エピローグ

 古城のある丘の上で、魔王とスミレが腰を下ろし、村の様子を見渡していました。

「よかったな、魔王」

 魔王はまだ渋っています。

「何がよかったものか。面倒を増やしおって……」

「その話ではない」

 魔王は訝しげな顔を向けました。

「わたしがずっとそばにいることだ」

 魔王は驚きました。

「本当にそばにいてくれるのか?」

 スミレは微笑みました。

「お前を見張らなくちゃならないからな。それに、お前が帰してはくれないだろう?」

「うむ……まあな」

 魔王は目をそらし、村の風景に目を向けました。スミレは

「お前には感謝しなくてはな。それから、疑って剣を向けて、悪かった」

 と、一言詫びました。

 魔王は鼻を鳴らしました。

「ふん、全くだ。何かしてもらわなければ割にあわん」

「そうだな……では、これは、お前への詫びと、感謝だ」

 するとスミレは魔王の唇に唇を軽く重ねました。

「えーーーー?!それだけ?!それだけか?!全っ然足らん!」

 魔王は抗議し、スミレの頭をかき寄せ、唇を奪いました。

 その口づけは今までのような触れるだけのキスではありませんでした。スミレの唇の間に舌をねじ込み、激しく舌を絡めました。

 スミレは驚き、必死に抵抗しましたが、魔王はギリギリと頭を押さえつけて離しません。抵抗すればするほど、魔王の抵抗も激しくなります。スミレが諦めて力を抜くと、魔王も唇を解放しました。

「このくらいしてもらわなければな」

 二人ともぜーぜーと肩で息をしていました。そんな一戦交えたようなお互いの様子がおかしくて、二人は笑いました。

「そうだな。では、あらためて……」

 スミレは再び魔王に唇を重ねました。


 このあと、魔王は村長の勤めを立派にこなし、徐々に人間界の領土を広げることになるのですが、それはまた別のお話。


 おしまい。

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