第10話 新興クラン(偽)
事の発端は
今思い返しても背筋が冷え込み、唾が喉につまりそうだった程。
結論だけ述べてしまえば、『愚妹が
“総長”はそんな
そんな彼女に“総長”が提案をする。
そう、グリムレッドがいるククルガでの仕事をこなせ、と。
クランの借金七割はセントラルで捻出し、セザンはただ仕事を無事こなすだけで良いと言う条件で承諾した。身売りはせずに済む、そう考えるのがプラスと捉える。
選出はセントラル主導の下に、との事。
そして、今現在に至る──。
*
「……すーっ、ツッコミたい箇所がいくつかある。だがまず第一にだ、
グリムレッドのこの問いに灰色の兜がガクンと頷き、これには呆れるしかなかった。
「我々も聞いた時ははぁって変な声が出ましたよ」
「大物が呆れるな」
と、なんだかセザンが途端小さく哀れに思えてきた。愚妹のお陰でとんだとばっちりな話だ。何せセザンのクラン自体少数精鋭で構成されている。セザンと件の妹を合わせ他メンバーの合計人数はたったの六人と聞く。今その愚妹はメンバーの監視下か軟禁状態だろうか。
しかし、金絡みはこんな大物さえも苦しめるのか感心が勝つ。
「ところで、盛り上がってて水を差すかも知れませんが」
「いや盛り上がっていない。何だ?」
「自己紹介、してもいいですかな?大物さんがかっさらってしまってゴタゴタしてきたんで」
「あ、あぁそうだった。そうだったな」
「いやぁ、お見苦しいのを見せたね」
申し訳ないと謝るグリムレッドとミレニアル。ほとんどグリムレッドの暴走の性でも有るが。
「では、帝国機動師団所属ハイネン・クラッコーです。宜しくお願いします」
両腕を後ろに回し、ピシッとそしてハキハキと所属と名前を答える。
次はこっちかと整える
「俺はフルーガ。まあ、セントラルから呼ばれた黄金酒と赤山羊というクランからやって来た。宜しくな、赤騎士」
柄頭をドンと床で鳴らす。
赤騎士、ククルガ意外では蔑称に過ぎない名前。目の前のフルーガは彼の見たまんまの事を言っているのだろうか。……まぁ、どうでもいいことだ。
「此方こそ、存分に世話になるぞ」
「ハッハ、そう来なくっちゃだな」
「それでだギルドマスターよ、今から俺達四名はククルガの
切り替える。場の空気が引き締まり緊張が走る。
「んん、まぁそうだ。これは辺境伯様と総長様が擦り合わせた情報だが、五階層から更に深層に潜れると判断された」
「……あの穴か?」
以前の
セントラルの手配により、簡易だが整備はなされたらしい。何処で見聞きしているのか恐ろしいが、ありがたいと感謝をした方がいいだろう。
ギルドマスター、ミレニアルによれば深層の形態は遺跡との情報。整備は上層と唯一繋がる階段を建設。内部は詳しくは調査されていないが、一つだけ分かっているのは転移魔法が発動をしないとの事。これは頭にいれてなければ死に直結しかねない情報だった。
「まぁ、このメンバーなら大丈夫だろう」
「そうだな。大物の借金返済ついでと思いながらしたら、案外早く終わるかも知れんなぁ」
かっかっとフルーガが笑う。小っ恥ずかしくなるセザン。
「このネタはそろそろお開きだ。明日は我が身と返ってくるかもしれん」
「お、庇うか?赤騎士よ」
「馬鹿馬鹿しい、時間も勿体ない。それに」
「……それに?」
「
この言葉にフルーガはそれもそうだなと言いながら顎に手を付ける。
「では、諸君行動に移してくれたまえ。時間が押している」
ミレニアルが号令す。
グリムレッド、セザン、ハイネン、フルーガの混合即席クランの出陣だった。
*
ククルガ
「どうなっているんだ?!」「ですから理由がですね!!」「んな言葉ばかり繰り返してばっかじゃねぇか」「上の上のお達しなんです!!」「知るか入れさせろぉ!!」「ちょっ、ちょっと!?」
入場口は混沌と混乱が常駐、押し入ろうとする
