第22話 王国アステリア

「到着だな」

「いやーフッティア殿ありがとうございました」

「いやいや、私らは依頼を遂行しただけですよ。それよりもアステリアはこれからが大変ですからね。がんばってくださいな」

「ええ」


 [薔薇]のフッティアはアステリアへツヴァイとアステリアの人達と共に来ていた。


 ツヴァイは信用のある[薔薇]に依頼を出してそれを了承された形だ。ロクーデのように圧力による要請ではないので安心してください。


「じゃあ、私らも荷物運び手伝いますよ」

「え?いいのか?ここまでの護衛の依頼だったはずだが」

「ははは、ちょっとアステリアの方々には世話になってましたからね。というか気になる子がいますので」

「ほ~[薔薇]のフッティアさんの眼にかなう男が?」


 フッティアは笑い視線を泳がす。そう、そのお眼鏡にかなったのは他ならないキーファである。彼はほぼ毎日ギルドへ換金に行き毎度毎度絡まれるようになりそれをフッティアは見ていた。そしてフッティアはまるで恋する乙女のようにキーファを好きになってしまったのだ


 褐色の女戦士フッティアは華麗に舞うキーファの身のこなしをみて、最初は育てたいと思っていたのだがその心は毎日見る事でそれ以上のモノになっていったのだった。


「じゃあお願いしますね」

「ええ、ツヴァイ様は屋敷の建設からですか?」

「ああ、家族の戻るところをどうにかしなくちゃね。できるだけ前と同じものを・・・」

「思い出は戻らないけどせめてものってことですね」


 ツヴァイの言葉にフッティアは俯き微笑む。そして二人はそれぞれの持ち場へ歩いて行った。


 アステリアの民は少なくなっている。だいたい避難する前の半分以下である。だがその半分の人達はジーニによってある種の[パワーレベリング]をされ戦力としては避難する前の4倍ほどになっている。


 非戦闘員だった者達もすべて例外なく強くなったことでこの数字はたたきだされている。


 そしてツヴァイの指示で壊れている城壁や家々を修復していく。


 だがその時。


「ヒャッハ~。獲物がネギ背負ってやってきやがった」

「フヒヒヒ、今日は宴会だな~」


 大規模な盗賊団がアステリアを見て呟く。そして大きな声を上げてアステリアへとかけていった。


「唐突だが俺はこの盗賊団のヒャッハーって言ってた方の盗賊だぜ、よろしく!。俺は真実だけを話す!。俺達は移動で疲れ切った所を狙ったつもりなんだ、だが奴らは息も切らさずに俺達をなぎ倒したんだ。俺はしょんべんをまき散らし宙にまって倒れた。そして目を覚ますと周りに死屍累々。と思ったら死んではいないようだ。全員気絶させられ犯罪奴隷のまじないをつけられ今に至る」


 自分達の失敗を解説ありがとう名もなき盗賊よ。コホン!では詳細を説明しよう。


 彼ら盗賊はアステリアを見くびり返り討ちに合った。その数250と大所帯である。10ほど逃げられたが240の労働力を手に入れたアステリアは幸先がいい。


 ちなみに[薔薇]の面々も戦闘に加わったのは言うまでもないがそれよりも奮闘したのはこちらも言うまでもないアステリアの民であった。


 盗賊者達を見つけたアステリアの民達の眼は赤く煌めいていたらしく。獲物だと思った盗賊団は背筋に嫌なものを感じたとか。


 アステリアはジーニがいなくてもチートになりつつあるのだった。


「ジーニの仕業か?」


 ツヴァイはそう呟く。ツヴァイよりは弱いもののすでに民の域を超えたアステリアの民達にため息をはいて俯くのだった






「クチュン!」


 風邪かな?。こんな暖かい日差しで寒いわけないし・・・。あ~そうか、シリカさんが僕の心配してるんだな~。僕って幸せ者だな~。


 ジーニはシュミットの上空に来ていた。そこでくしゃみをして自分勝手な内容でそのくしゃみに納得するのだった。


「ア~ウ~」


 僕は上空からシュミットの家々を調べていく。シュミットは円形の城壁に囲まれ2段階に壁で仕切られそこから中央に行けば行くほど裕福になるようだ。一番外側はいわゆる貧民街である。そこには掘っ立て小屋のような建物が乱立し、まるで長屋のようになっている。一つ壁を超えるとそこは普通の街並になり冒険者ギルドや教会などの普通の施設が並んでいて家も普通のものだった。更に壁を超えるとそこには巨大な教会がありその周りに豪華な屋敷が立っていた。その豪華な屋敷を眺めていると見知った人を見かける。


