第4話 戦乱の惑星 4
彼女の名前が、ローグと呼ばれている事が解った。
なんだか、名前の響きが女性らしくないので気になったが、彼女は脳の欠損が激しく、記憶が欠如していたので、治療に当たった医療隊の中隊長の名前をいただいたのだという。
だが、その中隊長は女性だったと言う事だから、語感が違うからと言って、女性名ではないというのは間違っていると、ローグから指摘を受けた。
オレは笑って誤魔化したが、彼女は引きずるタイプのようで、ほんの少し、機嫌を損ねたようすだった。
ローグはオレの後からピタリと付いてきた。
ロボット体でない彼女を想像してみたが、思い浮かばなかった。
彼女とは初対面で、サイボーグ化の前の姿なんて見た事もないのだから、想像しても仕方がないのだが、好みのタイプであって欲しいと言うのは、オレの、男の部分の願望であった。
サイボーグとなって、性的な行為そのものを出来なくなってしまってからは、むしろそういった想像をする事が多くなった。
精神科医によれば。その反応はごく普通のものだという。
オレはもっと、そういったものから自由になれるものだとばかり思っていたが、無いものを欲するのは人間の性だというのだ。
オレは、なるほどと感心するとともに、本当に、不便で不自由なものだという思いも、脳裏のどこかでわだかまっていた。
ローグが、オレの異変に気が付いたのか、声をかけてきた。
「Mr.ゼロ、どうかされましたか」
オレは、自分がゼロだという事を忘れていた。
本名は、作戦行動中はブロックされていたから、思い出す事はなかったが、それでも、コードネームはやはり本名とは感覚が違う。
「なんでもないですよ」
思考が読まれるような事があったら、どのように思われるか、想像に難くない。
オレは、ハードウエアの顔面を、さらに硬くするような、表情を強ばらせる感覚を思い出していた。
そういったやりとりを演じている間に、基地の食堂にやってきた。
大きなホールで、300席くらいのテーブルと椅子が用意されていた。
今は時間ではなかったから、2~30人くらいしかいなかったが、昼時となると、この席が、満員状態になる。
そういったデータも、オレの中にはセットされていた。
オレとローグは、カウンターで食事を受け取ると、向かい合ってテーブルに着いた。
ローグは、「同席してもよろしいかしら?」と、着席してから聞いてきた。
オレは、苦笑いをしたが、固い顔面にはその表情はあらわれないはずである。
意外にこの女、図々しい?そう思ったが、やはり女性との同席は、楽しいものである。
オレは気の利いた会話でもしようと、頭脳を回転させたが、洒落た会話をするだけのデータストックが足りていないようで、楽しく会食を楽しむ訳にはいかなかった。
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