#7

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「お姉さん達、ちょっといいっすか?」

 圭が大樹を引き連れ、4人組に声を掛ける。お姉さん、と言ったのが利いたのか、最初に反応したのは愛美だった。

「んあ? 何すか?」

「その制服って、八津ヶ崎高校の制服っすよね? こないだあった、投身自殺の事で、ちょっとお話聞きたいんすけど、取材させて貰ってもいいっすか?」

「マジで! お姉さん達、テレビ関係の人達?」

「バカだな研二、テレビのやつらがカメラも無しに近づいてくる訳ねぇだろ」

 『取材』と言う単語を聞いて、男二人が途端に色めき立つ。

「あ、そっか! じゃあ新聞とか?」

「雑誌とかかもな」

「マジか! 友人Aとかで、載っちまうかもな!」

「いや、すまんが新聞でも雑誌でも無い。こう言うもんだ」

 そこで大樹は、懐から警察手帳を取り出した。雑誌でも無い、の言葉に、圭が密やかに大樹に睨みを利かせる。

「け、警察?」

「事件の事を聞きたいんだけど、いいかな?」

「聞きたいって言っても、ねぇ?」と、愛美。

「おぅ、俺達何にも知らねぇぜ、なぁ?」と研二。

「ああ、屋上から飛んだやつら、水原と門倉、だっけ? こいつらも、俺達は全然知らねぇし。ニュースとかで話題になってるから、顔とか名前は見た事あるなってのはあるけど、別に絡んだ事もねぇしなぁ」と、昌司が順に答える。

 そこで圭が、愛美に隠れて下を向いていた莉子に対し、覗き込むようにして声を掛けた。

「そっちのお姉さんは、ずっと黙ってるっすね? なんか知ってる事とか無いっすか?」

「……な、なんにも知らねぇよ!」

 そこで莉子は、怒ったように声を荒げて、走り去って行ってしまった。

「ちょっと、莉子!」

 他の三人も揃って莉子を追いかける。圭も急いでその背中を追おうとするのを、大樹が圭の首根っこを掴んで無理やりに引き止めた。

「ぐえっ! ぐっさん、何するんすか?」

「今追っても無駄だ。深追いして情報が出そうな相手じゃない」

「じゃあ、どうするんすか? どう見ても、何か知ってそうな感じだったじゃないっすか」

「そうだな、そう言う意味では、保護者のアポに付き添わせてやった俺への見返りとしては、上出来だな」

「そう言う事言ってるんじゃないっす」

「分かってる。あいつらを当たるなら、グループでいる時は無理だな。一人ずつ崩して行けば何か掴めるかもしれん。でも、あそこまで不自然だと、泳がせておくのも悪く無い気もする」

「根拠はなんすか?」

「刑事の勘だ」

「当てになんないじゃないっすか!」

「お前だって三文ライターの勘を持ち出しただろ」

「違うっす! フリージャーナリストの勘っす!」

「当てになんないのは同じだろ。とにかくお前は今夜、あのグループの奴らの住所や電話番号を調べて、一人一人を当たれ。事件について、そして、菱川の娘について色々聞いてみてくれ。ただ、あの菱川雷太の娘だけは放っておけ。今大物が出てこられても厄介だ」

「へいへい、ったく、人使いが荒いんすから」

「それと、明日は水原桜と門倉桃慈の担任と、八津ヶ崎高校の校長にアポを取ってある。同行するか?」

「担任と校長っすか? ん~、今更真新しい情報が出てくるとは思えないっすけどね~」

「じゃあ止めるか?」

「是非ともお供させて頂きますっす!」

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