03 現れし、漆黒の悪魔
「ジンちゃん、10時の方向!来るよっ!」
「カァッ!」
博士の合図に合わせ、冷気を打ち出す。彼方より飛来していた木の葉はたちまち凍てつき、地に落ち砕ける。
「次!4時!」
「ムオォ!」
「ひゃあっ遠心力ぅ~っ!」
今度は後方より迫りくる蔦を、腕に生えた氷の刃を巨大化させ、振り向きざまに切断する。
あれからしばらく経ったが、攻撃の手は一向に止む気配がない。
俺は博士を背に乗せ、その元凶の下へと向かっていた。
「メモリアレコードの力を用いた一種の防衛システム」、それが今起こっている事態への博士の推測だった。
となれば、解決策は単純。一刻も早くメモリアレコードと聖剣を回収することだ。
「うん……だいぶ近づいてきてる。このまま直進して!」
博士の手に持った探知機から発せられるアラーム音が、進むたびに大きくなってゆくのが俺にもわかる。
ゴールは、すぐそこだ――
※
「ふむ……」
森のほぼ中央に位置する地に立ち、呟く青年。
彼の目線の先にあるのは、小さな祠。そしてそこに安置された、一振りの剣。
鎌のような形の巨大な片刃の刀身に、長い柄。
琥珀色に光る刀身には、大理石のような装飾が施されている。
「全く、ここまで抵抗するとは。思ってもみませんでしたよ」
眼前に広がる無数の異形なる者たちの屍を見やり、そう吐き捨てる青年。
彼は人差し指をこめかみに当て、目を閉じた。
鋭い木の葉で切り裂かれ。蔦に捕まり四肢をもぎられ。ぽっかりと開いた奈落に落とされ。
そんな多種多様な散り様を思い返すと、彼の口元は思わず歪んだ。
《排除する!》
そんな彼へと向けて、怒声が響く。
空を裂いて葉が飛び、地表を割って木の根が伸びる。
剣に手を出さんとする不届き者を排除せんと、全身全霊をもって迫りくる攻撃の手。
しかし、青年は一切の動揺を見せず。
「ですが」
静かに腕を上げ、その指を鳴らすと――それらすべてが一斉に黒い塵となり、消え失せた。
「もう、遊びは終わりにしましょうか」
舞い落ちる塵の中、ついに彼がその足を進めた。
青年の眼が妖しく光ると、その背からは6枚もの翼が広がる。
そして次第に、その姿は変わってゆき――
「フフフ……」
そこに、怪人の姿が現れた。
2対の角を生やした、道化師の如きフォルムの頭部。
肩から生えたマントをはためかせ、指を妖しく動かすその異形こそ――『ルシファーハイヴァンド』。
またの名を――タクトと呼ぶ。
彼は襲い来る攻撃をいなしながら悠然と歩を進め、祠の前へとたどり着く。
そしてその手を伸ばし、剣に触れようとした瞬間。
「待ちやがれ!」
それを制止する、男の声が響いた。
彼が目線を動かした先に立っていたのは――
「聖剣を奪おうったって、そうはさせねぇっすよ!」
聖剣を求め駆けてきた、竜を纏う若き騎士。メモリアナイツ、レクス。
彼はどこか懐かしむような視線を向け――小さく言った。
「来ましたか……ヨロイ・ジン」
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