あなたの色は何色ですか?

迫真 秋

第1話

「‥‥ける‥。‥たける!」

目を開けると天井が涙で歪んでいた。

「あぁ‥またか」

これで目が覚めるのはもう数えきれないほど体験した。一般で言ったら目覚まし時計のアラームと一緒の様な感覚だ。

俺は木下健。現在24歳のフリーター。22歳で社会のお荷物となった。理由は2年前に片想いだった幼馴染の加藤朱理が突然姿を消したからだ。原因は急性心筋梗塞。ショックが大きすぎて仕事も休み続け引きこもりの生活を過ごしていたらクビになって何も変わらないまま現在に至る。

「こんな時間か。そろそろ行かないとな」

一応一人暮らしでお金が必要だから週4でバイトはしている。

「はぁ〜〜。よいしょ」

岩でも背負ってるんじゃないかと思う重い腰をあげなから俺はバイトに向かう。外は夜だった。星は綺麗には見えない。

「木下くんさ〜、何回同じミスするの?これ何回目?顔も暗いしそれじゃお客さんからしても印象良くないんだけど」

バイトに行く度に店長から言われる。何回目って聞かれても知らんし、そもそもやる気がないし。

「もう今日はいいよ。君何か疲れてそうだし。そんなんでお客さんの前に出るのも失礼だし」

そう言われて俺は素直にバイト先から出た。帰り道蛍光灯に光る水溜りから自分の顔が映った。確かに今日はひどい顔をしているなって思った。家に着きすぐベッドへうつ伏せになる。また彼女の事を思い出す。

「健ってさ好きな人とかいないの?人って好きな人を見つけている時顔が明るく見えるんだって」

朱理は幼い頃から常に誰とも仲が良くってポジティブで俺と真逆の存在だった。正直長く付き合うにつれてそういう人間性が羨ましかったし好きになっていた。朱里が亡くなった時何であの時好きだったって言わなかったのか。もし彼女が生きてたら今の自分は変われていたのか。

暗闇の中のベッドに横たわりながら何百回目の後悔を考えている時、高校の友人の隆から電話が来た。

「よおニート!生きてっかー?ちょっと呑みにでも行かね?」

正直乗り気じゃないけどこいつとは長い付き合いだし何かの願掛けとして行くことにした。

外に出て夜空を見上げるけど星は綺麗じゃない。むしろ夜空とほとんど一緒の色に見える。そうこう歩いていると居酒屋の前に隆がいた。

「よお!お前バイト終わるの早かったな!もしかしてとうとうクビになった?」

いつもの様に隆は冗談で俺に言う。店内は時間にしては客が多くて少しざわついていた。

「お前さ、まだ朱理ちゃんの事引きずってんの?」

「別にそんなんじゃねえし」

「まあ朱理ちゃん、いい子だったしな〜。でもよ健、もういない人を想い続けても意味ないんじゃね?付き合ってもいないんだろ?」

確かにその通りだった。むかつくけど正論で何も言い返せなかった。その後隆が何か閃いたみたいな顔をした。

「お前マッチングアプリやれよ!もしかしたらお前のそのネガティブ直してくれる女の子に出会えるかもしれんし!」

そう言って隆は無理矢理俺の携帯からインストールして勝手にプロフィールを作った。

「おい、やめろよ!」

俺は満更でもない顔をした。

「まあ物は試しってやつだ。またどうだったか教えてな!」

隆はなんだか嬉しそうな顔をしてそう言った。その後俺らは解散した。

お酒が入ってたから帰りはほとんど覚えていない。ただ、また朱理の声がした。

「健、久しぶり。」

気がつくと朝になってた。朝と言っても何だか薄暗い感じだ。

二日酔いでぼーっとしてる中、携帯を開く。

携帯のホーム画面にマッチングアプリの通知が来てた。その時俺の中で時が戻った様な感覚になった。

相手の名前に加藤朱理と書いてあった。

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あなたの色は何色ですか? 迫真 秋 @ykk_jp

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