3便目 歯痒い葉書

足元のピグリップを片付けないまま

丁度一週間たった10日目の今日

言の葉が落ちてきた。


宛名、送り主の名前が無いそれは

いつも通り部屋の真ん中の天井スレスレに

拡がる言の葉という葉っぱに

文字が浮かびあがるタイプの葉書。


内容の重さに比例して葉っぱの

落ちてくるタイミングが

早かったり

遅かったり


この前の事

『親戚のおばさんが恒星フレアの影響で

病気を患ったそうです。』

という母からの言の葉が届いた。


それとほぼ同じタイミングで

『そういえば、新しく冷蔵庫を買い替えたら

全室冷凍庫でした。困ってます。いる?』

という言の葉も届いたが、

母の困り具合が伝わったのか

言の木が判断したのか


後者が先に僕のもとに落ちてきた。

どれだけ日常的に関与しているかが

何となく伝わってしまう結果となった。


そして、今回の母からの言の葉。

『無事銀河を越えました。良い休日にします。』


に対して

『いつもありがとう。』


あの言の葉だ。

名前のない言の葉の方が

先に落ちてきたのだ。


夕方の恒星を見ながら


病院のおばさん

大きな冷凍庫

母の休日

ありがとう


答えのない比較を

頭に浮かべていた。

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