第41話 当たって砕けろの精神

 翌日の放課後。

 今日も僕は大曽根さんに勉強を教えるため、そして僕が恋愛指南を受けるため、彼女の家にお邪魔していた。


「ちゃんと昨日蒼馬から出された宿題やって来たよー。ほら。偉いでしょ、ウチ」

「おおー。すごいね。あ、これ間違ってる。ここも」

「もー! まずは誉めるだけにしてよね」

「うん。ちゃんと宿題までして偉いよ。ほら、これなんてかなり惜しいし」


 採点すると半分くらい正解だった。

 昨日の理解度から考えれば大きな進歩だ。


「実は僕も昨日大曽根さんから出された課題をこなしてきたんだ」

「課題?」

「ほら、花菜さんの前で愛瑠の話をしないとか、そういう一連のやつ」

「あー、あれね。花菜のこと誉めたりしたの?」

「一応一通り全部やったよ」

「は? 全部って?」

「誉めるのはもちろん、愛瑠の話しもしなかったし、手を握ったり耳許で囁いたり」

「えー!? 一日で全部やったわけ!?」


 大曽根さんは目を見開いて驚く。


「よく一日でそんなに出来たね」

「でもあんまりいい反応が返ってこなかったんだよね」

「ちょ、待って。蒼馬と花菜って学校でそんなに話してないよね? いつの間にしたわけ!?」

「うん。実は──」


 大曽根さんを信用してことの顛末を全て説明する。

 ちゃんと状況を説明しないと大曽根さんもしっかりとしたアドバイスが出来ないだろうと判断したためだ。


 僕の家のこと、花菜さんとは婚約していること、そして同じマンションの一室で暮らしていること。

 ひとつ説明する度に大曽根さんは驚愕の声をあげていた。


「ちょ、無理。情報量多すぎ」

「ごめん」

「えーっとつまり蒼馬と花菜は許嫁で、しかもいま一緒に暮らしてるんだよね?」

「そうだよ」

「じゃあ、もう、あれこれ考える必要なくね!?」


 大曽根さんは呆れたように顔を歪める。


「え? なんで?」

「なんでって……蒼馬と花菜は結婚するんだろ?」

「それは親が決めたことであって」

「いやいやいや。あー、ムリ。ツッコミどころ多すぎて逆にムリ」

「さすがの大曽根さんでも僕と花菜さんを結ばせるのはムリなんだね」

「いや、そーじゃねーし! あー、もう!」


 あまりに異常な状況だから大曽根さんも困っているようだ。


「じゃあ訊くけど、蒼馬は花菜に気持ちを打ち明けてどうしたいんだよ? 付き合いたいんだろ?」

「もちろんそうなれば嬉しいよ」

「付き合って、てきとーに遊んだら別れるつもり?」

「まさか! そんなひどい人間じゃない!」

「だろ? 蒼馬の性格なら、むしろ一生大切にしたいまであるんだろ?」

「う、うん。もちろん」

「それってつまり結婚したいってことだよね?」

「そうだよ」

「じゃあ結婚したらよくね!? 放っておいても結婚すんだろ、お前ら」

「それはそうだけど。でも違うんだ」


 大曽根さんの言うことはもっともだ。

 でも大きく間違ってもいる。


「僕はきちんと花菜さんを愛し、その気持ちを受け入れてもらって、普通に愛を育んで、そして結婚したいんだ。結末だけ同じでも行程がまるで違う」

「あー、なんとなく分かるかも。ロープウェイで山頂に行くんじゃなくて、自分の脚で登って山頂に行きたい的な?」

「そう。まさにそんな感じ」


 絶妙な喩えに大きくうなずく。


「なるほどなー。なんか蒼馬らしいよね」

「付き合うとか付き合わないとかじゃなくて、自分の気持ちをちゃんと伝えたいなって」

「え、ちょっと待って。それってフラれたらどーすんの?」

「そりゃきっぱり諦めるよ」

「諦めるっていっても親が結婚するように決めたんでしょ? 簡単にやめられなくね?」

「そうなんだよね……」


 状況的に花菜さんとしては僕と結婚しなくてはならない。

 好きとか好きじゃないとかそういう問題ではない。


「状況から考えて花菜はたとえ蒼馬をフッても、結局は結婚しなきゃいけないんだろ?」

「そうなんだよね……」

「てかその状況なら好きじゃなくてもフッたりはしないんじゃね?」

「うっ……」


 大曽根さんの言葉が耳と心に痛い。

 まさにその通りだ。

 たとえ告白したところで花菜さんの本心はわからないという不安に駈られる。


「どうすればいいんだろう……」

「一回婚約破棄してからコクるって手もあるけど、色々とややこしそうだしね」

「そうだよね」


 複雑な問題で頭が痛くなる。


「ま、あんま考えすぎずにコクれば?」

「いや、でも……拒否権のない状況で告白するとか、むしろひどいことをしてる感じじゃない?」

「考えすぎだって! 男だろ? ガツンとかませばいいんだよ!」

「なにそれ?」


 大雑把で適当な結論に笑ってしまう。

 でも案外それが正解なのかもしれない。

 あれこれ思い悩むより、行動あるのみ。

 本当に僕が好きなのか、断れないからオッケーなのかは、花菜さんの態度を見れば分かるはずだ。


「ありがとう、大曽根さん」

「蒼馬は自分で思ってるよりずっといい男だから。自信持ちなよ!」

「そうかな?」


 それはどうかと思うけど、でも大曽根さんのお陰で僕の決意は固まった。





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 さて、皆さんにご報告があります!

 実は私、鹿ノ倉いるかは次世代作家文芸賞を見事受賞しました!


 そして本日、東京で授賞式に参加して参りました!

 なんと授賞式には神木隆之介さんもスペシャルゲストとして来てくださりました。


 ものすごくかっこよくて、そしてすごく優しい人でした。

 終始緊張しっぱなしで、気がつけば終わってました。


 いま、授賞式の帰りの新幹線の中でこれを書いております。


 受賞作は『君がこの世を去ったあとの世界』という、幽霊の作家とひねくれた大学生のお話です。

 春頃には刊行できると思います。

 よろしければそちらも読んでいただけたら嬉しいです。


 もちろんカクヨムの方ではこれからもばんばんラブコメなどを書いていくので、これからもよろしくお願いいたします!


 本作の次の作品も現在着々と下書きが進んでおります!


 お楽しみに!

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