第38話 演習

 薄手の服を着た人々が、汗を流して行き交っている。

 ここは、アラタが初めてカードを手にした地。駅の近くの公園。

 その中央に、ふたつの人影があった。

「カンサロウケ・ジャニュ!」

「カンサ・ジュラ!」

 ふたつのカードを手にするアラタと、右手にカードを持つササメだ。

 イマジン空間が開いた。紫に染まっていく周囲。

 カンサ使いは色がそのまま。変わっていない。

 呼び出された鎧姿のカンサロウケとカンサも、色は紫ではない。

 カンサロウケ・ジャニュは、カンサ・ジュラ比べてシャープな見た目をしている。鎧が薄くなっているのだ。

 カンサもカンサロウケも、現実には影響しない。召喚されたときに開くイマジン空間の中だけで、力を発揮できる。

 ササメと戦うアラタ。

 といっても、本人が戦っているわけではない。召喚したカンサロウケとカンサを操り、戦わせている。カンサバトルだ。

 カシャンと軽めの音を響かせて、ジャニュがける。

「速い。強い」

「くうっ。小癪こしゃくな」

 ガシャガシャと重めの音を鳴らし、ジュラが槍で剣を防ぐ。

 ロウケのカードを使い、カンサロウケ・ジャニュを呼び出せるようになったアラタ。その力は本物だった。手加減しても、カンサ・ジュラを余裕で圧倒できる。

「まだ続けるか?」

「何をいい気になっておる。まだまだこれからだ」

 ササメは諦めていなかった。素早い動きのジャニュに対し、あらかじめ槍の攻撃を置いていた。

「ぐっ」

「まだ、続けるか?」

「へっ。言ってくれるぜ」

 カンサへのダメージは、カンサ使いと連動している。それは、カンサロウケも例外ではないようだ。アラタは、痛みをこらえているらしい。

 とはいえ、前ほどのダメージはない。カンサロウケは、防御力も上がっているようだ。

「戦いをやめさせて、どうしようというのだ」

「どうもこうもないだろ。マモノは危険だ」

「そんな理由で、願いを諦めるのか!」

 スピード、パワー、ガード。どれをとっても、カンサロウケは強い。

「くらえ!」

「ううっ」

 ササメがよろめいた。

 思わず、カンサロウケ・ジャニュをしまうアラタ。

「大丈夫か?」

「気安く触るな」

 上気した顔で、アラタの手を跳ねのけるササメ。悔しそうな表情をしていた。

 カンサ・ジュラをしまい、イマジン空間が消えていく。

 公園内で戦っていたので、被害は少ない。壊れていたものが元に戻った。イマジン空間での破壊は、現実に影響しないのだ。

 もちろん、紫色だった辺りは元の色へと戻っている。

「どこ行くんだよ」

「どこでもいいであろう」

 アラタに手を抜かれている。ササメは、そう感じているようだ。

 ササメは、眉間に強く力を入れた。

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