第49話 乱戦

 アラタの仕事場のカフェ。ロイヤルパルス。

 今度は、黒い服の男性がやってきた。

 ミズチだ。

 もう仕事の時間が終わる。アラタがあくびをかみころした。

「お先に、失礼します。お疲れさまでした」

「お疲れさん」

「お疲れさまです」

 マスターと挨拶のやりとりをして、アラタが店を出る。なぜか挨拶をしたコハルと一緒に。ミズチも続いた。

 夕方でも、焼けつくような暑さが体力を奪う。コハルのうなじに、汗がきらめく。アラタもミズチも、汗を流していた。

「せっかくのソウオンを倒すチャンスだったのに、アラタ、お前は」

「イマジン空間って分かってても、店が壊れるのは好きじゃないからな」

「……」

 無言でカードを取り出すミズチ。左右の手に1枚ずつ。

 アラタも続いた。

「だから、なんなの、それ」

 やはり分かっていないコハル。ほおを膨らませていた。

「先に帰っていいぞ」

「イヤよ」

「なんて強情ごうじょうな娘なんだ」

 ミズチがあきれていた。それでも、戦いは止まらない。止められない。


「カンサロウケ・ジャニュ!」

「カンサロウケ・フェブ!」

 イマジン空間が広がっていく。紫色で支配された場所に、色のついていないものがいくつかある。

 ひびく金属音。攻撃で建物が壊れた。つづいて、斬撃同士がぶつかる。

 そこへ、新たに誰かがやってきた。

「やります。カンサ・ノーベン!」

「いまがチャンスだ! カンサ・ディッセ!」

 ハナコとツヨシだ。

「では」

手筈てはずどおりだね」

 二人はミズチを狙う。

「なにやってんだ」

 怒るアラタ。もちろん、二人がかりで一人を狙うことに対していきどおっていた。

「上等だ!」

 ミズチはおくせず立ち向かう。

 そこへ、さらにネネとササメがやってきた。

「カンサ・マーチ!」

「カンサ・ジュラ!」

 二人が一言ずつ言う。

「ごめん。遅くなった」

「わらわはあやまらぬぞ」

 大人数になった。その中に、紫色の人物が混じっている。コハルだ。

「どうなってるの?」

 戦いは乱戦に突入する。周りよりも温度の下がったイマジン空間は、別の意味で熱かった。

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