第37話 気づかれた?

「ふわぁ……、よく寝たぁ。あ!そういえばどうなったんだ?」


 目が覚めてすぐに昨夜の出来事を思い出す。森の中にいた山賊風の男達、捕まっているであろう奴隷。助けを求めるために教会騎士に手紙を送るなど行動したものだ。


 適当に夜に物音がしていましたが、何かありましたか?とでも言えばどうなったかはすぐに明らかになるだろう。


 ベッドをしっかりと整えて、伸びをする。窓からは朝日が差しており良い1日になりそうだなと思ってみたりする。


「おはようございます、ホムラ様」


「おはよう、ミルリル。朝早くからお疲れ様!」


 メイドに挨拶をして、顔を洗いに行く。



 まだ朝食には早い時間であるため、朝練に向かう。朝練だけは余程のことがない限りは毎日欠かさず行なっている。


「ふぅ……」


 田舎の空気は美味しく感じる。清々しい朝だ。



「おや、ホムラくん。おはようございます!」


「先生、おはようございます!父様、母様おはようございます!」


 外にはエルメティアや父様、母様もいた。


「ああ、おはようホムラ」


「おはよう。ほら、リーラもお兄ちゃんに挨拶よ!」


「おはよう、リーラ」


 屈んだ母が妹の顔を見せてくるので、指で柔らかいほっぺにそっと触る。可愛い。


「こんな朝早くにお外でどうしたんですか?」


「それがな、森に悪い人達がいてな。父様達が夜中に倒しに行ったというわけだ!色々と後片付けもあってようやく帰って来れたと言うところだな」


「ローレイラも、エルメティア先生も徹夜だったのよ。ホムラも労ってあげて」


 やはり昨夜のことで出ていた様だ。うっかりとボロを出さないように気をつけながらいきたい。


「何がなんだかですが、お疲れ様です!悪い人達をやっつけたんですね」


「ありがとうございます、ホムラくん。はぁ……ホムラくんの成分は癒されますね」


 先生が抱きついてきた。もう両親の前でも平然と抱きしめるようになった先生。嬉しいは嬉しいが、この人は変態なのだ。現に少しお尻を触った気がする。


「山賊はそれほど苦戦することなく捕まえたからな。それに捕まっていた奴隷の人達も無事に全員助けることが出来た」


「奴隷が捕まっていたんですか!しかし、よく森に潜んでいるとわかりましたね」


 驚いた表情をしてホムラは聞く。流石に自分だとバレることはないだろう。僕は寝ていたのだ充分だ。


「そうですね、誰かが山賊が潜んでいることを手紙に書いて出したそうです。しかし、一体誰がそんなことをしたんですかね……」


「とりあえず、無事に助けられたことを喜ぶことにしよう。眠たい……」


 目の下にクマを作っている父様が言う。徹夜は流石に疲れるというものだ。もう騎士団の団長をやっていた時ほどの全盛期の体力はないだろう。


 時々、ベッドの体力の方は無尽蔵なんて息子に言ってくるから困ったものだが。現在レレ母様は、その甲斐あってか妊娠している。また家族が増えるため楽しみだ。



「僕は朝練をしますね!先生も無理せずに休んでください」


「ええ、ホムラくん。ありがとう」


 


 最近では、木剣で素振りも行っている。魔法だけでなく、少しでも基礎体力を上げたいと思ったのだ。たいまつを振るうのは意外と疲れるので、少しでも使いこなしたいと思っての行動だ。


「やっぱり誰かに近接戦を師事した方がいいのかな?父様は忙しそうだし。母様も実は、騎士団所属なんだよね……」


 だが、国王が《暴姫》と呼んでいたのを思い出して踏み留まる。もしかするととてつもなくスパルタかもしれない。近いうちに父様に相談してみようかと思う。



 朝練を終えて屋敷に入ろうとしていると、父様達が誰かと話をしていた。どこかで聞いたことがある声だ。


 そっと見てみると話をしているのは、目隠しをしている女性、シスターハーヴェリアだ。ホムラ自身は、会っているが声も出してないし、バレることはないだろうと思う。


「ええ、捕まっていた奴隷の人たちは出来ればレーミング領で引き取って頂けないでしょうか?流石に心身ともに疲れているため、回復にはかなりの時間がかかりそうです」


「そうですか。ええ、善処しましょう。調査に来て頂いたのに色々と頼って申し訳ない」


「いえいえ、人を救うことが出来た。それだけで喜ばしいことです」


「いつか貴方の呪眼もどうにかなれば良いのですが……私も浄化系統使いの伝手を探してますがなかなか……」


「気にしないで、エルメティア。これは私に与えられた試練。きっと意味があることなのだと思います」


 少ししんみりとした空気になった。空気を変えようとしたのか、話題を探すために周囲を見回した父様と目があった。


「ちょうど、息子が来たので挨拶させてもらって良いですか?おーい、ホムラ!」


 父様が呼んでくるため向かわざるを得ない。


「初めまして、ホムラ・レーミングです!よろしくお願いします」


 いつ通りのシンプルな挨拶だ。まあ初めましてではないが。


「ええ、初めまし……て?ねぇ……貴方が私に手紙をくれた人じゃないですか?昨日は魔力を操って上手く隠してたみたいだけど、私にはわかります」


「え……あ、いや」


 何やらこの人には直感的に見抜けるものがあるらしい。そう考えてホムラは慌てる。


 すでに、父様や先生の顔が困惑の表情を浮かべているのだから……

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