『武装化《アームドナイズ》』


カナデは、愛川家の家を出るなり。


武装化アームドナイズ


 武装展開して、ミリタリーな色彩の騎士のような姿をとる。

 それとともに、カナデを中心とした周囲の時空間が切り離される。


 それに驚いたのは、ノゾミだ。


「え? 武装を!?」


「わざわざ電車乗り継いで帰るのも面倒だし、こういう身体になった利点は、最大限活かさないとね」


 そして、カナデは待った。

 ノゾミが、武装するのをだ。


「え? もしかして私も?」

「当然でしょ。この空間じゃ、基本的に電車も動かないのよ?」


しかし、ノゾミには、どうやれば自分の意思で武装を展開できるのか解らない。

いくら待っても、ノゾミは武装展開しなかった。

いや、


「あ、えっと? 武装化あーむどないず! 武装化あーむどないず!」


 カナデの真似をするノゾミだったが、成果は無し、と言ったところだ。


 カナデは嘆息する。


「まったく、出来がいいのか悪いのか、良く解らない子ね」


「すいません」


「仕方ない、あたしに掴まんなさい」


 カナデの背中の4枚のリボンが、展開し、回転し、戦闘ヘリよろしく、ふわりと浮き上がった。

 

 そうして、掴まったノゾミをぶら下げた状態で、カナデは空へと舞い上がる。


「……あんたのコア、戦闘機なんでしょ。どうしてヘリが戦闘機運んでんのよ」


「すいません……」


 ノゾミは宙ぶらりんになりながらカナデに捕まり、カナデは高度を上げる。

 そうして、時速350キロメートルの速度で、空を翔ける。


 その速度で、しっかり掴まっていられるのは、ひとえに、強化された身体だからだ。


 けれど、ノゾミは生身で飛ぶことも、350キロメートルという速度にも、恐怖を感じて、叫ぶ。

 

 速度換算で言うなら、ジェットコースターの4倍ほどは怖いだろう。


「ひぃいい」


 そんなノゾミに、カナデは呆れっぱなしだ。


「音速の2倍以上で飛ぶあんたが、この程度で何怖がってんのよ」


「だってぇ!」


「あーもう、良く泣く子ね」


時間の止まった街の空を、二人の少女は行く。


都心から少し外れにある、児童養護施設――。


被験体公舎へ。


 



 

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