大切な存在は常に一貫しているお姉さん

:……綺麗

:やばい

:これがマシロ……?

:美人すぎん?

:エルフだ……

:エロフだ……

:10000¥

:30000¥

:50000¥ 結婚してくれ

:この美貌にそのおっぱいはヤバいだろ


 事故ではあったけどついに真白さんの素顔……というわけではないが、その顔がネット上へと出てしまった。突然のことでビックリはしたし、これはマズいかもと焦ったがそんな俺とは違って真白さんは冷静だった。

 思わず立ち上がった俺に真白さんは視線を向け、優しく見つめてきた後にウインクをして笑みを浮かべた。


「元々――」


 そうして真白さんはカメラを真っ直ぐに見つめて話し始めた。


「元々来年くらいには顔出しをする予定でしたので、今回のことは……まあ予想外ではあったけどその時が早くなっただけですねぇ」


:そうなんだ

:というか今ウインクしたよな!?

:彼氏なのか!?

:そりゃそうやろ……って羨ましい

:こんな美人の彼氏とかホンマどんな前世でどんな徳を積んだんや

:マシロ俺と結婚してくれ

:付き合ってほしい


「ごめんなさいね。さっき投げ銭をくれた人にもありがとうと一緒にごめんなさいって伝えておくね。私には誰よりも大好きな彼が傍に居る、だから彼以外の人と付き合うようなことは考えられないの」


 そう言って真白さんは頭を下げた。

 コメント欄としてはそんな真白さんに対しての悲鳴というか、改めて彼女にガチ恋していたであろう人たちのコメントが増えていた。もちろんそうでない人たちが居るのも確かで、彼氏さんと幸せに……そんなコメントも多かった。


「う~ん、こうやって顔が出ちゃったわけだしもう胸だけ映すのはいいのかな。他の人たちみたいにちゃんと顔も映していこうか」


 確かにこうやって顔を出したのならもう隠す必要はない。真白さんとしても、カメラの位置を調整して顔が映らないようにするのはある意味息苦しさを感じていたかもしれない。それから解放されるのなら俺としても、今まで以上に真白さんが伸び伸びと配信が出来るならそれでいいと思っている。

 少しだけ、俺しか知らないはずの真白さんが知られたのは悔しいけど。


「まあ、こうやって愛の告白みたいなことを言ってくれるのは良いんですけどどうか諦めてください。きっとリアルでは決して会うことはないでしょうし、さっきも言ったように私は彼だけの私なので」


 そう言って真白さんはもう一度俺に向かって微笑んだ。

 そんな真白さんに対して怒涛のコメントが流れ、良いモノも悪いモノも等しく流れて行った。それからはその豊満な胸元と同時に顔も見せながら、時間にして一時間少しが経過し雑談も終盤になった。


:500¥ 彼氏さんはどんな人なんですか?


「彼? 凄く可愛くてかっこよくて、私にとても優しくしてくれて……いつでも私を幸せにしてくれる素敵な人ですね」


:めっちゃ幸せそうに言うやん

:そんな男は居ません

:居てたまるか

:マシロに彼氏なんて居てたまるか

:草

:諦めろって

:コラボしませんか?


 真白さんの言葉に……俺の方が嬉しくなってニヤニヤしてしまいそうになる。しかしそんな中、気になるコメントが現れた。


「コラボ? いいえ、そういうのはするつもりないのでごめんなさい」


:朝比奈やん

:本物?

:あの金持ち配信者の?

:最近家買ったとか言ってたな


 コラボしませんか、そう言ったのは朝比奈という配信者でコメントでもあったように金持ち配信者で通している人だ。動画の企画内容は基本的に大金を使うものが多く信者というかファンが多い。配信者だからこそ届いた先の高み、そんな彼に憧れる人が居るのも確かなのだ。

 真白さんもおそらく朝比奈のことは知っているんだろうけど、基本的に真白さんはコラボをすることはない。相手が男性でも女性でもそれは変わらないらしく、コラボする必要性を感じないとのことだ。


「……しつこいな」


 それでもしつこいコラボの誘いに真白さんの本音が漏れて出た。真白さんはすぐに設定から朝比奈をブロックした。この真白さんの行動に朝比奈がどんなアクションを起こすのか、或いはその信者がどんな反応をするのか怖いけれど……まあしつこかったのが悪いわけだし、やり取りは全て動画に残っているのでそこまで心配する必要はないかもしれない。


:マシロちゃんないすぅ

:清々したわ

:つうかあいつ女に見境なさすぎやろ

:某女性配信者と付き合ってるとかなかったか?

:あったような……

:その相手は別の男と付き合ってるけどな


 俺も知ってる限りあの人は結構なプレイボーイって呼ばれてるみたいだし、そういう意味でも味方も多いが敵も多いのだ彼は。

 ブロックしたことで朝比奈がこれ以降姿を現わすことはなく、コメント欄もそこそこ平和な流れが続いた。


「それじゃあ今日はここまでにしましょうか。みなさんありがとうございました」


:お疲れ~!

