第3話ムハンマドとシーア
数々の賞金試合を制し、傭兵としての武名を轟かせたムハンマドは、その卓越した才覚とカリスマ性によって、次第にアラブ世界の人々の心を惹きつけていった。彼の語る言葉は人々の魂を揺さぶり、彼の率いる旗の下には、希望を求める者たちが集った。まさに、アラビアンナイトに語られる英雄譚のように、ムハンマドの名は砂漠の夜空に輝く星となっていった。そして、メディナへの聖遷を果たし、イスラム教の礎を築き上げた頃、スンニは忽然とムハンマドの前から姿を消してしまう。
「スンニ! 一体どこへ行ってしまったんだ、スンニ!」
勝利の歓声が響く中、ムハンマドは焦燥の色を隠せない。共に苦難を乗り越え、喜びを分かち合ってきた、かけがえのない存在。彼女のいない成功は、どこか空虚だった。「俺たちの戦いはまだ終わらない。これからこそ、共に未来を築き上げていくはずだったのに……」
スンニの行方を追い、ムハンマドは遥かバグダードの地へと旅をする。喧騒に満ちたバグダードの街でスンニを探し彷徨うムハンマドの目に、ある光景が飛び込んできた。それは、バグダード街の喧騒の中で、ひときわ異彩な輝きを放つ、若いペルシアの娘だった。
「こんにちは。わたくしはムハンマドと申します。もしよろしければお尋ねしたいのですが、スンニという、四十代ほどのアラブの女性をご存知ありませんか?」
その少女は、笑顔でムハンマドを見つめ、優雅に微笑んだ。
「こんにちは、ムハンマド様。わたくしはペルシアのシーアと申します。今年で十九になります」
運命の糸に導かれるように、ムハンマドはシーアと共にスンニを探す旅に出る。その道程は、まさにイスラム世界を股にかけた壮大な冒険譚となった。二人は各地で人々と出会い、語り合い、ムハンマドが受けた啓示、そして新しい信仰の光を広めていく。アラビアンナイトの物語は、新たな転機を迎えようとしていた。
結局、晩年のムハンマドを病床で看取ったのは、シーアだった。彼の人生の後半を、温かい眼差しで見守り続けたのは、若き日の出会いから共に歩んだシーアだったのだ。ムハンマドの死後、イスラム世界の拡大は目覚ましいものとなるが、その過程で、人々の間でとある大きな議論が巻き起こる。預言者ムハンマドが真に愛したのは、人生の前半を共に支え合った年上の妻スンニだったのか、それとも、晩年を寄り添い共に未来を築いた年下の妻シーアだったのか――。この愛の記憶を巡る人々の感情と解釈の相違こそが、後にイスラム世界を二つの大きな潮流、スンニ派とシーア派へと分岐した原因の一つとなったと言われている。
これは、テレパシーを通して私が脳で受け取った物語です。史実とは異なるかもしれませんが、この物語には、人々の愛と記憶、そしてそれが歴史を動かす力となる、深遠なメッセージが込められているように感じています。
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