「ロ~ジュしゃんだ!」


 僕は目を擦る。ローズさんがロクーデと一緒にいるのだ。僕は信じられない気持ちでいっぱいになった。ローズさんのことだから何か理由があるはず。


 僕はその理由に興味がわいたので潜入しようと思いました。そして潜入パートへ。







「ローズ!聞いているのか?」

「一度言えばわかる!」

「分かっていないから言うのだろう・・・まったくこれだから女という物は」

「ローズ姉は物じゃない!訂正しろ!」

「!?、こら!マリ~」


 屋敷に忍び込むと言いあう声が聞こえローズさんの切羽詰まった声が聞こえてきた。弓の弦がキリキリとなり今にも矢が放たれそうになっている。その的となりそうなのはロクーデの腹であった。


「この!小娘!儂に矢を向けおって!ただですむと思うなよ!儂が冒険者ギルドに言えばお前達などただの娼婦にできるのだぞ!」

「娼婦!?」

「やめないか二人共!」


 ロクーデと女の子がにらみ合い修羅場とかしている。この状況でも強気で要られているロクーデはやはり顔が利くのだろう。神様は正しいものにだけ力を与えればいいのにな~。と僕はしみじみ思った。


「チッ、ローズ!子供の飼育はしっかりとしておけよ」

「飼育!?私はペットじゃないぞ!」

「マリー・・・」


 ロクーデは屋敷の二階へと去っていくとマリーと言われた女の子はロクーデに悪態をついていた。それをみたローズがマリーと呟くと俯いた。


「マリー・・あまり私を困らせないでくれ」

「!?。でも姉さんにあんな事言うんだもん。何で護衛である姉さんが夜伽何て・・・」


 え~ちょっと何でローズさんがあの豚と寝なくちゃいけないんだよ。お父さんは許しませんよ!。っていつからお父さんだって感じだけど。


「私は私よりも強い者にしか体を許さん。心配するな。ロクーデは金の力しかない男だ。この任務が終われば私はすぐにアルサレムへと帰るさ。マリーは先に帰っていろ」

「え!。ダメです。姉さんを一人にするなんて私にはできません!」


 マリーちゃんはローズさんの指示に反対する。確かにあのロクーデと2人きりなんて考えたくもないね。話している時も常に二人の胸やらお尻やらを見ていたし。


「大丈夫だと言っている。これ以上言いあうつもりはない!」

「そんな、姉さん!」


 ローズは自室へと入っていった。マリーさんは一人リビングに残され目に涙を溜めた。


「私は・・私はただ・・姉さんの事を・・」

「ダ~ブ!」

「な!。赤ん坊?」


 僕はマリーちゃんの涙に誘われて出てきちゃった。でも赤ん坊の体躯ならば警戒はされないのだ。


「なんで赤ん坊が?ロクーデの?」

「ちがうよ~、なんであんなみにくいひとのこどもだとおもうの?」

「確かにとても可愛い・・・」


 マリーちゃんは僕を抱き上げるとそのまま椅子にすわる。僕はマリーちゃんの膝の上へ。マリーちゃん、君も可愛いよ。だからもっとほめて~。


「それで何で?」

「ぼくはジーニっていいます。はじめまして」

「あ~これはご丁寧に・・・って挨拶してきた・・・」


 僕が頭をペコッとして話すとその僕をみてマリーちゃんは唖然としている。このご時世子供がこんなに礼儀正しいのは珍しいのだ。


 僕は出来る幼児なのさ。


「マリーしゃん、それでおはなしはきいていまちた」

「え!、ずっといたの?」

「はい」


 マリーちゃんは感知に対しても高レベルの冒険者だった。だが僕には気づけなかったみたいだね。[暗殺家業]がいい仕事してるっぽい。


「ローズしゃんのいうことはまもったほうがいいよ。ロクーデはぼくがみているからだいじょうぶ」

「本当に幼児なの?幻惑の魔法を使われているんじゃ?」


 よく喋る僕を不審に思い自分のほっぺをつねるマリーちゃん。まだ信じてくれてないみたい。


「ぼくはツヴァイおとうしゃまのこどものジーニだよ。ローズしゃんのおしゃななじみのシリカしゃんのしりあいだよ」

「え!ツヴァイ様のお子・・・あ、ピアスしてる。そういえば姉さんも言ってた、シリカさんの所の子供が面白いって」


 わあ、結構僕って有名人?。僕はカタコトな言葉を話してマリーさんを説得するとマリーちゃんは渋々納得したように頷きローズさんの部屋をノックした。


「姉さん、私はいつでも姉さんの味方です。それだけは分かっていてください。じゃあまたアルサレムで」

「ああ、分かってくれてありがとう」


 ローズの言葉を聞き少し安心したように頷くマリーちゃん。とても幼くて可愛いな~。僕も可愛いよ。


「じゃあ、赤ん坊さん姉さんをお願いね・・・」

「アイ!」


 マリーちゃんが僕に合図するとすぐに屋敷から出て走り去っていった。


 僕はというとロクーデの部屋へと潜入いたします。

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