小夏のピンチ!⑤

「ごめんなさい。」

片岡は、昼休みが始まるとすぐ屋上にやってきた。

そして、俺の前に来るなり、深々と頭を下げる。

「私、椎野さんに嫉妬したの。竹本くんと椎野さんが付き合っているって聞いて。」


えっ!誰からっ?!


と言葉を挟む間もなく、片岡は謝り続ける。

「ダメだって、分かってた。酷いことしてるって、分かってた。でも、竹本くんと椎野さんが仲良さそうに話しているのを見ると、どうしても止められなかった。本当に、ごめんなさい。」

片岡はずっと、頭を下げたままだった。

片岡のしたことは、許せないことだ。

小夏に怖い思いをさせ、泣かせたことは、やっぱり許せない。

でも。

片岡にそんなことをさせてしまう原因を作ってしまったのは、俺だ。

もちろん、故意にしたことではないが、それでも、俺が片岡を傷つけてしまったことに、変わりはない。

「ごめんな、片岡。俺が勘違いするようなこと、したからだよな。」

驚いたように、片岡が顔を上げる。

「本当に、悪かった。」

「竹本くん・・・・」

頭を下げた俺に、片岡が言った。

「お願いがあるの。椎野さんをここに呼んでもらえる?」

「えっ?」

「椎野さんにも、直接謝りたいから。」

片岡は、真剣な顔で俺を見ている。

「わかった。」

俺は、ポケットからスマホを取り出した。


ヤベ・・・・


取り出したスマホの画面には、何件ものメッセージ通知と不在着信が表示されていた。

全部、小夏からだった。


【爽太くん、まだお家着かないの?】

【おーい、爽太くん!】

【ねぇ、本当に大丈夫?】

【途中で倒れたり、してないよねぇ?!】

【爽太くん、お願いだから、メッセージ見たらすぐ返信ください!】


うっかり、サイレントモードの解除をし忘れていて気づかなかったのだが、小夏に相当な心配をかけてしまっているらしい。

俺は慌てて小夏に電話をかけた。


”爽太くんっ?!大丈夫?お家着いた?!”

通話が繋がるなり、小夏は矢継ぎ早に質問を被せてくる。

”お腹の具合は?お医者さん行ったの?お薬飲んだ?”

「落ち着け、小夏。俺は大丈夫だ。」

”落ちつけるわけないでしょー!ねぇ、本当にもう大丈夫・・・・”

「悪いんだけど、今から屋上に来てくれないか?待ってる。」

”えっ?屋上って・・・・えっ?えっ!”

小夏はきっと、訳がわからず混乱しているのだろう。

でも、電話で説明するよりも、直接話をした方が早い。

俺は小夏との電話を敢えて途中で終わらせ、片岡と二人、屋上で小夏の到着を待った。

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