第28話
「……あなた…の……やった……こと……無駄………じゃない……よ………。」
ミウスさんが口を開いた。
「?」
今朝がた牛でしかも神に召されたはずのミウスさんだけども現代文明の利器を使いこなしているのかスマートフォンを取り出すと画面を見せてきた。
「……私…も……持って………いる…し…別……視点から………の…映像だ…から……反論…でき……ない…。」
そしてもう一つ生徒手帳に書いてあるページを見せていた。
当校は勉学に関係ないモノの携帯電話及びスマートフォンを除くモノの持ち込みを禁ずる。
ただし、使用には教諭の許可を必要とする。
留学生及び言語不自由者の持ち込みは教諭の許可を求めずとも使用を認める。
「………私…好きな…人…の……邪魔…させな…い…。」
ミウスは苛立っていた。
せっかく異世界に来てまでストーカーしに来たというのにこんなくだらない奴らのために時間を割かせられるのがとても不愉快だった。
棒人間に風情に自分と愛おしい人との関わる時間を邪魔されたのだから。
ツーマンセルの授業の時にゴール下の接触プレーを狙っていたのに
こいつらがそれを邪魔するのだから。
せっかく合法セクハラしようと思っていたのに!
神どもに邪魔されないように行動しているのに!
本当は今この場に居る奴らを踏み潰したい気持ちがある。
しかしそれをすればこの世界に居ることができなくなってしまうからやれない葛藤がミウスのストレスを溜めていた。
血液が沸騰して周りの気温が上がることで上昇気流が巻き起こり髪が舞い上がる。
ここで自分の魔力を上昇させてしまえばこの世界に悪影響を与えてしまうからなるべくしないようにと世界から言われているからこそ身体が沸騰したのだった。
どちらにしろ髪は舞い上がるので怒っていることには変わりないのだが。
「う、嘘だろおい。」
「アニメかなんかかよ。」
「この部屋なんか暑くない?」
「み、視ろよミウスさんから蒸気が出てるぞ。」
今の時期、猛暑(摂氏35度以上)にもなりえる高校の教室で蒸気が出てくること自体おかしい。
人間を辞めているとしか思えないし学校に居られなくなるのではと思いながらミウスのことを見守る幹と明日香。
「Αν θα παραδεχτούμε την ενοχή μας(罪を認めるのか、YesかNoで選べ。)」
言葉の意味は理解できなかったが謝罪しろと言われていることだけは分かった。
彼らは自分の命の危険を察知して恥も外聞も誇り(プライド)も全て捨て去り土下座をした。
「ミウスさん、ちょっとばかり怒りを納めようか。先生ですら委縮しているしね。」
「……ごめん…な…さい……。」
刀赤の言葉に対してはすぐに素直になり怒りを納めたことからこの場に居る生徒と体育教諭は察知した。
この鬼のような猛獣は恋をしているのだと。
授業中誰よりも刀赤との接触プレーを狙っていたのはこの人だと。
先ほど保健室に行った実行犯と結託していた者たちは愚かにもそれを邪魔することだけでなく彼女の標的を狙いにくくしてしまった。
今でこそ威圧感が皆無なのが奇跡に思えるくらいの安心感。
それと同時に抱く恐怖。
今まで通りの嫌悪感とは違う畏れ慄くべき存在。
これまで通りハブられることに違いは無いが以前とは違い本物の極道者以上に畏れられる存在に昇格してしまっている。
「……でも…あなたの…こと……好き…一緒…居て…いい…?…」
「あの、申し訳ございませんが私にも独りで居たいと思う時がございますのでお断りさせていただきます。」
「mou(´;ω;`)」
泣きそうではあるが必死にこらえていた。
あの調子ならまた来そうな気もするがストーカーにはなって欲しくない。
もう手遅れなことに気づかないまま授業終了のチャイムが鳴ったので体育教諭が締めの挨拶をして解散となった。
その際加藤さんに話しかけられた。
「一つお聞きしても良いですか刀赤さん。」
「なんでしょうか加藤さん。」
「あなたは何故空手の身のこなしをしながら柔術の独特の歩法を行う術があるのですか?」
「は?」
時偶流の武術のことを言っているのだろうが問題はそれでは無かった。
ずっと病院に居た明日香さんが何故さも見たことがあるかのように柔術という言葉を使ったということ。
元来、柔術の柔道は別物、空手も同義で空手と空手道は別物だ。
事の発端は嘉納 治五郎が教育向けに柔術を改良したのが始まりで本来自衛、護身術として行われてきた術がより良い精神、道を育てる教えを含ませられた。
このことから実践空手、実践柔道と呼ばれるように形を変えながら一国民の前では公には見せることのない存在に変わった。
特に柔道はそれの典型例だ。
歩法もそうだし身体の運びは合気道と共に分岐した。
なのに加藤 明日香は合気道とは言わずに柔術と言ったのが不可解だった。
「俺にもわからないとしか言えないかな。まあ、じいちゃんに戦い方の手ほどきは教わっているけど元傭兵だしサンボでもやってたんじゃない?」
「サンボ、確かロシアの格闘術で柔術も多大な影響を与えていると言いますがおじいさんは日本の人なんですか?」
「そうだと聞いているよ。」
「なら納得です。偶々空手でもやっていたんですね。」
何とか会話を止めた。
何となくだけど時偶流のことは言わない方が良い気がするし、今行ったことも嘘ではない。
じいちゃんは傭兵として生き残るためにジャングルファイトを得意とするプンチャックシラットに平地での戦い方を想定している空手、雪原でも対応可能になるようにロシアで武術を身に着けていたから嘘でもないし本当のことでもない。
俺自身も予想として出しているので問題は無いだろう。
俺はほっとしていた。
内なるものの企みに一切気づくことなく。
『ほう、この坊が神に魅入られたモノか。
ふむ確かに特殊な生まれだな。
面白い。
別世界の神候補が居るのは厄介だが封印を解くのにはもってこいな状況だ。
ククク……今に見ていろよ白虎の小僧よ。
わしらが一枚岩で無いことを思い知るが良い。』
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スライム道
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