これはきっと美しい愛の物語だ。
- ★★★ Excellent!!!
すべてがハイレベルの本格的ファンタジー作品です。
物語の中心に位置する人々はいますが、それ以外にも数多くの登場人物が活躍する群像劇となっていて、一人一人の作り込みが実に緻密です。
彼らの中には善人も居れば偽善者も存在し、果ては極悪人まで出てきますが、誰ひとりチート能力などはなく、何事にも自身が持てる限りの力と知恵によって挑まなければなりません。
しかも同じ善人同士、または悪人同士でも、すべて考え方が異なっていて、各々が立場やしがらみに囚われ、苦悩する姿が真に迫ります。
後半では大きな事件が発生し、人間社会の歪みや組織間の対立、組織内でさえ一枚岩ではないところなどにリアリティを感じさせられますが、だからといってこの物語は、決して読む人にストレスを与えるものではありません。
そのような先行きが怪しい中でも、物語の中心人物たちが小気味よい知恵の閃きで、難局を打開していく姿には爽快感すら感じるのです。
そして物語にちりばめられた謎と伏線は、読む者の想像力を刺激して、それが結実した時の答え合わせの楽しさは、まるで質の高いミステリー小説のようでした。
本当はもっと詳細に書きたいことがたくさんあるのですが、この作品は先を知ってしまうともったいないので、ぜひ予備知識なしで頭からゆっくりと読んでいただきたいです。
硬派なファンタジー好きなら満足すること請け合いです。