03 現れし、漆黒の悪魔

「ジンちゃん、10時の方向!来るよっ!」

「カァッ!」

博士の合図に合わせ、冷気を打ち出す。彼方より飛来していた木の葉はたちまち凍てつき、地に落ち砕ける。

「次!4時!」

「ムオォ!」

「ひゃあっ遠心力ぅ~っ!」

今度は後方より迫りくる蔦を、腕に生えた氷の刃を巨大化させ、振り向きざまに切断する。

あれからしばらく経ったが、攻撃の手は一向に止む気配がない。

俺は博士を背に乗せ、その元凶の下へと向かっていた。


「メモリアレコードの力を用いた一種の防衛システム」、それが今起こっている事態への博士の推測だった。

となれば、解決策は単純。一刻も早くメモリアレコードと聖剣を回収することだ。


「うん……だいぶ近づいてきてる。このまま直進して!」

博士の手に持った探知機から発せられるアラーム音が、進むたびに大きくなってゆくのが俺にもわかる。

ゴールは、すぐそこだ――



「ふむ……」


森のほぼ中央に位置する地に立ち、呟く青年。

彼の目線の先にあるのは、小さな祠。そしてそこに安置された、一振りの剣。

鎌のような形の巨大な片刃の刀身に、長い柄。

琥珀色に光る刀身には、大理石のような装飾が施されている。


「全く、ここまで抵抗するとは。思ってもみませんでしたよ」

眼前に広がる無数の異形なる者たちの屍を見やり、そう吐き捨てる青年。

彼は人差し指をこめかみに当て、目を閉じた。

鋭い木の葉で切り裂かれ。蔦に捕まり四肢をもぎられ。ぽっかりと開いた奈落に落とされ。

そんな多種多様な散り様を思い返すと、彼の口元は思わず歪んだ。


《排除する!》

そんな彼へと向けて、怒声が響く。

空を裂いて葉が飛び、地表を割って木の根が伸びる。

剣に手を出さんとする不届き者を排除せんと、全身全霊をもって迫りくる攻撃の手。

しかし、青年は一切の動揺を見せず。

「ですが」

静かに腕を上げ、その指を鳴らすと――それらすべてが一斉に黒い塵となり、消え失せた。


「もう、遊びは終わりにしましょうか」

舞い落ちる塵の中、ついに彼がその足を進めた。

青年の眼が妖しく光ると、その背からは6枚もの翼が広がる。

そして次第に、その姿は変わってゆき――


「フフフ……」

そこに、怪人の姿が現れた。

2対の角を生やした、道化師の如きフォルムの頭部。

肩から生えたマントをはためかせ、指を妖しく動かすその異形こそ――『ルシファーハイヴァンド』。

またの名を――タクトと呼ぶ。


彼は襲い来る攻撃をいなしながら悠然と歩を進め、祠の前へとたどり着く。

そしてその手を伸ばし、剣に触れようとした瞬間。


「待ちやがれ!」

それを制止する、男の声が響いた。

彼が目線を動かした先に立っていたのは――


「聖剣を奪おうったって、そうはさせねぇっすよ!」

聖剣を求め駆けてきた、竜を纏う若き騎士。メモリアナイツ、レクス。


彼はどこか懐かしむような視線を向け――小さく言った。


「来ましたか……ヨロイ・ジン」

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