プロポーズ作戦

「なあ、健太郎。俺さプロポーズするわ」


「マジで!ついに。そうだな長すぎた春になると悲しいからな」


そうだ、長すぎたんだ。だからやり直しにきたんだよ、俺は。どうやって来たのかは訳が分からないけどな。


「まずは、リングデザインするわ。」


「いいねーさすが。世界に一つのリングだな。俺になんかできる?ヘアメイクは出来っけど。あ、どうやってプロポーズすんの?レストラン?」


 いや、俺は絶対に陽菜の涙を誘う感動のサプライズプロポーズをするんだ。

陽菜が好きな場所は、海か.....海はもう寒いな。そうだ陽菜はクリスマスも大好きだ。

サンタさんに会いたいって言ってたからな〜。


「よし。俺はサンタクロースになる」

「は?」

「サンタクロースになる。」

「ああ、どうぞなりたきゃご自由に」

「手伝え。」

「サンタメイク?」

「ちゃうわ。サンタに特殊メイクして爺さんなったら引くだろ。待ち合わせして、サンタの俺は適当に、うちの店のチラシでもばら撒いとくわ。」

「はあ、んで?」

「おまえは陽菜が俺探しにウロウロしないように、サンタ前に誘導しろ」

「えー。まぁいいけど。」

「じゃ、リング急ぐぞ」


 俺はうきうきしていた。陽菜に振られる前にプロポーズしてしまおう。前回振られたのは、クリスマスよりあとだ。年明けてから。

ただ前回は、クリスマスあたりには陽菜は少し態度が違った。




「陽菜 ただいま」

あれ?今日はうちに来るはずだよな。まさかもう別れようとか言わないよな......。


「陽菜〜陽菜〜陽菜―――――――ッ!!」


「もうっかずちゃん トイレですーっ」

「ああ ごめん」


俺はうきうきのまま陽菜に話しかける。


「陽菜!クリスマスまであと二週間だろ?」

「うん。」

「絶対にデートするぞ!」

「デート?うん。どこ行く?」

「それは俺に任せて〜」

「へぇ、楽しみ」


 楽しみと言った陽菜の声が、全然楽しみじゃなさ気なのは気のせいか....俺にくっついても来ない。

お湯を沸かして紅茶のティーバッグをマグカップにぽいと放り込む仕草がなんとなく素っ気ない。


まさか、既にこの時期俺は愛想つかされてたのか?何かしたか.....俺。

いやだ―――――っ。どうする俺。陽菜と居たいんだよ......ずっと。


「陽菜っ!おいで」

くるか、こい こい 俺の陽菜。俺は目を閉じる。

ああ 柔らかい陽菜の体、温もり。

陽菜は俺の胸に飛び込んできた。が、何も言わない。


「陽菜?どうした?」


「かずちゃんはさ、子供何人ほしい?」


ん?!結婚すっ飛ばして子供の話。まあ俺らは若くない。一人いれば嬉しいくらいだな。


「一人かな!男の子でも、女の子でも」

「そうだよね。私も欲しいな......」


 いや、これは結婚急ぐべきか?それとも今からお子を先に授かるか。今の今でもいいぞ俺は準備完了だ。

と、陽菜の顔を見た俺は......。

ん?陽菜は微笑んだ。微笑んだけど、泣いてる気がした心は。

昔の俺には分からなかったのか。今の俺にはそんな気がした。いや不安すぎて勝手にそう見えるだけか?


 前回とは会話は違う。俺が違う言動をしたから、でも陽菜の様子は同じという訳か。少しずつ年明けに向かって様子が変わるのは。

だとしたらもう既に、陽菜の心変わりは始まっているということか??


俺はもし今回陽菜にまた振られたら、またさらに一年前にいくのか。36歳の誕生日?

俺が陽菜に出会ったのは34歳だ。

チャンスは後2回か3回?いや、そもそもなんの原理で今があるのかも分からない、未来に戻る保証も、過去に行く保証もない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る