----------

刺青は3日で消えた。死刑には至らなかった。ただ、完全に消えたのを確認した鏡の前で、理由は分からない。私は少し消失感を感じてしまった。

橋下に送った謝罪の連絡は未だに返答がない。連休明けで明日からまた授業が始まる。

『昨日はごめんなさい。余裕がなくて、貴方のアドバイスをちゃんと聞けなくて急に帰ってしまったこと後悔しています。会って謝らせてください』ー未読

-----------

「人身事故で60分遅れ」

私の利用している路線はいつもこう。月初、週初は人身事故が多い。他に漏れず連休明けの今日もそうである。それを見越して早めに出てもこうなることが多々ある。

改札前で案内板を見ていると駅員に文句を言っているおじさんの声が聞こえた。

「飛び込むなんて迷惑じゃあないか。予定狂わされるんだ!JRはそういう対策しないのか!他人が死ぬとかこっちはどーでもいいんだ!」

…言い過ぎであろう。ふとそのおじさんと目が合ってしまった。

「なあ!姉ちゃんも迷惑だよな!」

確かに、電車に飛び込む人間の気持ちが分からなかった私は、そうですねとだけ返答して逃げるように自販機でミルクティーを買った。

-----------

60分遅れの遅刻確定のキャパオーバーの電車で人に押され囲まれながら私は午後の試験のことを考えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

終煙 江田霞 @kasumi_tt

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