「押せぇ!!」「止めろぉ!!」
「……すげぇ事になってんな」
ククルガギルドから
霊馬ホディナ、魔馬リバリーは疲れの色が見れなかった。ハイネンとフルーガが跨がる馬達はふーっ、ふーっと息を上げる。
「何で入り口にギルドスタッフが?」
「恐らく、セントラルの回しだな」
「手が早い。流石と言うべきか」
グリムレッドとハイネンが入り口のスタッフを考察する。実際はそうなのだろうが、しかし今スタッフが劣勢となっている。塞き止めていた水が今でも溢れそうな状態だった。
さてどう止めるか、とふとグリムレッドが考える。
ん、ん、ハイネンが道具を取り渡す。道具の正体、目にしたグリムレッドの兜の下はぎょっとする。
その道具は火薬を燃焼させ、その燃焼を利用し粒玉の鉛を筒を通して発射させる。古くは古代の国々の跡地でそのプロットモデルは発見された。しかし、当時技術不足により不発や詰まりが原因で普及にならず、そして当時の最先端の魔法というライバルの登場に歴史の闇に消えた──筈だったが、近年になってから再注目の日の目を浴びる。
ハイネンの持つ道具、それは最近連射可能となった物。
「こいつで一旦、者共黙らせましょ」
「……」
始めて実物を目にした。帝国の噂は時々耳に届くが、長物かと思っていたが想像していた物より
「弾、入れてますんで」
「どっちに向ける?」
「上で」
「了解」
乾いた音により
「思ったより、音出るな」
「初めは皆そう感じますよ」
ハイネンに
「赤騎士?──と
誰かが叫ぶ。
雄叫びを上げるは野郎共、黄色い悲鳴を上げる女郎達。
「相手してやってくれセザン」
「えっ!?」
「我々はお先」「じゃ~」
「お三方!?あぁ!?!」
群衆に囲まれて身動きが出来なくなる。魔馬リバリーが威嚇するが、熱狂という性もあってそれも恐れず取り囲む。
「良かったんですかね~?」
「現状を知らなければ天国さ」
「お~いお前ら、サイン貰っとくなら貰っとけよ!今なら銀貨
グリムレッド?!、後方からセザンの驚愕する声が。群衆は自分達の財布から銀や金の硬貨を取り出し、ねだる。ひー、と悲鳴は聞こえてくるが大物だから仕方ないよね。グリムレッドに対しちょっとと言いたげなフルーガがジト目をする。酷くないか、と。
「グリムさん……」
ギルドスタッフが駆け寄る。
「五階層に行きたい、後足代わりを止めたい」
「いや、そうじゃなくて」
プチ惨状の事にだった。しかしグリムレッドは、
「大丈夫だろう、さぁ行こう」
「……」
*
五階層の床に描かれた魔方陣が紫色に輝くや。グリムレッド、ハイネン、フルーガが一瞬にして転移された。
陣は最近書かれたと入り口のスタッフから聞かされてい。転移場所屋根のない石の家屋。少し崩れているが、何かがおかしかった。
「……?」
「ほう、ほう。此処がこの
「……、ああ。此処にまぁ
ほほう、感心するフルーガ。一方ハイネンは家屋の外に移動する。外敵の警戒に注視する。
陣がまた輝く。転移したのは灰色の甲冑、セザンだった。
「……」
「お疲れ」
「……」
「あ、サインお疲れ様です」
「……」
「よし、揃ったな。では「ちょっと待ってくれ」
割り込んだセザン。ガシャ、ガシャと鎧を鳴らしグリムレッドへ近づく。恐らく入り口前のあのプチ騒動の事だろうか。
「何だ?」
「何だ?ではない!!」
「いやぁ、
「確かに、確かに返済金を少しだが稼いだ。だが、だからと言って勝手にサイン貰えるって!?」
「……怒るか?」
「怒るに決まってるだろ!!」
「……これ、俺悪い?」
フルーガにどうかと聞くが六割程との事を言われる。
「そうか……、すまんかった」
「ちょっと軽い!!……が、まぁ良い。時間が圧してる」
さてさて、さてさてさてさて。では発見された遺跡の
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