気がつけば、見知らぬ場所にいた。
自分が何者なのかも分からない。
目の前に広がっているのは、赤い世界。
そこでは、多くの者たちが休むこともなく、ただ黙々と与えられた役割を果たし続けています。
誰も疑問を持たない。
誰も立ち止まらない。
そして、その世界には独自の規則があり、そこから外れたものには容赦がない。
読み始めた私は、
「なんて理不尽な世界なんだろう」
と思いました。
主人公もまた、この世界に違和感を抱きます。
なぜ、みんな何も疑わないのか。
なぜ、こんなにも当たり前のように働き続けているのか。
もっと別の生き方があってもいいのではないか。
その疑問を抱いた主人公と一緒に世界を歩いているうちに、私もいつの間にか、
「ここから何かを変えられないだろうか」
と思いながら読んでいました。
——ところが、この物語。
読み進めるほどに、最初に見えていた景色が少しずつ揺らいでいきます。
自分が「おかしい」と思ったものは、本当におかしかったのか。
残酷に見えたものには、別の意味があるのではないか。
そして、自分が当然のように「正しい」と思ったことさえ、本当にそうなのだろうか。
同じ世界を見ているはずなのに、立つ場所が変われば、その意味まで変わってしまう。
その感覚が、とても面白く、興味深かったです。
しかも、この世界には至るところに、
「これは何なのだろう?」
と思わせるものが置かれています。
赤い世界。
働き続ける者たち。
奇妙な“割符”。
それぞれ違う役割を持つ存在たち。
そして——『我が名は『C』』というタイトル。
読みながら、ぜひ考えてみてほしいです。
ここは、いったいどこなのか。
主人公は、何者なのか。
そして、“C”とは何なのか。
答えを知ったとき、それまで自分が見ていた世界がどう見え直すのか。
そこまで含めて、ぜひ最後まで自分の目で確かめてほしい物語です。