あとがき


ひとつの物語を作ることは、ひとつの宇宙を作ることであり、その宇宙において作者は全能の神である。


神は何をやっても許される。


こんな無茶苦茶な終わり方もできる。

気が向けば、また作り直すこともできる。


神は自由だ。


しかし、自由だから楽しいとは限らない。


あまりにも強大な力は物語を一瞬で終わらせてしまう。

それでは楽しくない。


だから、神は制限をかける。

わざわざ不自由にしておいて、自由を求める戦いをする。



我々人間の世界も同じなんだと思う。


なぜこの世界はこんなにも不自由で苦しいのか。

なぜ神はこんなにも残酷な世界を創ったのか。


答えは、その方が楽しいからだ。

何ひとつ問題の起きない世界は楽しくないのだ。


そう考えると、神も完全無欠というわけではない。

こんな回りくどいことをしなければ楽しめないようでは、神もまだまだ。


本当に完全無欠なら、わざわざ問題など起こさなくとも楽しめるはずだ。


創造神だか絶対神だか知らないが、所詮は未熟。

我々人間と大して変わらない。


そんな未熟者を崇拝する必要はない。

真に崇拝すべきは、我々に苦痛を与えず幸福のみを与える完璧な存在である。


それには名前がない。

存在しないものには名前がない。


神は実在こそしないが、概念上は存在する。

だから名前がある。


人間は完全な存在より不完全な神の方がお好みらしい。

妙な話だ。

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