビスアーツ"を採用してはいない。



(…怜子ちゃんがいなくなってからだな)


会議前に、書記の準備をしていた古浦は目を逸らしながらその様子に呆れていた。腐っても"人気"のあるモデルなのだ。いくら跳ね返りでも丁重に扱わなければならない、それでもあの我儘っぷりと悪態の様子には上向きの言葉が出てこなくなる。


人気はあったが目立たない、しかし品行方正であった怜子は、彼女の手本だったと言ってもいい。


あれだけ怜子の事を一方的に毛嫌いしておきながら横山に大事にされているのも、怜子の"月見草"的な部分を横山が"輝いていない"と勘違いしていたからであった。



「ねえ横山さん、会議だし"ちゃんと"話をしなきゃいけないんだよね?」

「そうだね」

「りょうかーい」


会議用のICレコーダーが作動するか、自分の声で古浦は確認していた。異常が無い事を確認して矢継ぎ早に、携帯電話が振動する。


「はい、古浦です。」

『"アヌビスアーツ"の方々が来ましたよー』

「了解。」


"アヌビスアーツ"の方々がお見えになったそうです"と言って、古浦は席を立つ。デスクの上に置いていた筆記用具は全て手に持ち、ICレコーダーはジャケットの裏側にしまって部屋を出た。


横山と話をしながらも、月島は縦長の携帯電話を横にして動画を観ていたようであったが、視力検査で言えばぼやけるぐらいに距離があったために内容までは観えない。



 *


「よし、会議だ」


整頓はされていないが、概ね横一列に、辰実を真ん中に"アヌビスアーツ"の5人は会議と言う強敵が待ち構える"わわわ"オフィスビルの一口に向かっていく。


「緊張しますね、変な汗が…」

「栗栖はいつも汗かいてばかりヨ」

「うるせえ」


辰実の右隣に立っている怜子は不安そうな顔を、その更に右隣に立っている熊谷は深呼吸をしていた。大柄が2人は遠足でも行くかのような雰囲気だが、辰実より目線の低い2人はあからさまに"緊張"している。


(栗栖やマイケルみたいに緊張感が少ないのは良い事なんだが、逆に緊張しているのも悪い事ではない。トビはそれだけ真剣なんだ。)


「トビ」

「はい?」

「戦う前の相手は、実際に戦う相手より倍はでかい。想像上の相手が栗栖ぐらいの大きさなら、実際は去年のうちのチビ達ぐらいの大きさだな。」


「それは倍とは言わないですって」


熊谷が笑った、緊張は少しほぐれたのだろう。


「実際なるようにしかならん、…と言うのは嘘でな。緊張感を持ってるやつが状況をひっくり返すのはよくある事だ。」

「どういう事ですか?」


「計算外の事をしでかすのは、"追い込まれた"人間だよ。だから今日の会議だって、どんな状況になっても諦めるな。」

「分かりました。」


緊張をしているかしていないか分からない辰実(栗栖とマイケルが話をしているのは緊張をしているからである)と、ほぐれた熊谷の間で怜子は深呼吸をしていた。こういう経験が少ないのだ、緊張がへばりついているのも仕方ない。


オフィスビルの入り口の前で、予定したように5人が立ち止まる。震源地が怜子だった事は他の4人にも分かっていたようで、緊張を堪えている彼女の方に視線が集まった。本人は自分が立ち止まった事に気づいてなかったのか、"どうしたんですか?"と左右を見回していた。


「…いい方向に向かうように俺が何とかする。大丈夫だ。」


それだけ言って、辰実が先に歩き始める。


返事を聞くこともせず、熊谷、栗栖、マイケルと歩き出し慌てて怜子も歩き出した。



「お待ちしておりました」


ロビーで5人を迎える古浦。作業的に"18階の会議室に案内します"と言われ、15人1000kgまでと書かれたエレベーターに乗り込んで上がっていく。いつもは雄弁な古浦がこの時全く話をしない事に、辰実は気持ち悪さを感じてしまっていた。


先日はキックオフミーティングに使用した会議室に案内される。"どうぞお座りください"と言われ、辰実以外の4人は座った。辰実だけは古浦に"少し向こうで"と合図され2人で会議室を出る。



 *


会議室から離れた部屋。


先日、月島と怜子が密室での会話、一方的な攻撃を展開していた部屋でもある。その展開を再現するかのように、辰実が入ったのを確認して古浦は鍵を閉めた。


「聞きたい事があります」

「答えられる範囲でしたら」


月島と怜子よりも、一回り精神年齢の上がった会話。これは攻撃ではなく、古浦の率直な疑問を辰実に投げかけるだけの"会話"なのだ。



「"若松物産"のインタビューに答えてましたね。先日、ネットに上がっていた動画を観ました。あの会社のイメージキャラにも起用されたと。」

「それに関しては、"若松物産"の方から話を受けて彼女も了承しました。」


おもむろに煙草を取り出し、1本口に咥えて火を点けようとしたが、古浦はすんでの所で止めた。"構いません"とぶっきらぼうに辰実に促され、止めていた手を動かして煙草に火を点ける。


