第30話 第一階層なんてチョロ過ぎるだろ!

 ターラのダンジョンの中は不思議な迷宮構造になってる。


 自然の洞窟やドワーフの地下都市が廃墟になってダンジョンになったとか、そういう自然発生的なものではなく、まるで前世のゲームに出てくるようなダンジョンそのもの。

 

 ギルド出張所で販売していた第一階層のマップを手に、アタシとアレスくんは慎重に歩みを進めて行った。


 最初のうちはね。


 まず壁には一定間隔で魔鉱灯が埋め込まれているので、それほど暗くない。ランタンなしでも十分に歩くことができるしマップも読める。


 マップには罠の位置と注意書きがあるので、まず引っ掛かることはない。固定の宝箱の位置が記されているので訪れてみると、中身の再充填待ちの冒険者たちが待ち行列を作ってる。

 

 同じく第一層のフロアボス部屋も待ち行列。


 ときおり遭遇する魔物はコアスライムとゾンビとスケルトンくらい。しかも集団で現れることはく、必ず単体で出現する。


 アタシはもちろん、アレスくんの相手にもならない。仕方ないのでアレスくんには、コアスライムの核やスケルトンの頭を槍で突く練習をしてもらってる。


 そしてどの魔物もほとんどドロップアイテムを落とさない。ゾンビなんかは出会いがしらに蹴り倒して、


 チャリン!

 

 と小銭の音が聞こえたときだけ倒すようにしてる。ゾンビはきちゃないので、あまり触れたくないんだよ。


 こうなってくると気が緩んでくるのも仕方ないってもんだよ。


 この第一階層で怖いものがあるとすれば「迷子」だろう。なにせこのダンジョン、めちゃくちゃ広いのだ。前世でよく聞くたとえで言えば、東京ドーム1個分くらいはあるだろう。


 まぁそれもマップがあるので問題にならないけど。


「アレス……今日は第二階層に降りる場所を確認して帰ろうか」


「そうだね」


 アレスくんも、スケルトンでのヘッドショット練習に飽きていたのか、それで納得してくれた。


 アタシたちはのんびりと第一階層の最奥部にある地下階段を目指して進んだ。警戒度を街の散歩レベルにまで引き下げているにも関わらず、アタシたちが魔物に不意打ちされるようなこともない。


 それはこの第一階層の敵がチョロいという理由によるものではない。


(シズカ! 前方20メートルの位置に五人。おそらく冒険者がいる。移動はしていないから待ち伏せの可能性があるぞ)


 ミシェパが【索敵レーダー】を使って周囲を警戒してくれているからだ。このスキルは遮蔽物に影響されないので、壁の向こうに隠れている敵の位置も的確に把握することができる優れもの。


 ダンジョンではまさに千里眼とも言えるチートスキルと言っていい。


 冒険者五人ね。ありがとミシェパ。


 アタシとアレスくんは、警戒度を上げてゆっくりと進んでいった。


 ダンジョン第一階層には、弱小な魔物しか出現しない。


 けどこの後アタシたちは、守衛のおっさんがアタシたちを心配してくれた理由を思い知ることになる。

 

 魔物よりも人間の方が、いつだってやっかいなものだってことを。

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うっかり女神の転生ミスで勇者どころか人として終わってるアタシの行く末 帝国妖異対策局 @teikokuyouitaisakukyoku

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