ある日 森の中 〇〇さんに出会った。
【Side】???
森の中を歩いている。満身創痍な身体とは反対に、その瞳にはギラギラとした闘志が宿っている。
もう満足に食事も取れていない。残る力を振り絞り、足に力を入れる。目に入った生物を手当たり次第に捕食しているが微々たるものであり巨体の活動エネルギーを賄えるわけもなかった。
不意に存在を感知する。大きさからして、ゴブリンだろうか?
――――いや。この魔力量は人だ。しかもそこそこの実力者だ。
――ふっ。
つくづくツイていないな。本来であればSランク冒険者であろうと、我の敵ではない。しかし、この身体の状況では流石に分が悪いな。
今の状況を説明して見逃してもらうか?
相手は人間だ。嬉々として私の首を狙ってくるに違いない。今まででもそうだ。富や名声欲しさに我に挑んでくるものは数多くいた。
人とは愚かな生物だ。話し合いなど出来るわけがない。
――であれば、取るべき行動はひとつしかない。
私は覚悟を決め、最後の力を振り絞った。
ガオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ン゙ン゙ン゙!!!
唸った。
――――――――――――
Side:レイ
不意に敵意を感じ、即座に地面に伏せた。直後、轟音とともに近くの木々が薙ぎ倒される。否、消滅した。
状況を冷静に把握できずにいるが、奥からのそのそと一体の魔物が歩いてくる。魔物といえど、知性と闘志を秘めた目をしている。体長にしておよそ2m弱で、全身を漆黒の毛並みで染め上げている。
翼を広げると大地を揺るがすほどの巨大な姿がより一層強調され、傷を負い満身創痍な状態にも関わらず圧倒的なオーラを放って佇んでいる。
そんな呑気に観察している場合ではなかった。体毛が逆立ち、膨張する。まるでハリネズミのように毛先を尖らせーーー
(ーーーツ!?)
収納を発動させつつ、迷わず横に飛ぶ。
両翼を大きく広げ、薙ぎ払う。それだけで暴風が発生し、暴風となり縦横無尽に駆け抜け岩や木々を粉砕する。
剣で相手にダメージを与えようと試みた。しかし、剣と爪がぶつかり金切り音が鳴る。体制を崩さずに踏みとどまろうとしたが、抵抗虚しく俺の身体は弾き飛ばされる。
先ほどから俺と一定の距離を保ちつつ、牽制してくるだけで直接的には攻撃してきていない。
神獣の体表には、鱗のような硬い装甲があったが、所々抉れたような傷があり、両翼もボロボロであった。さっきまでは気づかなかったが、どうやら手負いの状態のようだ。
魔力を纏った爪で地面を突き、地面を抉り、そのままえぐった岩塊を投げ飛ばしてきた。俺はその攻撃を避けるだけで精一杯であり、攻め入るチャンスがない。
スッ……ふううううぅ
俺は息を吐き出すと覚悟を決めた。
俺は相手と向かい合うと、拳を構えた。
そして、お互いに駆け出す。
相手の爪の方が早く俺に届くだろう。だがしかし、相手は爪が当たる直前――――――崩れ落ち、その巨体が大地を揺るがす。その隙を見逃さずに懐へと潜り込むと拳を繰り出す。
(ーーーーーーーーーーーーーッ!!!!)
倒れ込んだ体勢から、俺の身体噛みついてきたのだ。最後の抵抗だろう。
「ーーーーーこれでッ!!終わりだツ!!!」
噛みつかれたまま、俺は相手の唯一の弱点であろう喉へと正拳突きをぶちかました。
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