姉ちゃんの身に、一体、何が……。
僕が掴んだストローは、その数なんと18本。元々刺さっているのも含めると19本だ! どやっ!
「あまちゃん、信じられない……」
「さすがは天太郎くん……KYですね」
「ここは6本で充分でしょうに……」
「……私たちの分だけで良かったのに」
「好きなだけって言った私が悪いの……そっか、天太郎くんはそういう子か……」
顔が熱い。恥ずかしい……。す、すみません。皆さんのおっしゃる通りです。調子に乗ってました。でも許してくれーっ! 好きなだけって言われるとたくさん取ってしまうのは、貧乏人の性なんですーっ!
まっさーが茶目っ気たっぷりに言う。
「こうなった以上、全てのストローを使って頂きますよ、天太郎様!」
無茶振りだ。まっさーの前では苦笑いは通用しない。フルゲート19人のところ、今確定しているのは僕を含めても6人。残り13人に協力してもらうだなんて、無理ゲーだ。
どうやって探せばいいのかも分からない。だって僕、友達少ないし。スマホを眺めても、直ぐに来てくれそうな人は誰もいない。こうなったら、まっさーにも参加してもらおう! と思ったが、早々に回避宣言された。
「私はパス! どうやら天太郎くんは、見ている方が面白そうだからね」
誰かに言われたことのある言いまわしだ。みんな面白がっている。僕は、孤立している……。
僕があたふたしていると、どこのカフェでもお馴染みの掛け声が元気に響いてくる。聞き慣れた声でもある。
「ありがとうございました。またのご予約、お待ちしております!」
まっ、まさか! どこかでバイトしてるとは言ってたけど、この店だとは聞いていない。声が似ているだけってこともあり得る。そっと目を向けると……。
「ねっ、姉ちゃん!」
やっぱりだ! こんなところで姉ちゃんに会うなんて、奇遇だ! ラッキーだ! 渡に船、地獄に仏だ! 僕は本当に運がいい! 僕は直ぐに姉ちゃんのところへと走り寄り、事情を説明した。
「なるほど。それは面白……大変そうだな。よし、協力してあげよう!」
姉ちゃん、面白がっている……もしかすると僕は、とんでもない化け物をこのイベントに引き込んでしまったのかもしれない。
姉ちゃんの行動力は半端ない。いくつかのテーブルをまわり、一緒に飲んでくれる人を募った。読モでもしてそうな女子大生3人組を連れてきてくれたときは、ちょっとだけうれしくなった。それも束の間……。
「師匠がおっしゃるなら、よろこんで!」
「私たち、何だってしますよ!」
「たとえ撮影の日程と被っていても、火の中でも、水の中でも!」
3人とも姉ちゃんの弟子だと分かったときには、背筋が凍った……。
姉ちゃんが他に引き込んでくれたのは、青い目をした3人組や、やたらと背の低い姉妹たち。これで全部で15人。あっという間に残り4人。
「あそこにおあつらえ向きのテーブル発見!」
と、姉ちゃんがるんるん気分で猛ダッシュしていった先には、4人組の女性が見える。ここからじゃ顔はよく見えないけど……弟子でないことを祈るばかりだ。
姉ちゃんがおあつらえ向きのテーブルに行っている間、僕は引き受けてくれた8人に挨拶していた。みんな突発イベントに心をうきうきさせている。
姉ちゃんの弟子軍団は、フレンドリィーでクラリティーでトレンディーだ。
「はじめまして、弟くん!」はい、はじめまして。
「師匠……君のお姉さまには日頃からお世話になってます」そうですかぁ。
「はなしに聞いている通りね!」どんなはなし? 気になる……。
青い目の3人組は主従関係にあるようだ。
「ハァーイッ!」はぁーいっ!
「Thank you for inviting us」分かんない……。
「主は『お招き、感謝、感激、雨、霰』と言ってます」そうでしたか。
やたらと背の低い姉妹は、身長が伸びない方が都合がいいらしい。
「よく考えたら、背が伸びちゃうかもしれないわ」牛乳飲んで?
「大丈夫よ。ちゃんと別のところが大きくなるから!」どこが?
一癖も二癖もありそうだから、これ以上は突っ込まないことにする。それよりも、姉ちゃんが遅いのが気になる。これまでは電光石火だったのに、なにかトラブルでもあったのだろうか。咲舞と一緒に様子を見に行くことにする。
おあつらえ向きのテーブルに着くと時間がかかっている理由が明らかになる。
「美紀先生! それから景子アナに皐月アナまで!」
残りの1人は梨花先生で、姉ちゃんと一触即発の雰囲気だ。というより、一方的に脂汗をたらたらと垂らして疲弊しているのは、姉ちゃんだ。こ、これは……。
「姉ちゃん!」
「師匠!」
「あ、天太郎……あとは任せた……ぐはっ」
ばたりと音を立てて倒れる姉ちゃん。『ぐはっ』って何!
「姉ちゃーんっ!」
「師匠ーっ!」
あの強い姉ちゃんがこうも易々と倒れるだなんて。姉ちゃんの身に、一体、何があったというのだろう……。
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ぐはっ!
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