「怜子ちゃんは苦手でしたので、できれば僕が喫煙者だという事は内密に」

「分かりました」


一度目の煙を吐き出した所で、古浦は話を切り出す。いつも勿体ぶるのに、この時ばかりは質問を急ごうとするのは"余裕が無い"ではなく"古浦が食いつく話題を持っている"と判断していた。しかしこの男を相手に油断をしてはならない。



「いつもは腹の探り合いをしていましたが、今回は単刀直入に話をさせて下さい。…怜子ちゃんは、"グラビアに戻りたい"と決めたんですか?」

「はい、決めました。」


口から離して、右の人差し指と中指との間に挟まれた煙草の火が、煙草に滲んで進むまま数秒の時間が過ぎる。こうもあっさりと回答をされるのに予想がつかなかったのか、古浦は逆に辰実の目を探るようにして次の言葉を考えていた。


「勿論、彼女の意思ですよ?」

「………」


古浦の口から、薄ら笑いが消えている。


「そんな事を、僕に言っていいんですか?」

「問題ありません。古浦さん、貴方にもその事で手伝って頂きたい事がありますので。…こうやって呼ばれたのは丁度良かったんですよ。」


この場で黒沢辰実という男が"本当の味方ではなく、必要な時には手を組む時もある"相手だという事実を古浦は悔しがった。分かってはいるが、欲しい情報を小出しにして余裕を見せながら相手の股を開かせる男は敵に回すと厄介極まりない。


「迷惑な連中を使っていた事は感心できませんが、契約を解除された後も篠部怜子を追っていた。それでもって編集員の貴方にしかできない仕事です。」

「編集員の僕に、ですか?」


火が滲んで何割か灰になった煙草を口に咥えたまま辰実を見据える古浦。今まで辰実より先回りし、振り回してきた側であるのに自分が振り回されている。コミュニケーションをとる上で有利に話を進めるため、自分が主導権を握る事は定石であり、古浦はこれまで守ってきた。しかし、話が動き出してきた所で相手に主導権を握られている。


その状況は控えめに言って歓迎すべきではないのだが、自然と楽しめている古浦。


事態は"目的に"沿って正しく動き出そうとしている。それに、"予想もつかない事が起こるのを楽しめるくらいに、人は余裕をもって生きた方が良い"とも以前に教わっていた。



「記事を1つ、書いてもらいたい。」

「怜子ちゃんを追った記録を書けばいいんですか?」

「話が早くて助かります。」


すぐにでも"構いません"と言いたいのだが、あくまで"わわわ"のいち社員として引っかかる点がある。


「すいませんが、それに関して1つ解決して頂きたい。…いや"解決できる状態"にしてくれれば良い。」

「何でしょう?」


「怜子ちゃんの契約解除が"嘘"である事を証明して頂きたい。」

「そんな事でしたら問題ありません。」


紫煙を口から零しながら、"可能ですか"とだけ古浦は答え話を促す。


「彼女の契約解除の原因と言うのは、"後輩に対する仕打ちで辞めさせた"でしょう?…その後輩が何で仕事を辞めたかについては、貴方も実際の所は知っていると思いますし俺も知っているんです。」

「知っているんですか?」


「ええ。貴方が篠部の動向を探らせるために動かしていた城本は、昨年に俺が逮捕した男でしてね。その男が散々に追いかけ回した"後輩達"から俺は被害者調書を録っています。」


「では、その調書には後輩たちが辞めた"本当の理由"が書かれていると?」


「その通りです。」


煙草はもう、シケモクになっていた。落ち着いてきた火を携帯灰皿でもみ消して、古浦は話の続きを促す。


「…警察の捜査結果が、嘘をつくとは思えませんね。」

「"間違いない"とは思っていますが、残念な事に証拠がありません。」


「この状況で黒沢さんが嘘をつくとは思えません。きっと間違いではないのでしょう。」


辰実が"わわわ"の嘘の部分を証明できるカードを隠し持っている事は、怜子の逆転を願う古浦にとっても都合の良い話であった。…元より1人で探していくと考えていた真実であるが、ここで欠けたピースを埋められるのであれば、辰実と手を組むという手段も前向きに捉えた方が良いと考えてもいた。


「それで、どの場面で"切り札"は見える事ができるんですか?」

「どこで出そうなんて考えていません。もう"ここしかない"と思ったらやっていくしかないでしょう。」


「危ない橋ですが渡るだけのメリットはありますね。…どこでカードが出てくるか楽しみに待ってますよ。」


(元よりヘマがこけない話ではあったが、更に追い込んできたな。)


溜息にならない程度に、静かに息を吐く辰実。こういうのはあまり気にしない方が良いと思いながら、口ではコーラを求めていた。近くに自販機が無い事を知っていただけに気持ちが沈みながら部屋を後にする。


(どうなるかな黒沢さん?と思わせておいて1つ。)


話をしていた部屋のテーブル。ジャケットに仕込んでいたICレコーダーを取り出し、辰実が見ていないのを伺いながら下に潜ませる。これは"古浦にとって"の切り札であった。


(あの男が、俺だけに状況を任せるような事をするか?)

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