嫉妬 Challenge 1-6

『自分の心配した方がいいぞ、爽太は。』


俺が彩の言葉の意味を理解したのは、それから数日も経たない金曜のことだった。

翌日は小夏との久々のデートが控えていたし、その日はバイトも入っていなくて、俺は朝から上機嫌。

彩の言葉などすっかり頭から消えていた。


「おはよう、竹本くん。」

教室に入る少し手前の廊下で、俺は後ろから片岡に声をかけられた。

「ああ、おはよ。」

自然と、並んで歩くことになる。

特に話す事もなくただ並んで歩き、教室に入る直前。

「お昼休み、ちょっとだけ、時間ある?」

「えっ?」

「屋上で待ってる。」

ニコッと笑うと、片岡は俺の返事を待たずにさっさと教室に入っていった。


えっ?

なになに?

いったい、なんだ?


なんとなーく、イヤな予感がした。

いや。

なんとなーく、ではない。

イヤな予感しか、しなかった。

そして、前にも言ったが、イヤな予感ってのは、かなりの高確率で当たるもので・・・・


昼休み。

屋上で片岡と対面した俺は、彩の言葉をイヤと言うほど思い知らされたのだった。


「私、竹本くんのことが好き。私と、付き合ってください!」


『好きだからだよ、爽太のことが。』

彩が言っていたことが、今現実になっている。

マジかっ?!

ウソだろっ?!

まぁ、確かに彩は結構鋭いところがある奴ではあるけども。


真剣に俺を見つめたまま答えを待つ片岡に、俺は思い切り頭を下げた。

「ごめんっ!俺、大好きな奴がいるんだ。だから、片岡とは付き合えない。」


「え・・・・」


頭の上から、片岡の小さな声が聞こえてきた。

なんだか、頭をあげるのが怖い。

そのまま頭を下げていると、視界で片岡の上履きがゆっくり方向を変え、パタパタと音を立てて遠ざかっていった。


ごめん、片岡。

俺、ポテチの恩を仇で返しちまったな。


胸に小さな痛みを感じながら頭をあげ、片岡が走っていった方を見ると。


「待って、千里!」

「ちさと~!」


口々に片岡の名前を呼びながら、数人の女子が走っていく姿が見えた。

そのうちの一人が、去り際、明らかに敵意のある目で俺をひと睨みしていった。


えっ?!

・・・・マジ?

もしかして、あいつらみんな、陰から片岡の告白、応援してたのかっ?!


『自分の心配した方がいいぞ、爽太は。』


彩の言葉が、頭の中をぐるぐると回る。

いざという時の女の結束力を、侮ってはいけない。

なんだか背中にゾクリとしたものを感じ、俺は暫くその場に呆然と立ち尽くしていたのだった。


彩~!

彩兄貴~!

可愛い弟分を助けてくれ~っ!!

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