第20話愁苦辛勤(しゅうくしんきん)
一週間後俺たちは沙也加の部屋を再度訪れた。顔を見るなり
「私にすぐに会いに来てくれるなんて、よっぽど私が、ほしいのね」
相変わらずの対応だ。深いため息とともに
「なあ、一つ教えてほしいのだが、その訳の分からない自信はどこから出てくるんだ?」
「この辺りからに決まってるじゃないの」
といって前かがみになって胸の谷間を強調するグラビアアイドルがよくやるセクシーポーズをとっている。
「また動画を撮った時の状況について教えてほしいのだが」
俺は軽く無視をして話を続ける
「無視?無視なの、せっかくセクシーポーズしてあげたのに」
俺は顔をしかめて左右に振る
「沙也加ショック、だめもう立ち直れない。全部忘れた、なに聞かれても思い出せない」と両膝をついている
うわ、めんどくさいなあこいつ。もういいや、こっちで勝手に探るから。
「シュリーわかりそう?」俺は沙也加を無視して話を進める。
「ここには気配がないわ」
ここに石の気配は無いようだ。他の子のところか、
「ねえ、一体何を探してるの?私にも教えてよ」ほっといたショックからは立ち直ったららしい沙也加が聞いてくる。やっとまともに話ができそうだ。
「きみたちが、交霊術に使ってた石を探してるんだ」
「石?そんなの使ってないわよ?」
「そんなはずは」そう言って動画を再生する、確かに画面には石が映ってた。
「やだなにこれ、怖いんだけど」両手で口をふさいで青ざめている
うーむリアクションからするとまったくの嘘ではなさそうだ。
しかし本人たちが分からないだなんて。だめだ追跡の手だてが思いつかない。
「ちょっと一番近くで見てたはずの人に聞いてみるわね?」
突然シュリーが言いだす。一体何のことだ
「そこいるんでしょ!出てきてもらっていいかしら。」
シュリーが見つめる先を凝視すると薄っすらとだが老人らしき人影が、見える。
「ちょっと状況を説明してもらえないかしら」
「えっ、なに!」
沙也加には何も見えてないらしくシュリーが、いきなり壁に向かって話し出したように見えたようだ。
かくいう俺も薄らぼんやりとしか見えていないが。
「沙也加はな、かわいそうな子なんじゃ」爺が喋りだす。
「別にこの子の境遇を知りたいわけじゃないんだけど、ていうか可哀想って思うならなんで助けなかったのよ」シュリーが問いただす。だが爺はこっちの意向を無視して勝手に話しだす。
「昔からいつも一人じゃった、両親は仕事で不在。いつもひとりで家にいた。
ある時金を使えば周りの人が優しくしてくれるのを知った。
金さえあれば誰でもいうことを聞いてくれるのを知った。しかしそれをすればするほど心の中は空っぽになっていった。」
まあよくある話だな、さして珍しさは無い。金があっただけましだろう。
しかしこの爺も大丈夫か?霊に言う言葉じゃないかもしれないが正気を失っていないか?。そう思って俺は
「全く人の話を聞かないのは、一族の特性だったんだな」苦笑するしかない。
「なんのこと?」沙也加にはいまだに見えてないらしい。
俺は部屋の隅におそらく沙也加の祖父だろう霊がいることを伝えた。ついでに暴走して勝手に喋りまくってことも。結果沙也加はただただ気味悪そうに部屋の隅を見ている。
まあいくらオカルトなれしてるとは言え。実際にいるってなったら怖いわな。
「しかし、それらはみなあやつが仕組んだこと、教えたこと」爺は柏手ショックから立ち直ったのか再度話始めた。だが今度はシュリーの声掛けに反応がある。
「わかるように話して、全然話がつながってないわ」
「すべては、そう両親が買ってくれた、さみしさを紛らわせるための子供の人形がいかんのじゃ。それにはな、妖異がついておってな」
「子供の人形の妖異、座敷童か?」
「いや、ちがう、座敷荒じゃ」
「座敷荒なんているの?」シュリーに耳打ちする
「いるにはいるわ座敷童は福の神だけど荒らしは貧乏神の仲間よ」
そいつが今回の原因なんだろうか。しかし殺生石とか関係なさそうだし。しかも子供のころに買い与えていたとなると、なぜ最近になって動きが派手になったのか、
もしかしたら球の力で活性化したんだろうか?
「というかあんた守護霊でしょう、なんで呼び出すまで何も言ってこなかったのよ」と爺につめよるシュリー
「わしだって、わしだってわわわわしだっ・・・・・」
うん?なんか様子がおかしい。なんか壊れたおもちゃみたいになってる。
「わわわわわわわわ」
天に向かった大きく口をあけて叫びだした。
こいつやばくないか?
シュリーが一歩下がった。「大我、結界張って」
「お、おう」慌てて結界をはる。見る見る間に爺さんのは膨れ上がっていく。しかも光だした。絶対やばいって。
張り終わるかどうかのタイミングで目の前の爺さんは爆散した。
「うお、あぶねー、なんだ今の」
と俺は額の汗をぬぐった。爆発したっぽかったが物理的な影響はなかった。部屋が吹っ飛ばされるようなことは無く。爺が爆散しただけだった。
ほっと一安心だ。沙也加にも問題はなさそうだ。むしろ何が起きてるのか全く見えてないからポカーンとはしてるが。
「まだ結界をとかないで」と緊張した声でシュリーが言う。
後ろから、子供の声が聞こえた
「全く役にたたんじじいだのん」
思い悩んで嘆き、悲しみ苦しむこと。
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