第19話 松明のスキル

「やっと見つけた!武器屋さん」


 ホムラが、ミルリルを伴ってやって来たのは、街の中にある武器屋だった。ミルリルには、店の前で待っててもらい1人で中に入ることにする。


「お邪魔しまーす!」


「いらっしゃい!おや、可愛いお客さんだね」


 店番をしているのは、20代くらいの女性だ。鍛治仕事もしているのだろう、体格はガッチリとしている。


「すみませんが、ここのお店は装備鑑定をしてもらうことが出来るでしょうか?」


「ああ、手数料で銅貨が1枚かかるけど大丈夫?」


 銅貨の値段はこの世界では、大体10円くらいだ。自分でも払える額である。


「じゃあ、これを渡しますね!それで、見てもらいたいのがこれなんです」


 と言いながらポーチから取り出すふりをして、たいまつを出す。向こうも服装などからお金持ちの坊ちゃんと思っているだろうし、それなら魔道具を持っているのだと思わせることが出来るだろう。


「ん?これは、たいまつかい?これにスキルがあるとは思えないんだけど。お金無駄になるんじゃないかい?」


「はい、お願いします!」


 何もスキルが出なければ、神から貰った物なのでそういうものなんだろうと諦めるしかない。だが、もしかするととんでもない性能が眠っているかもしれないので知っておきたい所だ。


 かつて、ここら辺の国家で活躍した英雄とも呼べる者達がいたそうだが、彼らの武器には強力なスキルが備えられていたらしい。どこで武器を手に入れたかも明かされず謎も多いとのことだ。


 父にその話を聞いたときは、もしかすると転生者じゃないか?と思った。その彼らはすでに死んでいるらしく確認のしようはない。


 武器だけは、何点か王城に飾られているらしく見ることも出来るそうなので楽しみだ。




「じゃあ、見てみようかな〜」


 と言いながら、じーっとたいまつを見始める武器屋のお姉さん。武器屋を営むものには、鍛治のスキルだけでなく装備鑑定という装備限定の鑑定を行えるものもいる。1発目のお店で鑑定出来る人を見つけられたのはラッキーだ。


「どうでしょうか?」


「ああ、凄い!凄いな!これは、本当にたいまつなのか!なんて、素晴らしい」


 武器屋のお姉さんが興奮気味の声を上げる。どうやらスキルはあったようだ。


 顔はたいまつから動かないが、手元の紙にスラスラと書き始める。随分と楽しそうな反応をしているので、ホムラの期待も高まる。



「素晴らしい……、今日は良い日です。こんな素敵な装備に会えるとは」


 もうたいまつに頬ずりしそうな勢いだ。早くスキルを教えて貰うとしよう。


「どんなスキルがあったか教えてもらっても?」


「ええ、もちろん!この紙に書いてありますが、読みますね」


 紙を挿しながら言ってくる。


 内容としては、〈不壊〉〈伸縮自在〉〈魔法威力増幅〉〈自動帰還〉〈打撃強化〉〈ーーーーー〉……


 となっていた。いくつか、装備鑑定でも見ることが出来ないスキルがあるらしく、それに関してはわからないとのことだ。


「いや〜、凄いんですよね〜?」


「凄いなんてものじゃないですよ!これは、もう英雄の武器とも言えるスキル保持です。それに、読めないスキルもあるだなんて!」


 松明だと思って舐めてたら意外とやるようだ。スキルも試してみたい所なので、後で実験してみたいと思う。


「あ、このこと出来たら言わないで下さいよ?」


「ええ!もちろん。ですが、よかったらまた見せにきてください!新たな発見が出来るかもしれないので。私も、武器屋としてまだまだだと学べました」


 なかなかに真面目な武器屋さんで助かる。是非とも贔屓にするとしよう。


 目的を果たして満足したホムラは、店を出てミルリルと帰るのだった。




「ホムラくん!魔力測定に行きませんか?」


「また、急ですね。先生。その魔力測定というのはなんですか?」


 宿に戻ったホムラは、同じく戻って来ていたエルメティアに声をかけられる。


「魔力測定というのは、魔力の濃度、そして量を測るものです!濃度に関しては、元から決まっているため年齢を重ねても大して成長しません。量は、年齢平均よりも多いか少ないかを知ることが出来ます!魔法使いとしては、把握しておいた方がいいかもしれませんので」


「それは、気になりますね!是非、受けてみたいです」


 濃度とか特に気になる。転生者の自分はどうだろうか?


「ホムラくんならそう言ってくれると思いました!早速行きましょうか。ローレイラ様のご許可は貰ってますので、護衛も私がいればこの国1番ですよ」


 楽しそうにホムラの手を引いて歩き始めるエルメティア。


「どこで検査するんですか?」


「ええ、この国唯一の魔法学校です。どうせなら、色々と見学してみますか?」


 魔法の学校、それは面白そうだな……とホムラも、乗り気で歩き始めるのだった。

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