第33話 限界を超える
ここからが問題だ。
僕はフローラちゃんを見る。彼女は無理をしたせいで体に負担がかかってしまった。それはとても大きなものだ、まず元の体には戻れないかもしれない。僕はその戻り方がわからないしそういう事に精通している人も知らない、今の所打つ手なしの状況だ。そしてこっちの方が重大だ、彼女の腕を見てほしい。
フローラの腕の皮膚がひび割れてたまに零れ落ちている。
そう、彼女は自壊し始めているのだ。急な成長に細胞分裂が追いつかなかったのだろう。僕はすぐに魔力の膜をフローラちゃんに施す。これによりある程度の自壊を遅くすることが出来る。
だが僕の魔力の膜、マナパックと命名しよう。お肌のお手入れの為のあのパックから取ったよ。それは僕の半径100メートル以内までしか安定しないんだよね。これは要相談だ。
「フローラちゃん、フェリアしゃんお話が」
「「はい?」」
僕はマナパックの話と自壊している事をを二人にすると、少し悩んだ後フェリアさんがポンッと手を叩いて口を開いた。
「じゃあジーニちゃん。責任とってね」
「「え!?」」
「?」
僕とデシウスが一緒に声を張り上げた。当の本人のフローラちゃんは首を傾げている。フローラちゃんはまだ5歳だ。普通の5歳児では責任と言う言葉だけではわからないみたい。
「何故そうなるんですか!」
「あら?デシウスさんは本命さんなの?」
「えっと、私は・・・どうなんですか!ジーニ様」
「アウ・・僕はシリカしゃんが・・」
「あらあら」
デシウスの質問に口ごもる僕を見てフェリアさんはいたずらっこのようにニヤリと笑い話す。
「ではでは、デシウスさんに何かを言う権利はありませんね」
「うう、ですが。....ジーニ様」
「アウアウ」
これが本当のシリカさんの嫌な予感だったのか。と僕はうなだれた。だが確かにフローラちゃんは僕の近くに居なくてはいけない。更にフローラちゃんのパワーアップは僕のせいでもあるみたいなんだ。
なんせ僕のHPを3000ほど吸い取ったのだから。3000とはどの程度か、それは僕が狩っていたダブルヘッドベアあの子が2000です。更にフローラちゃんは教会にいた人達の生命力を瀕死まで受け取っているので更に6000は堅い。というか鑑定すればいいんだよね。
僕はフローラちゃんを神眼で調べた。
フローラ(魔人化)
LV 5
HP20000
MP15000
STR10000
VIT9800
DEX9500
AGI9800
INT10000
MND10000
う~む。思ったよりもかなり強い。5レベルでこの数値、更にあのスーパーな人状態になると強化されるみたいだし。簡単に計算するとこの数値から3倍位という事だから驚異的だ。だから僕のHPを30ずつ減らせたんだね。
これは僕もうかうかしていられない。
ちなみにデシウスのステータスも公開です。
デシウス
LV 70
HP15000
MP8000
STR4000
VIT3900
DEX3500
AGI3500
INT2500
MND3000
やっぱりデシウスが負けている。レベルでは勝っているのにステータスでは6000近くも離されているね。これでもデシウスは今の所僕の知り合いの3番何だけどね...。
一位はお父様、二位はローズさん、それで三位がデシウス何だけど今回のフローラちゃんが一位に入っちゃったから四位だね~。
威厳が無くなってきていたツヴァイお父様はステータスのみならず武器も一流なので結構実戦では大きくローズさんを引き離すと思う。またローズさんも結構ステータスは強いんだよ。だけど武器や防具にお金を使っていないみたい。Sランクなのにお金ないのかな?。
デシウスは言わずもがな、形見の鎧と大剣があるので強い。鎧と大剣の全力は見たことないので何とも言えないけど少なくとも2倍とかはないと思うんだよね。なのでローズさんに負けると思う。
と、そうこう考えているうちにシュミットが見えてきた。門の前に兵士達が集まっていた。門兵と僧兵が2列に並び僕たちを歓迎するように道の両端からお辞儀をしていた。
「これはソフィアさんがいるからだよね?」
「でしょうか?」
