熱く、淡々と。壮大なファンタジー世界に血で描かれた叙事詩
- ★★★ Excellent!!!
ファンタジー+人間ドラマ+戦記+異世界史、全ての面白さの絶妙欲張りセット。この良さを表現しきれる適切な語彙が見つからない……!
紹介に「血」と入れた意味は三つ。熱血・過酷・人肌です。
人、組織、国、種族、世界が繋がり、伝説を動かして世界最強のドラゴンへ立ち向かう。テーマは王道のカッコよさです。各々の武器と矜恃を持ち命懸けで戦う様は、熱いという他ない。
しかし過酷です。流れる血の量は半端じゃない。それでもやはり熱いと言えるのは、その血に意味があるからです。敗戦から学び、遺志を継ぐ者達がいる。容赦もご都合も、良い意味でありません。人々は等しく傷付き、等しく活躍します。
そして何より、世界が「個」の塊だと感じる事です。一筋縄では進まぬ状況、動き続ける時間、涙も涸れる別れ、息を呑む駆け引きの中で、各々が求め紡ぐものは人肌の温かさなのです。戦う理由は等身大の信念や恩義、身の回りのちっぽけで大切な愛と平和だったりします。
ゆえに血の滲む・血の通った物語だと感じるのです。
その世界の住人かのように、各々の奮闘を応援してしまう。こんな感情移入の仕方があると初めて知りました。ここまで没入できる群像劇を他に知りません。
そんでこの壮大な物語、「英雄譚」なんです。主人公一人に収束するのですよ。凄まじいな。
上記に加え、細部まで作り込まれサラリと描かれるファンタジー世界も魅力的です。風景、魔法の仕組み、冒険の準備、大小の戦術、生活や文化。幻想的な世界を、キャラクター達の目線を通して身近に感じます。
各話に簡潔なタイトルが付いていて、適宜読み返しやすいのも嬉しい! 退場者の隠れた功績、何気ない会話、時間経過と状況進行など、読み込めば読み込むほど面白いんです。
是非多くの方にご一読頂きたい傑作です。