第11話 ありえない黒炎

「国王を脅してって凄いことしますね」


「流石に許せないですね。自由に恋愛出来るからこそ、愛を育めると思うのですよ!国の軍事力よりも大切なものがありますから」


 エルメティアほどの魔法使いからの意見では国王も頷かざるを得ないそうだ。彼女が国を出て何処かに行ってしまうことの方が損失が大きいことだろう。

 だが、近隣諸国、特に帝国では魔法使い同士の結婚が義務化されている様な国がある。特に、強い魔法使いを輩出する家系などは躍起になっているとか……


 正直関わり合いになりたくない。


 

「先生、質問です!」


「はい、ホムラくん!」


 ここは思い切って質問してみよう。


「先生って、ご結婚されてるんですか?」


「む、それを聞きますか!ええ、良いでしょう。答えましょう。していませんよ!」


 結婚されていないと……ならば


「彼氏はいますか?」


「いません!なかなか縁がないものです」


 おおぅ、即答だ。


「そうなんですか、先生なら引く手数多だと思っていましたけど」


 貴族なんかにも人気がありそうな感じだ。


「このままでは、行き遅れですね。良かったらホムラくんが貰ってくれませんか?」


「へっ?……ああ……えっ?なにを?」


 先生がよくわからないことを言ったな、と思いながら聞き返す。


「ふふふ、ホムラくんとなら魔法使いの子供を産んでも良いですよ?おっと、少々セクハラの様になってしまいましたね」


「ま、まじすか……」


 なんか急に恋愛モードに入ってきたぞ。いやいや、これはからかわれているだけだろう。自分6歳だからなぁ……

 エルメティアの様な美人に言われてしまっては、顔が赤くなってしまうのは仕方がないことだ。


「ホムラくんは、歳の割に真面目で優しい。貴族のお嬢様から求婚されることもあるかもしれません。これくらいで照れていては大変ですよ?」


 もう少し冷静になれる様にしないとなと思う。


「先生みたいな綺麗な人に言われたら、誰だって照れますよ!」


 もう負け惜しみみたいだ。流石に先生の美貌には勝てない。


「嬉しいことを言ってくれますね」


 とハンカチで口を押さえつつエルメティアが笑うのだった。






 夕食後、ホムラは屋敷の庭で魔法を使って自主練をしていた。魔力は使えば使うだけ成長に繋がっていく。特にやることのないホムラとしては、良い時間の使い方だ。


「他の国とかに旅行してみたかったけどな……帝国は危なそうだな……」


 魔法使いへの扱い的に行くのを躊躇う。元の世界と比べれば、言語は統一言語というものが用いられており他国でも使えるため国を渡るハードルは高くない。獣人やエルフ、それぞれの言語もあるにはあるが、多くのものが統一言語というものを使っているため会話は困らないとのことだ。


 師匠は、本を読んでいるだろうか。師匠が使っている部屋のカーテンからは明かりが漏れている。


「複数属性ってやっぱり憧れるなぁ……」


 確かに1番欲しかったのは火の魔法だったが、他のが使いたくないのかと言われれば使いたいと思う。

 エルメティアからは、1属性を極めるだけでも人生において充分に素晴らしいことだと言われた。だが、憧れの転生をして魔法の使える世界に来たからにはやってみたかったものだ。


「魔法が使えることに感謝しないとな。贅沢言ったら、神様が怒るか……」


 いや、あの自堕落な神になら文句を言いたくなるが。数日後には、実際に魔物と戦ってみると言う訓練もある。少しでも魔法の技量を上げておきたい所だ。


「うーむ、他の属性のことを考えていると集中が微妙……」


 いつもより若干弱い火力を見せるファイヤーボールを見ながら呟く。魔法にはメンタルも反映されるため自分が集中出来ているかよくわかる。


「この辺で切り上げるかなぁ……はぁ、黒属性と合わせて、黒炎!とかやってみたかったな……」


 無理なものは無理だ。いつまでも文句を言っていても仕方がない。お母様も良く、過去の失敗を考えず先のことを考えるように言っていた。


 目をつぶって考えごとをしていると火の明るさが弱まった様に感じた。余程集中力がないなと思いファイヤーボールを消そうと目を開いた。



 先程まで赤く燃えていたファイヤーボールが黒く燃えているのだった。

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