僕の質問に疑問で答えたソフィア。この疑問はすぐに解消されるのだった。
「あ~ソフィア、それにみんな本当に生きていたんだな」
ベンジャミンが門の前まで来て御者席に飛び乗り涙目で声をあげた。
「「お父様」」
「「ベンジャミン様」」
ベンジャミンの妻子の4人はそれぞれ叫んで涙目になった。そしてベンジャミンが近づくとみんなベンジャミンと抱き合った。とても素敵な光景だけど何だかいたたまれない。
「すまなかった。私はとても大きな過ちをおかしてしまった。どうか許してくれ。」
僕たちは門から教会の応接室まで案内されて入った。そこで90度まで頭を垂れて謝るベンジャミン。
ベンジャミンはソフィアとソーアにニクライへの依頼の内容を話した。そのまま言わなくてもいいと思ったのだがベンジャミンはそれを良しとしなかったのだ。
今までの自分と決別するためにすべてを話したベンジャミンにソフィアとソーアは怒った顔になった。ソフィアは今までの事もあるので許すつもりはないようだけどソーアはフェリアの次に愛していた人なのだ。嫌いになれない自分がいる事も確かだった。
「...は~っ。ベンジャミン様、顔を上げてください」
大きくため息を吐いたソーアはベンジャミンの頬に手を当てて顔を上げさせた。そしてニッコリと笑い平手でビンタを放った。
パチン!
応接室にそんな音がなる。その見事な音からは全くの加減か無い事が伺えた。ベンジャミンは叩かれた頬を抑えてソーアを見る。
ソーアは笑顔で口を開く。
「これでチャラにいたしましょ」
「・・・ソーア、君は変わったね」
昔のソーアとは違うとベンジャミンは苦笑いを浮かべた。
ソーアは今回の事で大きく変わった。フェリアの呪縛が解け更に本当の愛を得たのだ。それはソーアを大きく変えるには十分な物だった。
「お母さんがそういうんだったら私も!」
ソフィアはベンジャミンへ笑顔で近づき一回転してからビンタを放った。その威力はベンジャミンを一回転させるにいたりずるりとソファーへともたれかかった。
「つう......ソフィアも強くなったな」
「ふ~んだ。お父さんももっと強くなってよね。ジーニの一ミリでも見習ったら?」
腕を組んでソフィアはベンジャミンへと悪態をつく。まあ命を狙った罰にしては軽いがベンジャミンも被害者なので仕方ないよね。
「楽しそ~私もやりたい~」
「ダメよ。フローラがやったら首が360度回転しちゃう。という事で私は二発」
ゴゴゴゴ!
そんな音が聞こえるような気がする気迫でフェリアが椅子から立ち上がる。フェリアはベンジャミンの告白で内心煮えくり返っていた。腹違いとはいえ最愛の妹の命を狙ったのだ、それも姪も一緒にだ。
フェリアは薄っすらと影を顔に映しニマッと笑う。
パチ!パチン!
まるで一回しかやっていないような速度で放たれた往復ビンタはベンジャミンを腰砕きにした。
「それで?なんでぼくらがかえってくるのがわかったの?」
まるで何事もなかったように僕は話始めた。ベンジャミンは遠のきそうだった意識を取り戻し話始める。
「アドスバーンのジェイラが教えてくれたんだ。彼女に僕は助けられた。みんなが死んでしまったと思い私は自殺をしようとしていたんだ。それを止めてくれた。ジェイラは...アドスバーンはすべてを見ているようだった」
ありゃ、これは借りが出来ちゃったって事かな。侮れないな~。でも恩人みたいなものだからいいのかな?。でもやっぱり侮れないね。
「それで私は決心したのだ。ジーニ協力してくれるかな?」
「アイ?」
僕は何のことだかわからないので首を傾げた。ベンジャミンは構わずに僕を抱き上げて街を見下ろせるテラスへと歩いて行く。
テラスに着くとそこから見える光景は凄かった。
「賢人様がお姿をお見せになられたぞ」
「皆、頭を下げろ」
アルサレムとは対照的にシュミットの王というのは恐怖の対象なのか皆兵士達の号令で座り頭を地面に付けている。
「皆、頭を上げてくれ。兵士達も私の顔を見てくれ」
拡声魔法で街全体に聞こえるようにベンジャミンは叫んだ。そして言葉を紡いでいく。
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