第14話 火の番を頑張るアレスくんが可愛すぎるだろ!
アレスくんが用意してくれた食事を一緒に食べた後、アタシはアレスくんによって再び寝床に押しやられた。
「火の番はボクがするから、シズカは休んで!」
そんな……アレスくんは、双月が真上に来る頃まで起きてられたことないのに。
「わかったよ。ありがとね」
ミシェパとの話が終わるまで、もう少し休ませてもらうことにする。目を閉じるとミシェパが本棚からアルバムを取り出してくれていた。
(この本がアルバムというものだったな)
そう言ってミシェパがアルバムを開いて見せてくれる。そこには写真なんて一切なくて、ただ真っ暗なページがあるだけだった。
なんとなく想像していた通りだった。
(シズカ……)
ミシェパ、心配しなくていいよ。まぁ、見れない方がいいかもしれない。だって見たいって思ってるのは平野静香の未練で、もし見ちゃったら今の自分がまた揺らいじゃったかもしんないし。
だから大丈夫。
(そうか……。そ、そうだシズカ。これからどうする? ターラの街に入ってからのことだ。確か金を稼いでボルヤーグに向うと言っていたようだが)
そうだよ! 大事なのは過去のことなんかじゃなくて、これからどうするかだった。
(ボルヤーグに行くのは賛成だ。アレスヴェル様に十分な力が備わるまでは、追手から逃れる必要があるからな)
追手? 何の話?
(私たちは追われていた。今も追われているはずだ)
ちょっと! そんな話聞いてないよ!?
(最初に出会ったときに気づいていたと思っていたのだが……。そもそも、あのゴブリン共が追っていたのはアレスヴェル様だ)
「な、なんだってー!」
「シズカ!?」
焚火の番をしていたアレスくんが、驚いてアタシの顔を見つめる。
やばっ、またアレスくんを心配させちゃった。アタシはゴメンゴメンと誤りつつ、再び目を閉じた。
(アレスヴェル様は、魔王ヴェルクレイオス様の遺児。ヴェルクレイオス様亡き今、次の魔王の座を狙って、魔王候補者たちがアレスヴェル様の身柄を抑えようとしているのだ)
力こそ全てという価値観の魔族の世界。そこで魔王になるには現在の魔王を屈服させるか、あるいはその首を狩って魔族たちに示す必要がある。
アレスくんは死んだ魔王の後継者として、魔王候補者たちから狙われているらしかった。
んっ? 確か魔王は殺されたんだよね? なら殺した奴が魔王ってことになるんじゃないの?
(本当であればそうなのだ。しかし、そやつが新な魔王として名乗り出たという話は聞こえてこない。ただ魔王候補者の赤魔将軍が、アレスヴェル様に追手を出してきたのは、アレスヴェル様が未だ後継者として認知されていると考えておいた方がいいだろう)
つまり追手が差し向けられるのは間違いないと。
(そういうことだ。色々と納得がいかないが、もしかすると魔王様の命を奪ったのは、魔族ではないのかもしれない)
まさか……人間が魔王を殺したの?
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