第6話 初恋の寿命は短いらしいです
「
榊原家でのパジャマパーティーへの参加は久しぶりだ。そして、今回は珍しいゲストがいる。赤みのある金髪は艶めいていて、優しい
非常に愛らしく、かつ凛々しく育っている
「うん。そうね」
綺音の祖父は、わたしの父の兄なのだ。
父は母の家に婿入りしたので、名字は違うが。
「シニョール・
やー、そりゃ、あなたもでしょう。ボッティチェルリとかリッピの絵画に出てくるような、神が観賞用に産まれさせたんだろうかと思えるほどの美形。
思わず苦笑を浮かべてしまう。
「ああ、そうね。今よりも中性的だったから、もしかしたら、あの頃の集一さんを今、見たら、綺音と見間違ったかも。
すると、綺音が小さく溜め息をついた。
「あたし、マンマに似たかったな……」
「そしたら男の子だったかもよ、アリアーネ」
「
「それでもってリッポに追っかけ回されたわね」
「うっ困る」
「え? 困るの?」
綺音はカルミレッリに懐いている。そりゃあ、今は恋ではないとしても、穏やかに始まる愛もある。まあ、年齢は離れているし、彼の長年の片想いの相手は結架さんだし、集一さんが簡単に愛娘を託せるとは思えないけど。
詳しく尋ねたいと口を開いたら、眠っているのかと思っていた美弦が腕に触れてきて、
「古傷に響くから やめてあげて」
静かに告げた。
「……あぁ……」
何となく理解したけど。
「いやなんか納得されるのもシャクゼンとしないっていうかキズつく!」
声を荒げ、突っ伏した綺音に視線も向けず、美弦が質問してくる。
「そういえば、亜杜沙ちゃんはパーパに恋しちゃったりなんかしなかったの?」
昔から、たまに色んな人からされた質問。
首を傾けた。
「えー、どうだろう。厳密には恋したのかなぁ?」
綺音が食いついた。
「えっどういうこと!?」
流石は美弦。
姉想いの可愛い子。
涼しい
姉には気づかせないまま彼女を大切に守る手腕は、一体どうやって培われたのか。
「そりゃ、あの容姿は魅力的だけども、ほら。性格が、ほら──ね。表面的には優しいんだけど、平坦で冷ややかでさ。でもって容赦ないでしょ。特に若かったころはさぁ。まー控えめに言っても苛烈なんだもん。今だって無条件に何でもかんでも主導権を譲るのは結架さんにだけでしょ」
全員、同じ種類の表情をした。
「親しくならなければ恋い焦がれたままでいられるかもしれないけど、傍にいることが増えれば増えるほど、なんていうか、挫折するのよね。
過去に集一が遠ざけるようになったり、集一を遠くから観賞するだけに留めるようになったりした、幾人かを思い出して遠い目をしてしまう。
うちの お兄さまは、本当に、懐に他人を入れない。簡単には。
微笑みながら透明な壁で遮って、にこやかに会話している筈なのに、気がつくと近寄りがたくなっている。
全くもって情が薄い。
「だから、そりゃ憧れた時期はあったんだけど、もう何を見誤っていたんだと自分を叱りたい感じなわけなのよ。勿論、従兄としては好きだけど、恋する相手には向かないなぁ。第一、結架さんくらいの美女でないと、隣にいて居たたまれないと思うのよね」
「なにいってんの!」
急に綺音が身を乗り出してきた。
えっ、ちょっと、迫力も集一さんと似てるんだから、凄むのやめようよ。目力が強すぎる。ほんと父娘だな!
「亜杜沙ちゃんはギラギラした感じこそ、そりゃ無いけど、とっても素敵で可愛いよ!」
ええっと……面食らうなぁ……誰もが認める美少女に力強く言われると。あとギラギラってなに。華やかじゃないって言いたいのだろうけど、そこはキラキラにしておいてほしかった。
「そうね。若々しい艶やかさがあって、素朴で清らかな美しさがあるもの」
ええ~それなりに年齢はいってるんですけど、誰もが見惚れる美少女に自信満々に言われたら恥ずか死にそう。ねぇ無理に褒めようと努力してくれてない?
「僕も、亜杜沙ちゃんには亜杜沙ちゃんの魅力があると思う」
結架さんと同じ顔にそんなこと言われたら萌え死ぬ! 無理! 尊い!!
「みんな、ありがとぅ~」
若人らよ夜は長いぞ寝かさないぞ!
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