第4話 パンツはどうした
翌日、俺は教室にはいるなり机に突っ伏した。それは何故か。純粋に眠いからだ。
昨夜は結局、家に着いてからも興奮で寝れずに気がつけば深夜二時。
そこからどうにか寝ようと試みたけど、寝よう寝ようと思うほど寝れないジレンマ。
そして最後に時計を見たのは深夜っていうか朝の四時半。起きたのは六時。完全に寝不足だ。
だから寝る。何人たりとも俺の眠りを妨げるのは許さない。あ、可愛い子は別。
よし、おやすみ〜。
「ヒロ、おはよう」
……俺を呼ぶ男の声。男は無視だ。寝る。
「あれ? ナベ寝てんの? 叩く? ねぇキヨどうする? 叩く? 叩いて起こす?」
「いや、なんでそんなに叩くのが前提なのかな? 別に叩かなくてもいいんじゃない?」
今度は女の声。だけどこの声も無視だ。女は女でもこの声の主はアウト。なんか不穏なこと言ってるし。寝る。
「起きろナベ」
そんな声と共にスパーーーーンッ! と頭を叩かれる。だけどそのくらいで俺は起きない。それ程までに眠いんだ。運が良いことに一限目と二限目の教師は、一人で喋ってひたすら黒板に書いていくから寝てても大丈夫。後で誰かからノート借りれば済む。だからおやすみ。
「今、頭のすぐ上でスカートまくってるから起きたらパンツ見れるよ?」
俺はすぐにバッと顔を上げる。おはようございます! ……あれ? パンツは?
「おい、パンツはどうした」
「うわっ、サイテー。あんなの嘘だし! 自分の友達の彼女のパンツ見るために起きるとかサイッテー」
「おはよう。ヒロ」
「おう清隆、おはようさん」
頭を上げた俺の視線の先。というかすぐ前の席に座るのは、俺の小学校からの悪友にして親友の
その隣で心底ドン引きした様な顔で俺を見て、人の事をナベ呼ばわりしてくるのが、清隆の彼女の
「あっ! ちょっとキヨ! ナベの奴またトモの胸見てるんだけど! ちょっと目潰しして!」
「ヒロ、今日はずいぶんと眠そうだね。夜更かしでもした?」
「あ〜まぁそんな感じ。三時間も寝てねぇんだよ。だからもう俺はダメだ……」
「それ、ほとんど寝てないようなものじゃないか」
「おう。だから二限目が終わる頃に起こしてくれ」
「それまで寝るのは確定なんだね」
もちろん。寝れる時に寝る。これが俺の信条だ。
大丈夫。清隆は良い奴だからちゃんと起こしてくれくれるはず。俺は信じてる。
「ねぇねぇ、なんで二人してトモの事スルーしてるの? ナベはともかくなんでキヨまで? ちょっと? 彼氏だよね? 彼女の胸が他の男に見られて脳内で何されてるかもわからないのになんでスルーなの!?」
「大丈夫だよ智美。いくら何でもヒロはそんな事考えてないって」
「そうだぞ。スヤスヤ寝てる人様の頭を叩く奴の胸を見ても、もげろ! くらいしか思わん、」
「も、もげないし! もげたらキヨが泣いちゃうもん!」
さすが俺の親友。他の追随を許さない巨乳好き。虫も殺さないような顔して胸の話になると熱弁するくらいだからなぁ……。赤坂のどこに惚れたのかを聞いた時、秒で【胸】って答えたくらいだ。
今は全部らしいけど。けっ。
「まぁ、そういうわけで俺は寝る」
「はいはい」
「ヨダレで地図作っちゃえばいいのに」
俺がそう言うと清隆は軽く返事をしつつ前を向き、赤坂は捨て台詞を吐いて自分の席に向かって歩いていった。
これでやっと寝れる〜って思った時、教室の入口に見えたのは望月の姿。
目が合う。一瞬睨まれてすぐに逸らされる。
うん。さっきのはきっと軽蔑の眼差しだな。それでいい。元々関わりが無かったんだ。これからもそれで。めんどくさいのに巻き込まれたくないし。
だから目を逸らしながらこっちに向かって歩いて来るのやめてください。
……いや? 違うな。そんなわけが無い。俺が自意識過剰になってるだけだ。
だから俺のすぐ近くに立ったのもきっと気のせい。そうに違いない。そうであって下さい。お願いします。
「真鍋くん」
なんでだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます