第36話 輝く左手

 薄着の人が増えてきた。

 高い建物の上からだと、イマジン空間が遠くに見える。

 アラタは、コハルと一緒にいた。

「ちょっと、用事ができた」

「ちょ、ちょっとー」

 マモノの存在を危惧きぐして、アラタが現場に向かう。

 そこはいつもの公園ではなかった。カフェだった。いや、元カフェ。建物は跡形もなく粉砕している。紫色のマスターと客は、のんきに談笑していた。

 イマジン空間には、すでにマモノが現れていた。オオカミのような見た目。

「ラストアーツ!」

 誰かのカンサが、クレッセントリボンでオオカミのようなマモノを撃破した。

 大爆発が起こる。わずかに残っていたカフェの残骸ざんがいも吹き飛んだ。

「あ、君は」

「また会ったわね」

 カンサを使っているのは、ハナコだった。

「カンサ使いだったのか」

「やりなさい。ノーベン!」

 襲いかかるハナコのカンサ。金属音が鳴る。とはいえ、カンサを召喚していないと戦いにはならない。

「やめろ」

 といって止まるカンサバトルではない。早くやめさせないと、マモノが現れてしまう。仕方なく、アラタはカードを手に取った。大きくポーズをとる。

「カンサ・ジャニュ!」

「なにやってんだ、アラタのやつ」

 カフェのマスターが、いぶかしげにつぶやいた。

 リボンを武器にするノーベン相手に、ジャニュは苦戦を余儀よぎなくされていた。

「手こずっているようだな」

 ミズチが現れた。特に何かを求めるわけでもなく、カードを構えている。

「ミズチ!」

「こい。カンサ・フェブ!」

 2対1。優勢になったかと思いきや、さらなる乱入がある。

「面白くなりそうですね」

「ぼくらも混ぜてよ」

 ヒサノリとコウスケが現れた。やはり、それぞれカードを構えていた。コウスケは左手で。

「カンサ・セプテン!」

「カンサ・オクト!」

「店の外で、なにやってんだか」

 カフェのマスターは、やはり状況が分かっていない。渋い顔になっていた。

 ガシャガシャと音を立てるどもえの状況は、すぐに大きく動くことになる。

 乱戦のなか、ハナコがヒサノリとコウスケ側に回ったのだ。

 ミズチがピンチになった。

 出会ってからこれまでのことを、走馬灯そうまとうのように思い出すアラタ。助けてもらったことは少なく、いつも対立していた気さえするミズチ。

 それでも、もはや戦友だった。

「いまのままじゃダメだ。もっと、力が欲しい!」

 アラタが強く願ったとき、左手が熱くなる。

 光がおさまったとき、そこにはカードがあった。ロウケと書いてある。

 ロウケのカードが現れたのだ。

「そ、それは」

 ヒサノリが驚くなか、アラタが叫ぶ。

「いくぞ! カンサロウケ・ジャニュ!」

「姿が変わる? そんなことが?」

 コウスケも戸惑っていた。対して、ハナコは意外なリアクションを見せる。

「へぇ。面白いじゃない」

 カンサロウケへと姿が変わったジャニュ。それまでの重々しい鎧から一転、シャープで軽そうな鎧になった。

 ジャニュが斬りこむ。セプテンが受けた。そこを、オクトが狙う。だが、すでにジャニュの姿はない。カシャンという軽めの音を響かせて、セプテンの背後に回っていた。

「速い」

 カンサロウケとなったジャニュは、圧倒的な強さを見せた。

 ジャニュが、フェブを助ける。

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