対決!源氏物語ヤロウ②
なんだかよく分からない内に、源氏物語ヤロウの人生相談が始まりそうな気配だ。
俺はただ、結婚しているかの確認で、指輪を見ただけなのに。
でも。
語り始めた源氏物語ヤロウは、聞いている俺まで苦しくなってくるほど辛そうな顔をしていて。
あーそうですか。じゃ、俺はこれで。
と、置いて帰る気には、とてもなれない。
我ながら人が良すぎるな、とは思ったものの、俺は黙ったまま、源氏物語ヤロウに話の続きを促した。
「俺はね、思春期の頃からずっと、複数の女の子との付き合いを、同時進行していたんだ。」
でたっ!
いきなりの、爆弾発言っ!
多分、顔に出てしまっていたのだろう。
源氏物語ヤロウは、苦笑を浮かべて俺を見た。
「まぁ、そうなんだよね、それが普通の反応なんだろうな。でも、誤解しないで欲しいんだけど、俺には『浮気』っていう概念は無かったんだ、全く。もちろん、『遊び』でもない。彼女はみんな大事な人達だったし、みんな大好きだった。おまけに、回りのみんなも同じだと思ってた。それが普通だと思っていたんだ、俺は。」
「でも、昔はともかく、今の日本は一夫一婦制じゃないですか。だったら・・・・」
思わず口を挟んでしまったが、源氏物語ヤロウは、真面目な顔で頷いて、話を続ける。
「そう。だから、みんな結婚したら自然とそうなるもんだと思った。落ち着いてくるものだって。たまに、落ち着かなくて浮気する人が、世間的に叩かれてるだけだって。結婚する前の俺はね、彼女と一緒にいる間は、その彼女にいつでも全力で本気だったし、だから、俺と一緒にいる間だけは、彼女にも俺の事だけを見て、俺の事だけを考えていて欲しいって、言ってたんだ。でも、それは束縛とは違う。俺といない間は、誰といようが何をしようが、彼女の自由だ。彼女達にも、他の恋愛を楽しんで欲しかったし、そうするべきだと思ったし、それが普通だと思ってた。だって、結婚してしまったら、それはできなくなってしまうことだから。」
「はぁ・・・・。」
小夏から聞いた話と同じことを、源氏物語ヤロウは話していた。
そして、俺の予想通り、付き合っていた女全員に、本気だったと言う。
小夏には笑われたが、やはりコイツは、光源氏の生まれ変わりじゃなかろうか。
そんなことを考えていた俺に、源氏物語ヤロウは、ポツリと言った。
「『ポリアモリー』って、聞いたことあるかい?」
「・・・・いえ。」
「複数人と、合意の上で関係を持つ恋愛スタイルのことなんだ。俺はどうやら、『ポリアモリスト』だったみたいなんだ、昔から、ずっと。」
ぽりあもりー?
ぽりあもりすと?
どちらも初めて聞く言葉だ。
複数人と、合意の上で。
それならば・・・・何の問題も無いんじゃなかろうか。
本当に、『合意』の上であるならば。
「俺もね、言葉自体を知ったのは最近なんだ。でも、そんなこと知らなくたって、俺の彼女達もみんな、俺と同じだと思っていたのに。実際は、違った。別れた妻は、本当はずっと自分だけを見てほしかったと言っていた。他の子達も、別れ際に同じような事を言っていたよ。小夏以外は。」
源氏物語ヤロウは、真っ直ぐに俺を見ていた。
「小夏だけは、このままの俺を受け入れてくれていたんだ。」
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