無心

「お前は、今、何を考えている？」


　何も考えていない私に話しかけてくる


「何も考えていない、とはいかない」

「会話しているんだ」

「無心で会話ができるなんてのはいけない」


　私は返事をしない

　会話などしていない


「それでもだ」

「無心は嘘だ」


　そう嘘だ

　無心なんていうものは嘘だ


　そもそも

　無心というのはすべての営みをやめること

　即ち、死と同意である


「そうだ」

「お前は、まだ、どうにか生きられている」


「だが」

「私の言葉に耳を傾けなくなった時点で」

「お前は死ぬ」



　死にたくない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう！

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録（無料）

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る