〜作者の想い〜
私は生まれつき人工的な化学物質に敏感な体質です。香害の他、食品添加物や殺虫剤などの化学物質を微量でも繰り返し暴露すると重症化します。医薬品も副作用が激しく使えません。
子供の頃から化学物質を避ける生活に苦労していますが、一番辛かったのは、病名を知らなか
ったことです。自分の体質のことを人に上手く説明できず、大人たちから様々な偏見を受けました。「安全性が確認されて国が許可してるものなんだから具合悪くなるなんてただの思い込み」
「罰当たりな選り好みをするな」「ちょっとくらい平気」「注射打って治せ」「体に悪い化学物質も
慣らして耐性つけろ」など、根拠も愛もない考えや嫌味を押し付けられ深く傷つきました。
私もみんなと同じ「普通の人」になりたくて、無理して「普通のこと」を楽しんだこともありました。でも化学物質過敏症は、化学物質を体に取り込むほど悪化します。重症化して初めて「自分は
普通の暮らしはできない」と確信しました。
化学物質過敏症は人によって電磁波過敏症も併発しますが、私も5G電波が強い所では辛い
症状を感じます。どこに行っても化学物質と電磁波という凶器に囲まれ「この世界は私の生きられる場所じゃない」と絶望していました。
香害に襲われると「化学物質に弱い人間はしね消えろ」という言葉が頭の中で反響します。
守ってくれる味方も、共感してくれる人もなく、たったひとり世界に存在を否定された透明人間のような強い孤独感に耐えられず、自殺しか考えられませんでした。「この化学物質まみれの日本で
みんなは幸せに生きてる。なんで私だけ、なんで私だけ・・」この国のこの時代に生まれたことを
呪いました。
2021年29歳の時、偶然に病名を知り、共感し励ましてくれる仲間と繋がりました。それからは、人生が一変しました。診断を受けた日、やっと社会から存在を認められたような気持ちでした。
「あなたもこの社会で生きていていいですよ」世間からそう言われた気がして、それは私が生まれて初めて味わう安心感でした。私と同じ思いをもう誰もしないように、この病気の理解が広まってほしいと強く願います。
発症原因の化学物質を調べると、そもそも人体にも環境にもリスクがあるものだという資料を
たくさん目にします。だから「化学物質過敏症は病気じゃない。むしろ正常な体の反応」という考えも多く、「過敏」という病名に疑問を持つ人もいます。「根本解決は有害化学物質を減らすこと」
という意見の一方、「化学物質を避けるのは対処療法で、根本解決は有害化学物質にも耐えられる体にすること」という意見もあります。どちらにしても私は環境問題を学んで「このまま化学汚染が続けば人類に未来はない」とわかりました。だから、皆で環境問題に向き合い有害化学物質を減らすことが必須だと思います。そして根本解決は、環境問題を生んでしまった「社会のあり方」
を変えることだと思います。
人類は科学の力で発展しましたが、私は科学に傷つけられました。人間は無知で残酷です。
目先の利益や利便性しか見えず、科学のせいで水俣病やシックハウス、生活習慣病など多くの
病気や環境汚染を生みました。でもいつかきっと、みんなの力で解決策を見つけて、海も風も綺麗で、戦争も自殺もない文明を作れる・・そんな日がいつか必ず来ると、私は信じています。
行政や企業に動いてもらうには、大勢の国民(消費者)の声が必要です。
ひとりの人が「ただ知る」それだけで、ひとつの救いの手になります。だから今日、この物語を読んで「知って」くださったあなたは、救世主のひとりです!ありがとうございます!!
最後に、素晴らしい編集と人脈で本書を世に出してくださった下久保様、本書にご支援ご協力くださった皆様、そして、いつも私の支えになってくれている友人の皆様、病名がない頃から優しくしてくださった旧友や地元の皆様、心より深く御礼申し上げます。
せきみわこ
香害を伝える絵本「いっしょにいたいから」試し読みショートバージョン せき みわこ @Meaya
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