:今日からファンになりました

:美人でスタイル抜群……ふぅ

:街中で会ったら絶対口説く

:気持ち悪いからやめとけ

:それな

:てか登録者伸びとる!

:SNSもトレンドやぞ


 コメントを見て気づいたが、確かにチャンネルの登録者が今日だけでかなり増えていた。この調子だと本当に百万人はすぐかもしれない。それにSNSの方も“マシロ顔出し”がトレンドになっているらしく、そこから今配信を見に来て登録してくれた人もいるようだ。


「うわ、本当だ凄い増えてる。みなさんありがとうございます。そのうち七十万人の記念配信とかするつもりなのでぜひ見に来てね~! それでは今日はこれで終わりますばいばい!」


 そんな真白さんの言葉を最後に配信は終わった。

 ちゃんと配信が切れていることを確認した真白さんはふぅっと息を吐き、いつものようにまず俺の元へ歩いて来た。


「何とか無事に終われたかしら」

「変なのは来ましたけどね」

「あ~……まあ気にしてないわ。鬱陶しかったのは本当だし」


 ちなみに、少し確認したら朝比奈がSNSで真白さんにブロックされたことを投稿していた。それに対し慰めるような言葉も多かったが、同時にお前が悪いだろという返事もあって……真白さんが関わらない部分で変に騒ぎが大きくならないことを祈るしかなさそうかな今は。


「たか君、ちょっと嫉妬というか……悔しがってた?」

「……えっと」


 どうやら顔バレに関して俺が思っていたことは筒抜けらしい。

 ニヤニヤと揶揄うような笑みではなく、言ってみてと優しく促すようなその視線に俺はつい喋ってしまった。


「配信者の真白さんの顔は俺しか知らなかったのに……なんて思っちゃいました」


 そう伝えると、ギュッと抱きしめられた。


「もう! もうもう! たか君ったら本当に可愛いんだから! でも大丈夫、お姉さんはどこまで行ってもたか君だけのお姉さんなんだから!」


 抱えていた不安というか、負の感情を洗い流してくれる真白さんには本当に頭が上がらない。俺にとって彼女という存在がどれだけ大きいのか、本当にそれをいつも再認識させられる。

 ……でも、それは俺だけではなかったらしい。


「たか君がそうやって私のことを考えてくれるのと同じで、私の方も同じなの。私はたか君のことをたくさん知ってるから、あなたの傍がどれだけ落ち着いて居心地が良いのかを知ってる。きっと他の人も、それを知ったらあなたに夢中になると思っているのよ私は」

「そんなことはないのでは……」

「そんなことあるの! だって私がそうなんだから!」


 いや……そこまで言ってくれるのは嬉しいけどそれは真白さんが特別なのでは?


「だからね? 私だって不安なの……もし何かあってたか君が私から離れていく未来があるのだとしたらゆるせ――不安で泣きそうになるわ」


 一瞬、憎悪を全て捻じ込んだような呟きが聞こえかけたが、咄嗟の部分で真白さんは言い直した。けれどそうか、俺がそう思っているように真白さんも同じように思ってくれてるんだな。

 正直、俺としては真白さんから離れる未来なんて考えられないし考えたくもない。


「真白さん」

「なに?」

「俺はずっとあなただけの俺で居たいです。なので真白さんも……俺だけの真白さんで居てくれますか?」


 それはある意味ただの口約束でもあり、お互いを縛り付ける言葉みたいなものだ。

 そんな俺の言葉に真白さんは強く頷き強い抱擁と共にキスをする。


「……何というか、みんなが焦がれる真白さんは俺のもんだって言いたいですね」


 まあそんなことを言うつもりはないがちょっと口にしてみた。


「いいんじゃない? なんならキスしてるところを写真に収めてSNSに投稿する?」

「……怖いのでやめておきます」

「残念ね♪ でも――」


 そこで真白さんは俺の頭にいつものようにその豊満な胸元に誘った。至高の柔らかさは相変わらず、エルフの衣装ということでパックリと真ん中が開いているためその谷間に綺麗に俺の顔がぴったりフィットしていた。

 ……やっぱり落ち着くなぁ、なんて思っていると頭を撫でられる感触と共にパシャっと写真を撮る音が聞こえた。


「真白さん?」

「うふふ~、ラブラブっぷりを見せつけましょうかたか君!!」


 少し画面を操作し、真白さんがスマホを置くとブーンと通知の嵐が響き渡る。

 どうしたのかと思って真白さんに何をしたのか見せてもらうと……俺はある意味で硬直してしまった。

 真白さんの胸元に俺が顔を突っ込み、そんな俺を真白さんが慈愛のこもった優しい眼差しで見つめ頭を撫でている写真だった。


「これは……」

「あぁそういえば写真でも顔出しは初めてね」


 俺のことはともかくとして、写真に写る真白さんは本当に女神のようだった。例えるならそうだな……異世界に転移した男の子を安心させるように、ヒロインのエルフである女の子が抱きしめているそんな写真だ。



 ……でもとりあえず、コメント欄が怖いのもあるが俺今日眠れるかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る