読み終わってからも心の奥の方に残る、素敵な作品でした。
印象に残ったのは三つ。
一つ目は「さおりに私の気持ちは分からない」ということです。萌芽した三文字のところで「ああ」と思いました。決定的だ、と。絶望を感じました。
二つ目は蝉や腐りゆく魚等の自然を用いた描写です。二人の直面している事態や心情と重なり、強烈でした。それらが読者の私にも強く、感覚的に伝わってきました。「蝉の声が駆け下りてくる」とこが私はこの作品で一番好きです。
三つ目はシリンジのシーン。正気の沙汰とは思えず悍ましかったし、単純に読んでいてこちらの痛覚も刺激されました。彼女の狂気はそれだけ気持ちが大きく、必死ということ。彼女はどうしたら良かったんでしょうね。
陸のものに削り取られていく「私」に、海のものに満たされていくさおり。二人の隔たりは、永遠になったのでしょうか。
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