🌒蓮の秘密✶誰も知らない………

🌒蓮の秘密✶誰も知らない………

作者 あのね!

https://kakuyomu.jp/works/16816700426586173295


 ミスター星陵学園として優秀な和泉蓮は、心が女性のまま男として育てられた性分化疾患インターセックスだった。彼は密かに思い焦がれる友人晴樹に秘密を打ち明けると今までどおり友達でいようといわれて解放された気持ちになるも「気持ち悪い」と毛嫌いされ、絶望のあまり校舎屋上から自殺する物語。



 謎めいたタイトルである。

 蓮の秘密を探す話なのか、誰も知らない理由を求める物語なのか、それともあるいは……すべては「読んでからのお楽しみ」である。



 文章の書き方等は目をつむる。



 ですます調の三人称で書かれた文体。

 ラジオドラマを書き起こしたような、場面説明の地の文と会話文で書かれ、絵文字や顔文字が使われている。

 途中に家族構成が説明され、インターセックスの説明が語られ、最後に追伸と称されるあとがきが付け加えられている。

 読んでるとき、『パタリロ』の作者、魔夜峰央の耽美な世界が思い浮かぶ。


 武蔵村山にある星陵学園には、成績は常にトップでスポ-ツ万能、東京中に知れ渡るほどのイケメンぶりから女子全員を魅了して離さないミスター星陵学園、ミスタ―パーフェクトと呼ばれし男がいる。彼の名は、星陵学園三年、和泉蓮。

 その彼が、屋上から飛び降りて即死したところから物語がはじまる。警察が関係者を当たって自殺か他殺か、謎を究明していくミステリーかと思いきや、話は和泉蓮の幼少期の話がはじまり、彼の秘密があきらかとなる。

 家の跡継ぎを考え、幼い彼を男性として育てるために外科出をしたが、心は女性だったことが、すべての悲劇を生んでいる。

 成長した彼は、自分の体と心の違いから苦悩しつづけたあまり、友人の晴樹に打ち明ける。「俺達は今まで通り友達さ」といった彼に「一人で思い悩んでいたけど晴樹ならきっと受け入れてくれると思ったんだ」と救われた気になる。

 だけど、秘密を打ち明けて「嬉しさのあまり晴樹に飛びつ」くと「止めてくれよ!気持ち悪い!」「キッ気持ちワルッ!」と言われ、絶望して飛び降りたのだった。

 はたして、刑事二人はこの真相にたどり着けたのだろうか。

 家族に事情を聞いても、ひょっとしたら家の恥になるかもしれないと考えて話さないかもしれない。

 飛び降りたのを目撃しているのは、友人の晴樹ただ一人。

 実質、彼の言葉で絶望してしまい自殺を図ったのだけれども、彼が口を閉じれば真相はわからずじまい。おそらく自殺として処理されるだろう。家族としては、性分化疾患インターセックスで思い悩んで自殺してしまったのかもしれないと考えるにちがいない。

 彼は自殺を促したわけではない。

 でも、ひどいことを言ったのは事実だ。


 アメリカ・テキサス州ヒューストン出身の心理学者・カウンセラーのジョン・グレイは「相手は自分と同じだという誤った思い込みが人間関係を難しくする。自分と同じ点もあるかもしれないが多くの点で異なっているのだ」といっている。また、「良好な人間関係とは相手を変えようとしたり自分を押し殺したりしない関係である」ともいっている。

 自分と相手は違う存在、異なる価値観を持っていることを認め、尊重するところから人間関係ははじまるのだ。

 自分の価値観をわかってもらえないから怒りを感じ、相手を憎んでしまうところから、うまくいかなくなっていく。

 思いやりを忘れてはいけないことを、本作はあらためて教えてくれているのかもしれない。


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