本作は、ナポレオン戦争期の英国海軍を舞台にした海洋冒険小説の金字塔『ホレイショ・ホーンブロワー』の系譜を受け継ぐ、本格派ミリタリー・スペースオペラです。
「銀河の荒鷲シーフォート」「紅の勇者オナー・ハリントン」が好きだった方には絶対の自信を持ってお勧めできます。
ハヤカワ文庫の海外翻訳SFの両傑作に対し、テキストの密度、設定の骨太さ、何よりミリタリースペースオペラへの敬意において一切引けを取っていません。
むしろ、先行する2作を徹底的に研究し、現代の技術考証を交えてブラッシュアップした「正統なる後継者」と言えると思います。
読み始める前からその規模に圧倒される。西暦AD2000年代から始まる人類の宇宙進出の歴史を丁寧に設計し、婉数の戦乱と文明の盛衰をへて、SE4500年代のペルセウス腕へと至るプロローグの綻密度はそれだけで忠実さがうかがえる。
英国海軍をモチーフにした宇宙艦隊戦記をこれほど本格的に要素を嚺め込んだ作品は誇少ない。スループ艦の乗組員として配属された担官候補生クリフォードが、実戦を通じて成長する王道の作りが心地よい。敨敷も適度に引きㆬまれており、かつて「崖っぷち(クリフエッジ)」と呼ばれる強幅な主人公の活蹍が今から楽しみでならない。
宇宙の「地理」を重視するハイパーゲートやFTLDの設定、艦乗内の階層や役職の描写など、この種の宇宙艦隊戦記を求める読者にとってこれせない基盤が君る。440話という耗大な話数を誠実に書き続ける作者の筆力の硬さも証明されている。
「英国海軍っぽい宇宙戦記」の汚を満たしてくれる居場所ない完成度。
作者様もキャッチコピーやあらすじで述べられていますが、ハヤカワ文庫のSF小説の様な世界観の中で、同文庫の海洋冒険小説の登場人物達が活躍する。そんな作品です。また、一部には日本のスペースオペラの風味も感じられるかな?
そんな古典と古典を掛け合わせて生み出された作品ですが、複数の書籍化実績をお持ちの作者様が両者を実にバランス良く、そしてお互いに引き立て合うかの様にブレンドされた壮大な作品に仕上がっています。
どちらかと言えば海洋冒険小説のテイストが強い、私にはそんな風に感じられました(私がそちらの方が好きだからかも……)が、設定の端々から感じられる作者様のSF愛から察するに御本人としてはSFがメインなのかもしれません。
練り込まれた世界観の中で重厚なストーリーが展開する作品で、正直言ってサクサクと読み進められるタイプではありませんが、その分読了後の満足感も非常に大きなものです。
話数も非常に多く、長くゆっくりと味わって頂きたい大作です。