藤沢の告白②
「すっ、すみませんっ!」
自分の発した大声に、藤沢は俺以上に驚いたようで。
慌てて立ち上がると、周囲に何度も頭を下げてから、再び席についた。
相変わらず、律儀な奴。
いい奴過ぎるぞ、藤沢。
まぁ、そんなところ、好きだけどな。
「なんだよ、四条。いきなり驚かせるなよ。なんでわかったんだ?」
「はぁっ?」
「お前、いつからそんなに鋭くなった?」
クソ真面目な顔をして、藤沢は俺に言った。
何の嫌味もなく、どストレートに。
・・・・俺、お前のそーゆーところ、ちょっとムカつく。
いつから俺は、鈍感キャラになってんだよ。
「・・・・藤沢、お前もしかして、俺をバカにしてやしないか?」
「いつ俺がお前をバカにしたんだ?」
「たった、今」
「・・・・してないぞ?」
真顔のままで、藤沢は俺を見ている。
悪気が欠片もない所が、どうにも喰えない奴だ。
・・・・まぁ、そこが藤沢らしいし、やっぱり好きだけどな。
「まぁ、いいや。それで?夏川と何があった?」
「あっ・・・・あぁ、うん。実は、な」
とたんに、藤沢の顔がフニャリとデレた。
見てるこっちが、恥ずかしくなるほどに。
「俺、夏川に告白したよ、夏休み中に」
「うん」
「ちょっと、待たされたけど・・・・」
「うん」
「OK、もらえた」
結果は聞かずとも分かっていたけど。
藤沢がまるで子供にみたいに、嬉しそうに笑っているのを見ると、なんだか俺まで嬉しくなってしまう。
「夏川な。お前に振られた事よりも、お前に成り行きで告白したことの方を、すごく気にしてたんだ。本当は、言うつもり無かったのにって。瑠偉の事も、悪気があってやったことじゃなかったって。すごく、気にしてた。だから、さ」
いつの間にかクソ真面目な顔に戻り、藤沢は言った。
「夏川のこと、許してやってくれないか?」
「えっ?」
「俺、嫌なんだよ。夏川とお前の間が、拗れたままなのは。俺は夏川が好きだけど、お前の事も好きだ。変な意味じゃなくて、なんか、放っておけないんだよ、お前の事。夏川もお前も瑠偉も、俺にはみんな大事なんだ。だから、変な関係にはなって欲しくない」
「藤沢・・・・」
どこまでも真っ直ぐな藤沢の目。
なんだよ、こいつ。
いい奴が、過ぎるだろ。
バカじゃないか、本当に。
・・・・でも、俺は嫌いじゃない、藤沢のそーゆーとこ。
「別に俺、もう気にしてねぇよ」
「ほんとか?!」
「うん」
本当は、まだちょっと引きずっている部分はあったけど。
ここは【ザ、いい奴!】の藤沢に免じて。
つーか。
俺だって、夏川の気持ちに全然気づきもしないで、あいつに酷い事言ったし、な。
お互い様、なんだよな。
「そっか、良かった!じゃ、呼んでもいいな?」
「ん?誰を?」
「夏川」
「・・・・はぁっ?!」
藤沢はイソイソとスマホを取り出し、何やらメッセージを送信し始める。
まてまてまて。
嘘だろっ、今からかっ?!
俺、心の準備が全然できてないんだけどっ!
あれ以来全然まともに顔も合わせてないのに、どんな顔して会えばいいって言うんだよっ!
焦る俺をよそに、藤沢は再びフニャリと顔を綻ばせ、嬉しそうに俺に言った。
「すぐ、来るってさ」
マジか、藤沢・・・・
俺、お前のそーゆーとこ、ちょっと付いていけないかも・・・・
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