第2章2

『フィギュアハンター、それは様々なジャンルのフィギュアを転売屋(テンバイヤー)に渡さない為に存在する異能力者の総称である』

『彼らの力は一歩間違えれば、大規模テロを起こせる程の能力を持つが、その能力はコンテンツ流通を守る為に使われた』

『しかし、彼らの存在を歓迎しない勢力が存在した、それは転売屋が購入するCDの利益で活動している超有名アイドル――』

『彼女達にとって、転売屋は自分達の活動資金を貢いでくれると言っても過言ではないお得意様だった』

『その為かフィギュアハンターの行動に関して、超有名アイドルは妨害工作を続け、自分たちこそが神コンテンツである事を全世界に見せつける事にしたのである』

『しかし、最終的には彼女たちの野望は悪質なチートであるという事が発覚し――ガーディアン勢力によって摘発される事になった』

『その後――彼らは超有名アイドル商法を主導した勢力を摘発する事によって、活動を停止したという』

 これは、数年前に活躍したフィギュアハンターのダイジェスト動画に使用されているナレーションと言われている。ただし、その動画は既に削除されていた。権利者削除でもないのに、何か特殊な事情でもあるのだろうか?



 ネット上の掲示板等でもソース不明とされているフィギュアハンターのまとめサイト、超有名アイドルファンだけでなく一部の炎上勢力は否定を続けている。実際、フィギュアハンターの存在を否定しているのは摘発された勢力ばかり――つまり、彼らはフィギュアハンターを黒歴史としたいのだ。

【フィギュアハンターの影響で我々が風評被害を受けた】

【何としてもハンターは駆逐しなければならない】

【超有名アイドルこそ、日本で一番売れている神コンテンツなのに――その人気が邪魔だと言うのか?】

 つぶやきサイトでは、それこそフィギュアハンター同士のバトルで言及すれば負けフラグになるような発言が後を絶たない。結局、どの時間軸でもどの世界線でも――超有名アイドルこそが唯一の神コンテンツであると言及する勢力は必ず現れる――これは決定事項なのだろうか?

【超有名アイドルは、ブラウザゲームで言う所の外部ツールやチートを使用してプレイしている勢力と同じ。さまざまなグレーゾーンや法律の抜け穴を悪用しているに過ぎない】

 この一言が、まさに正論なのだろう。しかし、それを表だって言えるような時代であれば――。



 6月11日午前11時30分、一連の事件に関してニュースサイトをタブレット端末でチェックしていたのは島風(しまかぜ)あいかである。彼女もオープンセールへ向かおうと考えていたが、一足遅かったというべきだろう。目当ての物は売れてしまった訳ではなく――。

「何だ、これは――」

 島風が高架下の公園で目撃した物、それはガーディアン勢力による現場検証だった。

「一体、何があったのですか」

「こちらも全く把握はしておりません。しかし、転売屋勢力を発見したという通報を受けて――」

 島風の質問に対し、ボディアーマーを装備したガーディアンの男性も困惑しているようだ。どうやら、彼らも到着したばかりのようである。その為か、現場検証もこれから開始するという事らしい。

「ひとつだけ分かるのは、この辺りでオープンしたフィギュアショップでバーゲン品のフィギュアがピンポイントで狙われる事件が発生している事だけです」

 ガーディアンの方も、独自で調べているのだが――決定的な証拠は見つかっていない。バーゲン品のフィギュアが狙われているのはネット掲示板やつぶやきサイトでも言われていることだ。それ位にガーディアンでもフィギュアハンター関係の情報は少ない。過去には調べていた資料もあるのだが、最近の出現情報がない為にデータを削除したという事らしい。何故削除されたのかは諸説あるのだが、ガーディアン側の不手際や不祥事絡みではないらしい。真相に関しては謎のままだが。

「一体、どれほどのハンターが――?」

 島風が現場を眺めていた所、視界に入ったのはグラーフの姿である。しかも、白いアーマーを装備した状態――戦闘態勢で。

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