星が見ている
「ん…あれ?私生徒会室で寝てたような…?」
「あ、起きた」
寝起きなせいか状況が分からない。
風が顔をくすぐる感覚がある、外なのだろうか?
「ナゴ先輩?」
私はナゴ先輩におんぶされている。
…おんぶ?
「い、今すぐ降ります!すみません重たいですよね?!」
「大丈夫だから落ち着いて」
「でも…」
「心配症だなぁ…じゃあ君が重くないって証明してあげよう!」
「な、何をするんですかぁぁぁぁぁぁ!」
私を背負って彼は走った。それも全速力で。
もう完全に目が覚めた。おはようございますって今はこんばんはか、もう夜だし。
「止まって止まって!」
「楽しくなってきちゃった」
「私を降ろしてから走れば良いでしょう?!」
お前は子供か?!
歓迎会の時も思ったけど確信に変わったよ。君らは子供だよ!
「えー」
「残念そうな声出さないでください」
「もう少しだけ!お願い!」
そんなにお願いすること…?
ヒカリバ先輩と同じで犬の耳と尻尾が見える気がする。
「…少しだけですよ」
定期的に押しに負けるのはどうなのだろうか?
私、もう少し頑張れよ…。
「じゃあ失礼してと」
ナゴ先輩は私を降ろしてからお姫様抱っこの形にする。
「空の旅にレッツラゴー!」
その声に合わせて私たちの体が浮く。
「と、飛んでる?!」
「あばれないでね?落ちたら流石に死にはしないと思うけど痛いと思うから」
「落とさないでくださいよ。私しっかり先輩にしがみついてますから!」
怖いよー!
地面が無いの怖い。
重力に逆らうのってこんなに怖いんだ。
「セラちゃん上見て」
「何ですか私、下見ないように必死なのに…わぁお」
視界に広がるのは満点の星空だった。
プラネタリウムより迫力ある。これが生の星か…。
「星座とかは全然分からないけど見ちゃうんだよね。星を見るために俺、浮遊魔法覚えたんだよ」
知ってる見た事あるから、空で1番輝く星に憧れて努力してたの。
貴方が私じゃなくてヒロインと一緒にこうして星を見ていることも。
(相手が私なの申し訳ないな)
ヒロインならもう少し良いセリフが言えただろうに。
可愛い反応もできただろうなぁ…。
(何でヒロインに生まれ変わっちゃったんだろ)
モブとかで良いのに。
そしたらヒロインの恋を応援したりするのに。
ごめんね…。
「セラちゃん?どうしたの?悲しいでもあった?」
「いえ何でもないです」
「何で泣いてるの?」
「えっと。空がきれいすぎて感動したとかですかね?!」
私は大げさに誤魔化すようにして笑う。
泣くなんてガキじゃあるまいし、恥ずかしい。
「無理しなくても良いよ」
「してないですよ」
笑え。私は今はこの世界ではヒロインだ。
本音はいらない。
作られた物語の人物で良かったかも何て思えばまぁ良かったのかも。
煩わしい事考えなくて良いし。
「学園生活は楽しい?」
「楽しいですよ」
「困ったことはある?」
「皆さんとても親切で何も」
まるで親がいつも学校に帰ってきたらいう言葉みたい。
「俺は頼りない?」
「……」
先輩は私を寂しさを帯びた顔で見る。
「いえ、人には言えない事がいっぱいあるだけです」
言って解決するなら言うけど私が死んでこの世界に転生したとか。
…寂しいとか。
「…先輩わがままを1つ聞いていただけませんか?」
「うん」
「今から泣きますそれはもうわんわんと」
「良いよ優しい先輩が胸を貸してあげよう」
私は先輩のその言葉を聞いて今まで我慢していたものを吐き出すかのように泣いた。
誰かに聞かれているかもとも考えないで、泣いた。それはもう宣言通りに。
「…わ、私が何をしたって、うっ、いうのよ」
「うん」
「本当に好きな人見つけて幸せになりたいだけなのに。神様は私に嫌がらせばっかり!」
相手攻略対象なんだけど、これどんな気持ちで聞いてるんだろう。
私はそう思いはしたが、我慢は良くないと結論を出して小さな子供のように可愛らしくないガチ泣きをしていた。
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