第24話 君の運命のヒトは俺じゃない
上下部長が予想した時刻に、魔法少女は現れなかった。
明日もう一度、ということで部員たちは機材を撤収して旧校舎の体育館へ。
男子は寝袋で雑魚寝。
守夜美月と紅会長は別の教室で。
12時に屋上で会う約束もあるし、先輩たちのイビキがうるさくて眠れない俺は、全員が寝た頃を見計らって体育館を出た。
やっぱり、この古い校舎を一人で歩くのは少し怖い。
なんの音かわからないラップ音的なパチパチっという破裂音や、悲鳴のようなものが聞こえたような気さえする。
どこかの窓が開いているのか、開いていたドアが急にバタンとしまったり、一応ついている誘導灯はチカチカ点滅してるし……
怖くなって来た俺は、さっさと屋上に上ってしまおうと階段を駆け上った。
まるで一人で肝試しをしているみたいじゃないか……!!
屋上に立つと、なんとなく一気に解放された感じがして、俺は錆びたフェンスを掴んで空を見上げる。
撤収する前は雲がかかっていて、よく見えなかったのに、月は俺の頭上で明るく光っていた。
「月が綺麗だな……」
守夜美月は、まだ来ていない。
12時まではまだ少し時間がある。
一度、大きな深呼吸をしてから今日起きたことを考えた。
俺は、魔法少女の言っていたナイト様じゃない。
扇が言う通り、ただの一般人。
ただの、魔法少女の————いや、守夜美月のファンなんだ。
魔法少女をやめたいと言っていた、彼女が望んでいる運命の人は、俺ではない。
実は、それは扇だった……って、ことなんだよな。
彼女に仮面の男の正体が俺だと、バレてしまっているわけだけど……
俺は、魔法少女の運命の人でもなんでもない。
確かに怪人と戦うのは、俺には結構危険なことだ。
弱点を知っているから、なんとかなっているだけで、魔法少女のように怪人を消すこともできないし……
俺は何もできない……ただ見守ることしかできない人間なんだ。
「扇の言う通り、もう、関わるのはやめた方がいいのかもな————」
魔法少女の……守夜美月の運命の人が扇なのであれば、こんなに辛いことはない。
俺はずっと、親友の運命の人に片思いをしていたわけか……
————なんだこのどっかの曲みたいな感じ……
正直、泣きそうだった。
俺は別に、彼女と恋人になりたいとか、そんなことは思ってない。
そりゃちょっと、その……いけない妄想をしてしまうこともあった。
でも、妄想は自由だろう?
仕方ないじゃないか、可愛すぎるのが悪いんだ。
でもまさか、こんな展開ってありかよ……
こんなことなら、あの時、躊躇せずに————
「キスしておけばよかったな」
誰もいない旧校舎の屋上で、月に向かって呟いた。
せっかくのチャンス……
唯一のチャンスを俺は逃したんだ。
「今からじゃ、ダメなんですか?」
「えっ——?」
いつからそこにいたのか、振り向いたら守夜美月が俺の後ろに立っていた。
制服じゃない、名前入りの少し大きな学校指定ジャージを着て。
「まだ12時じゃないのに、待っていてくれたんですね……ファン様。私のナイト様……」
小柄な彼女の、小さくて柔らかい両手が俺の手を掴む。
さっきまで掴んでいた屋上のフェンスが邪魔をして、俺はこれ以上後ろに下がることができない。
違う……
俺は、確かにファン様だけど……
俺はナイトじゃない。
魔法少女のナイトじゃない……
「この間の続きを……してくれませんか? 私を、大人にしてください————」
ダメだ、魔法少女。
目を閉じないで……キスを待たないでくれ!!
そんな可愛い顔を俺に向けないでくれ……っ!!
いけないことだと、これはダメなことだとわかっているのに、理性が……
俺の理性が……っ!!
————ボロっ……
俺はこの時、理性が崩れる音ってやつを、初めて聞いたと思った。
その時、さっきまで掴んでいたフェンスが外れる。
俺の背中を支えていた老朽化していたフェンスが大きな音を立てて、屋上から落ちた。
俺も背中から落ちていく。
俺の手を掴んでいた守夜美月も一緒に、真っ暗な校庭めがけて落ちていく。
「うわあああああああああっ!!!」
な、なんだこれ!!!?
天罰か!!!?
待ってくれ神様!!
だったらせめて、キスしてからにしてくれよ!!!!
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