第4話 到着
<菊池たちを見送った隊員たち>
菊池たちが出てゆき、ドアが閉じられた。
誰ともなく声が漏れる。
「なぁ・・どんな感じになるのだろうな」
「フフ・・戦闘と呼べるものではないだろう」
「あの菊池隊長と村上さん、そして山下さんの組み合わせだ」
「あぁ、相手は誰も気づかないうちに倒されているんじゃないか?」
「俺もそう思う。 大きな戦闘になることはまずないだろう」
「静かに、確実に一人一人が倒れてゆく・・それも確率などではなくな」
「・・想像したら俺、今震えたよ。 あの隊長たちが静かに近づいてくるんだろ・・怖ぇ」
・・・
・・
隊員たち皆がそれぞれ勝手に予想を口にしていた。
ただ、誰一人として菊池が傷つくことを予想していない。
予想できないのだ。
訓練においても常に冷静。
戦闘技術も派手さはない。
地味な動きしかしない。
だが、誰も勝つことができない。
かろうじて村上が引き分けることがある程度だ。
それも10回に1度ほど。
隊員たちは少し興奮気味に騒いでいたが、すぐに静かになった。
◇
<菊池たち>
菊池は自分の車で特区の検問所に来ていた。
検問所で挨拶を受ける。
「菊池隊長じゃないですか? 街にお出かけですか?」
「あぁ、3日の休暇をもらったんだ。 少し買い物でもしてくるよ」
「ご苦労様です」
検問所の人たちが笑顔で見送る。
検問所を通過すると、すぐに道路の左側に人が立っているのが見えた。
市長だ!
菊池がゆっくりと道路の左側に車を寄せて、市長の傍に停車。
窓を開ける。
「気を付けて行って来てください」
市長は笑顔でその一言だけを告げた。
菊池は黙ってうなずくと、ゆっくりと車を発進させる。
途中、高速道路のパーキングエリアでブリーフィングを行う。
木村邸の本宅の見取り図を見ながら、構成員の顔写真を見て行く。
・・
「隊長、誰が松本を拷問したのでしょうか?」
「わからんな。 ただ、突入したら優先順位は木村のヘッドを確保することだ・・だが殺すなよ。 そして、松本を拷問した人物を特定する・・」
菊池たちは大まかな作戦と各自の役割を決めていく。
15分ほどで終わる。
村上と山下は菊池の真剣な顔を見ると、一瞬戦慄する。
そして、相手が気の毒だなと思ったりもした。
このパーキングから1時間ほどで木村邸の本宅に到着予定だ。
到着と同時に調査を開始する。
超小型ドローンを使って邸宅内を見て回る。
親指の爪の大きさくらいのドローンを使う。
カメラによる偵察がメインだ。
攻撃機能はないが、麻痺針が装備されている。
突入後の行動時間は最大15分とした。
次のパーキングエリアで完全武装する予定だ。
全員の雰囲気が静かに、重くなっていくのが感じられた。
◇
<特区内>
市長が事務室にいた。
先程、菊池たちを見送ってきたばかりだ。
椅子に座ると、山本がそっと近寄る。
「市長、外の天気はいかがでしたか?」
市長は微笑みながら答える。
「えぇ、少し風が強くなりそうですが、おおむね晴天でしょうね」
「なるほど・・日本の政府は文句を言ってきますかね?」
「さぁ・・我々は何も知らないですから」
市長は椅子に深く座り直す。
◇
<菊池たち>
最後のパーキングエリアで身支度を整える。
配線作業の作業服で身を包む。
その下は完全武装だ。
誰も口を開く者はいない。
黙々と身体を動かして準備を終えていた。
菊池は皆を見渡すと、うなずく。
車が静かに発進した。
パーキングエリアでは誰も気づく者はいない。
・・・
・・
木村邸の近くに到着する。
木村の組員たちに警戒されるといけないので、少し離れた場所に停車。
車両止めのポールを設置していく。
これで木村邸に行く車はなくなるだろう。
迂回路もきちんと確保する。
その作業をしている間に、菊池はドローンを飛ばす。
1mも離れれば、その存在すら気づかない超小型ドローン。
超小型ドローンは木村邸を上空から映していた。
PCの画面にはみるみる木村邸が近づいてくる。
菊池はゴーグルをつけているのでPC画面を見ることはできない。
案外、邸内はそれほど警備は厳重ではないらしい。
家の周辺を飛行していると、玄関に人が近づくのが見えた。
ドローンは玄関付近で待機する。
玄関が開くのと同時に家の中に侵入。
事前に手に入れた間取りは頭の中に入っている。
各部屋を確認していく。
・・・
・・
なるほど。
全部で24名か。
伏兵も用心すると、30名弱といったところだな。
菊池はドローンを操縦しながら確認していく。
顔写真と一致する人物が何名かいる。
大将首は・・この部屋か。
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